(第4話)婚約解消を目指して
ヒューゴ様が、オリヴィア様にハンカチを拾っていただいたと言っていた日から5か月が過ぎた。
あの日から、ヒューゴ様とオリヴィア様の仲は急速に深まったらしく、今では学園中で話題の二人となっている。
『ハリー殿下に捨てられたオリヴィア様が、今度は伯爵家のヒューゴ様に取り入った』
『アイラ様を陥れることに失敗したオリヴィア様が、今度はメイベル様を陥れようとしている』
『ヒューゴ様は、メイベル様との婚約を破棄してオリヴィア様と婚約しようとしている』
そんな噂が流れてからは、私も同情の視線を向けられることが多々あった。
…………だけど…………。そんな学園中の同情とは裏腹に私の心は浮かれ切っていた。
だって、ヒューゴ様からの月に一度の呼び出しがなくなって、それだけでも最高に嬉しい。
それにヒューゴ様とオリヴィア様のことは、前回のパーティーでのハリー殿下のやらかしと共に、学園だけでなく社交界でも話題になっているらしい。
「これで婚約解消に向けてこちらから動けるわね」
ディナーの席でお母様がウキウキした様子で話し出した。
「そうだな。これだけの騒ぎになっていれば、いくら爵位が下でもこちらから婚約解消を申し入れても問題ないだろう」
お父様も安心した様に呟いた。
「……ヒューゴ様は、とてもエバンズ子爵家の後継者には出来ないから婚約解消は必然だけれど、メイベルは傷ついていない? 貴女を傷つけてしまってごめんなさいね」
お母様が申し訳なさそうに私を見つめた。お父様も心配そうに私を見ていた。
「お母様。お父様。ご心配してくださってありがとうございます。ですが、ヒューゴ様と結婚するよりは、浮気されて婚約を解消された可哀想な傷物令嬢だと噂になる方がよっっっっっっっっぽどマシです!」
私の力強い宣言に、お母様は安心したように微笑んだ。
伯爵家からの婚約の打診を断り切れなかったお父様は、申し訳なさそうに肩を落としていた。だけど、次の瞬間には顔をあげた。
「絶対に伯爵家との婚約解消を勝ち取るよ!」
「頑張ってね。あなた!」
「頑張ってください。お父様!」
こうしてエバンズ子爵家の絆は今までよりずっと強まった。