何の前触れもなく、ある日突然に
死んだ記憶も、召喚された覚えもない。
なのに俺は女神の目の前にいた。
「私の名はアルベ・アディール。よろしくね」
真っ赤に燃えるよな赤い髪。薄っすらと肌が透ける真っ白な衣を羽織っていた。
ここは天界? 俺は死んだのか? では目の間にいるのは……やはり女神?
「それにしても内包する悪意を上手いこと包み込んでいますね。フフ。残念ながら……ここは天界でなく、私は女神でもありません」
考えが読まれる。記憶も読まれる。逆らうだけ無駄ということか。
「無駄な説明を省けて助かります。それでは異世界に転生させますね。目的はいずれ気が付くでしょう。また能力は……」
なるほど。豪華な特典付きか。
そして、俺は産まれる直前に特典・幻影を使って、超絶美少女に化ける。
特典・回復なのだが、街の人々は強力な治癒魔法が使える聖女として、俺を特別扱いする。
食事や衛生面で言えば、元の世界に遠く及ばないが、それ以外は何も不自由はない。
元の世界では特別な人間が得られる幸福について考えもしなかった。
男たちは媚を売り、女たちからは敬われ、最高に気分が良い。
マルガという少女に会うまでは……。