プロローグ
日中の暑さを忘れさせるほどに澄んだ冷気が裸足の足先を優しく撫でる。私は、足を外に放るように窓際に座っていた。
ここはアパートの最上階にあたる、三階の角部屋。ここから落下してしまえば、良くて重症、悪くて死亡といったところだろう。
私はウキウキと足をバタつかせながら、SNSにある投稿をした。
『生きてるだけで人に迷惑かけるなら、私なんてもういらないよね。きっと誰も私を愛してなんかいないんだ』
窓から外に放り出された足の写真を添付したその投稿には100を越えるコメントが送られてきた。
『どしたん?話聞こか?』
『アイちゃんにそんなこと言わせるなんて・・! 俺はアイちゃんのこと必要だと思っているよ!』
『大丈夫か?俺がなんとかしてやっから、とりあえずDMしていい?』
いつもの私なら、この時点で満たされていただろう。多くの男達の注目を受けながら誰かに必要とされる感覚は、麻薬のような中毒性があった。
しかし、《《今の私》》は違う。あの男に出逢ってしまった私は、有象無象の下心丸出しコメントなんかでは満たされなくなってしまっていた。
私はSNSに投稿したものと全く同じ形式で、あの男に写真付きでメッセージを送信する。
『生きてるだけで人に迷惑かけるなら、私なんてもういらないよね。きっと誰も私を愛してなんかいないんだ』
数分経過して、あの男が返事を送ってきた。
『わろた』
私の中で怒りと悔しさが心の中で沸々と煮えたぎるのを感じる。
数々の男子高校生たちを骨抜きにしてきた私のアプローチが通じないこの『グレネードランチャー男』を攻略しなければ、私は永遠に満たされない。
絶対にこの男を落としてみせる。ビジネス地雷女の誇りにかけて!