蝶蝶
蝶が綺麗に思えなくなった瞬間を僕は覚えていない。
でも、苦手になったのは、綺麗な蝶々について、より深く知ったからだと思う。
図鑑で蝶の細部を見たときか、それとも蜜を吸うとき姿を動画で見たときだろう。
細部のあの、美しい羽と違い、醜悪と感じる本体を見たから。
最近僕はなんでだろう?という疑問を余り持たなくなってきた。
知りたいな という気持ちのままで終わっていいじゃないか。
そうすればきっと綺麗なままだ。
味わい尽くさなくたって良いじゃないか。酸いも甘いも。
もっと近づきたい。もっと知りたい。
でも、僕は彼女に幻滅しそうな自分が怖い。
足りない部分を、知らない部分を綺麗な空想で塗り固めた。
イメージした色と違うだけで。
ただそれだけで。