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第6話:なるべくお金になってくれ

期間が開いてすいません、新作と仕事と、あと今回の話、結構苦心してました。


あと友人と宇宙行ってました(おい)。

というわけで更新です。

 青の噴水の近くには誰かのゴミや残飯が所々に放棄された様子だった。ツンと酸っぱい匂いが鼻をつき、俺は思わず顔を(しか)めた。


「てか、ここ本当に東区の隣か?いくらなんでも……」


 酷すぎる。

 整理され、草木1本すら生えていない。そんな美しき都プリアトラの北への入口にしては、あまりにもおどろおどろしい。

 噴水の水は少しずつ外へ流れ出し、勢いも赤のそれとは段違い。色もどこか黒ずんでいるように見えた。


 人を見れば、皆沈んだ顔をして木版を持っている。

 木版をよく見ると、そこには擦り切れてほとんど読めないような文字。

 形から推測するに『職をくれ』と書いてある様に思われる。

 これを書いた人物は恐らく文字の読み書きが出来たのだろう。そして持っている人は出来ない、だから書き直すことも出来ない。


「分かったか?平和、自由安全って名の元にこういう奴等が放置されてる。これがこの都市の異常事態だ」


 ふと、聞いた事のある声が耳に届く。


「……これ」

「あの人は昨日死んだ。遺体から肉や金品を剥がれてないのは奇跡だ。先約がいたか……人徳があったか。あの木版だって使い古しさ。ずっと持って、都市に訴えてる。意味があるのかは別として、な」

「……悪い」

「自己満足はやめろ」


 理由もなく謝った俺に、パトラは吐き捨てるように呟いた。


「さ、行くぞ。武器は持ってるな?」

「持ってるが……パトラが居るから問題ないんじゃなかったのか?」

「バカ、ここは北区だぞ」


 北区だぞって自分で言うかね……。

 まぁ、それだけ危険という事だろう。身を引き締めて行かねばなるまい。


 俺は周りを警戒しながら、歩き始めたパトラに付いて行っ……


「痛ったぁ!何すんだ!」

「カモられるぞ、下手な事せずに堂々としてろ」

「お、おう」


 まさかの叱られである。が、蛇の道は蛇と言うしここは素直に従うが吉である。

 俺は左右を見回すのを止め、呆れ顔でこちらを見るパトラに了解と目でサインを送った。


 溜息を大きく吐いて再び歩き始めるパトラと、それに続く俺。

 噴水から続くいくつもの道の1つを、パトラは迷う事無く選んで進んで行った。

 入り組んだ路地を右へ左へ歩いていると、やがて先程よりは広い道路へと出た。

 東区の大通りには見劣りするが、それでも十分に広い道だ。

 道の端に横たわっていたり、座り込んでいたりする者が多く、道を歩いているのは俺達だけ。

 汚れきって整備されていない通りは土が積もっている場所もあり、踏み心地は石というより土の地面だった。

 

「結構広いんだなぁ、北区って言っても」

「当たり前だろ。王都の一角だぞ?小さいワケない」


 確かにそうだな。東門から入った大通りから白壁までも、見た限りでは相当の距離があった。

 それと同じ面積ではあるんだし、狭い方がおかしい。


 しかしそんな北区でも、城はずっと見えているのだからすごい。方向感覚が鈍くても何とかなりそうだ。

 白壁を右手にそんな事を考えていると、パトラが急に立ち止まった。

 またマズい事をしたのかと身構えるが、そんな事はなく。

 パトラはニヤリと嫌らしく嗤ってこちらを振り向いた。


「っと、ここから先は一般客立ち入り禁止だ。チケットがいる」

「チケット?」


 何の事やら分からない。

 俺が首を傾げてパトラを見ると、パトラは自らの後頭部を二回、パンパンと叩いた。

 なんの合図だったのか。幽鬼の様な表情をしていて座っていた人達が、ジロリと一斉にこちらを向いた。

 額から冷や汗が流れ落ちるのを感じ、それを誤魔化す様にパトラを見る。


「脅し(たか)りって事でいいのか?」

「人聞き悪いな。俺は案内するとは言ったが、金をとらないとは言って無い。2000ラディでいいぜ」

「2000ラディ……4万円かよ。ぼったくりもいい所だな」

「まだ状況分かってないからそういう事が言えんだろうな?」


 ポンっと、右肩に置かれた()()に思わず俺は横に飛びのく。

 手というには大きすぎるが、そうとしか思えないその感触。俺は慌てて横を確認した。

 しゃがれて、ドスのきいた声の主を見れば、そこには人間と思えない巨体があった。

 この世界にきて信じられない程の大男とは沢山出会ってきた。だがこれは……


「ダントツで優勝だよ、デカすぎる。本当に人間か?」

「いいや、違うさ」


 やはり声の主はこいつだったらしい。おそらく4メートルは超えているであろうその巨体から発せられる声は、有無を言わさぬ圧力があった。

 強い、勝てない。と直感させた。


「今、2500ラディに値上がりした」

「何……?」

「時価だよ、時価。さあ、どうする。払うのか払わないのかはっきりしろよ」


 こちらを見下すように嘲笑うように伺う問いに、俺は怒りが湧き上がってくるのを感じた。

 ふざけんな、こんな下らない事で5万も取られてたまるか。


「お小遣いならドーブって奴に貰えよ、会って一日の奴に求めてんじゃねえ」

「交渉決裂だな、北区の礼儀を教えてやるよ!」


 俺は後ろから襲ってきた鈍い衝撃とともに、意識を完全に吹き飛ばされた。



 *



「ッてーな。北区の礼儀ってただの喧嘩じゃねえか……なんとなく察しはついてたけどさ」


 最低最悪の目覚めだ。全身打撲、後頭部の鈍い痛み、そして何より俺を縛る拘束具。

 俺は仰向けに、全身を剝かれた状態で大の字になって床に縛り付けられていた。首も動かせないし、結構な歓迎具合である。


 また裸かよ、と思わないでもないが、まあ予想の範疇だ。そして俺は多分この後……殺されたりでもするのだろう。

 リスポーン地点が何処だったかは覚えてないが、確か町の中で一回言ってた筈だ。町中に復活してゾンビアタックするしかない。

 幸い方向感覚とか記憶力はある方だし、来るまでの道も大体覚えている。実際にチケットが必要なわけでもあるまいし、小汚い格好で走り込めば何とかなるんじゃなかろうか。


「なんなんだよこれ。手足に……鎖がつけられてる?もうちょっと丁寧にだな……」


 俺が贅沢な不満を口にすると、左の方からそれに答える声が聞こえた。


「専用の部屋まで用意したんだ。好待遇ってもんさなぁ?」


 甲高い、女性の声だった。

 居たのにすら気が付けなかったのは情けない限り。しかし、足音の一つもなかったし、視界にも映っていなかったので気付けたはずもないか。


「パトラに免じて許してくれる気ってあるか?」


 あえて敬語は使わない。どうせ殺されて元々だ。最低限、舐められないようにしないといけないだろう。

 こういう口調の使い分けが命を分けることも大いにあるだろうし、な。


「いいや、あいつはアタシたちの中で一番マシさ。会った時に殺されたりしなかったろ?殺した方が儲かるのに、まだビビってやがるんさ」

「胸糞の悪い話だな、俺を殺すのは確定事項か」

「当たり前さ。馬鹿か、アンタ」


 そう言うと女は、仰向けにされた俺の体の上に馬乗りになった。柔らかい感触が腹を刺激するが、楽しんでる余裕がないのが唯一の難点だ。

 ようやく見えた女の顔を観察する。


 目のあたりに大きな傷があり、それを覆い隠すようにつけられた眼帯。そして獰猛で細い目つきと、瞼の奥に光る赤い瞳が俺を見詰めていた。

 歯を見せて笑うその口には、いくつか穴が開いている。おそらく何本か歯が折れているんだろう。

 少し赤みがかった茶髪は、非常に短く乱雑に切られている。まるでナイフで無理やり切り千切ったかの様な……いや、実際そうなのか。

 

 服はボロ布一枚だったが、腰には拷問や殺人に使うのであろう暗器の様な刃物が入れられたポーチがついていた。

 前にラードに聞いたことがある、人間の体は安く、そして触媒として優秀だと。

 俺はなるべく痛みを遠のけ情報を得ようと、時間稼ぎをすることにした。


「生かす意味がねえさ。そして簡単に稼ごうとすれば、結果的に死ぬさね。まあ、なるべくお金になってくれ」

「殺すのは結果だと?生かして摺った方が得じゃいのか。目的はなんだ」

「魔法触媒さね!」


 返ってきたのは行動だった。

 カイン、と鉄で石を叩くような音。直後、俺の左手の指先に激痛が走った。

 いや、正確には、指があった場所に、()()()()()()()痛みに、俺は、悶えることすら許されなかった。

 左手の指全部、持っていかれたと瞬時に理解した。


「……ッ!ってえええええ!」

「おいおいまだまだこれからさね。うるさいのは嫌いなんで、丁寧に素早くを心掛けるから。暴れないこったよ!」


 再び激痛。今度は右手。ドクドクと傷口で血が脈打つのを感じ、その感覚が更に痛みを加速させた。

 しかしまだ、切れてない。


「ほらぁ……、暴れるから綺麗に切れなかった。大人しくしてないと余計痛むだけだよ!」


 再び激痛。継続的な痛みと、強い痛みと、それによって大量に流出している血液。あらゆる要因がまじりあって、怒りや、思考が、全て吹き飛び、やがて考えることすらも出来なくなって来る。

 痛い、痛い、痛い、痛い。


 なめていた、死を、シを、舐めて、ナメて、舐め腐っていた。初めて死んだのは何時だ?いつ俺は死んだんだ?

 やめろ、これ以上やめてくれ。許してくれ、頼む。俺が悪かった。甘く考えていた俺が悪かった。


 何がいけなかったんだ。俺が死なないのをいいことに、カッコつけたことか?それとも死なない能力を過信していたから?

 やめてくれ、やめて。


 口からは嗚咽と咳のみがあふれ出し、言葉を紡ぐのも、その脳味噌も劣化して使い物にならなくなっていた。


「うぐっ、ゴホ、ゴホ!許して……ください。うっ。悪かったから、た、頼むから……」

「何言ってんのさ。あんたは悪くないさね。ただ、馬鹿だったんだ」


 足先に衝撃、音を感じる。これは、痛い音だ。

 痛い、痛い、痛い、痛い!

 悪くなかった?バカだった?なめていた?

 ああ、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!


「痛い、死にたく、ない」

「うるさいね、黙ってほしいさ」


 右、衝撃。痛みが来る。

 脳が、体が、絶望的なまでに訴えてくる。死にたくない。

 そう、死にたくない。何が、死ねばいい、復活できる。こんなに痛かったのか?こんなに、痛いやめろ、ああ、そうか。もうやだ。やめろ。


「もう、やめ」


 耳に痛み、音が遠く、次はどこだ、やめ、やめて。いたあ、意識が

 遠のい、て……。やだ、死にたく……

次回は3日以内に出す予定

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