連絡先交換
「それでは君のご家族に連絡を取るから連絡先を教えてくれるかな」
「はい」
頷いてスマフォを取り出し、連絡リストを開いて見せる。灰沢さんはそれをメモに取り、自分のスマフォに打ち込んで部屋を出てから電話を始めた。
これで一つ、面倒なことを解決できた。向こうも俺がいないほうが清々するだろうからこれでいいんだ。
『剣、少しハ落ち着イタのか?』
「ん、まぁな。てかお前、よく日本語わかるな。いくら機械生命体って言ったって」
『細かイことを気にスルな』
「細かくないよ。都宮さん、ゼロの声って聞こえます?」
「聞こえてるわよ。装着者とでも言えばいいのかしらね、エヴォルダーと合体できる人間はエヴォルダーの声を聞こえるって認識でいいわよ」
隣にいるクワガタ……シンザンも肯定するように頭を一度縦にふる。
なるほど、納得だ。要は一般人と俺らでは相性、あるいは周波数が違うとでも捉えればいいというわけだ。
それでも不可解なことはあるけど……今はそう納得するしかない。
さて、あとは向こうが説得するまで時間をどうつぶすか……
「ねぇねぇ剣くん、連絡先交換しようよ」
食い気味に俺に詰め寄る都宮さんに思わず「あぇ?」と変な声を漏らしてしまう。
「えと、なんで……」
「なんでもなにも、これから同じ場所で働くわけだから連絡先の交換くらいしときましょうよ。もし緊急連絡があった際には必要でしょ?」
「え、えと……」
いかん、そもそも女性に慣れていないせいで声がうまく出せない。
それを察してくれたのか、シンザンがテレパシーを送ってくれたようで『一姫ちゃん、彼困ってるよ?』と助け舟を出してくれた。
あらやだごめん、と素直に一度距離を取ってくれる。
た、助かった……
『剣、ヘタレというヤツなのカ?』
「ヘタレとはちょっと違うけど、あんまり人と会話するのは慣れていない社会不適合者なところは自覚してるよ」
ゼロの問いかけに素直に答える。
自分に自信がないという自覚も相まってか、人と話すのはあまりうまくない。
だからいじめられもしてたんだろうけど、今は関係ない話だ。
「ごめんねぇ、つい勢いづいちゃった。それと、都宮さんじゃなくて一姫って呼んでよ。さっきは呼んでくれたのに」
「う、人の下の名前呼ぶの慣れてないんですよ……さっきのは嫌味のつもりでしたし」
「あんなん嫌味にもなりゃしないわよ。大丈夫よ、取って食べたりはしないから」
「そ、そうなんですか」
(マジで嫌味のつもりだったんだ……根がきっと真面目なのね、剣くん)
若干視線が生暖かくなって、すっごい母性溢れる笑顔でなんか頷いている。少し怖いぞ。
とりあえず、ここでは連絡先交換しておくのが吉なのか……? いやでも俺みたいな奴の連絡先いれても「きもい」とか思われないか……
『剣、全部口にでてイルぞ』
「うそ!?」
「本当よ。そんなきもいとか思わないって! お姉さんを信じなさい!」
ドン、と自分の胸を強く叩いて「えへん」とこぼす。
なんか、こういうキャラの人は俺と正反対な気がする。いわゆる陽キャラ、というやつか。
うーん、こうやっぱり自信がないのはダメなのか……でもご立派な人間でないのは確かだし……
「もう、うじうじしないの!」
素早く背後に回り込まれ、思い切り抱きつかれる。
そして背中にはと、とても柔らかいマシュマロのようなものが……!
「み、都宮さん! あ、当たってます!」
「当てているのさー! ほら、早く連絡先交換しないともっとやっちゃうぞー? ついでに一姫って呼びなさーい?」
「わ、わかりましたから! い、一姫さん! お願いですから離れてください!」
自分でも顔が真っ赤になるのがわかりつつ、必死の懇願をして離れてもらう。
深呼吸をしながら早鐘を打つ心臓を落ち着けつつ、一姫さんを見る。
彼女はいたずらが成功した子供のように「にひひ」と微笑んでいた。