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エヴォルダー  作者: 法相
管理局
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管理局

「ごめんごめん。でも私より事情に詳しい人がもうすぐ来るはずだから……と、噂をしたら」


 カツカツ、と足音が聞こえてくる。それと羽の音……そしてドアが開かれる音がした。

 そこにいたのは、三十路半ばのスーツの男だった。年齢は三十代半ばだろうか、少しくたびれている様子に見えなくもない。

 その後ろにはゼロや都宮さんのクワガタもいた。


「すまない、都宮くん。遅れてしまった」

「灰沢さん。お疲れ様です。剣くん、こちらの方が私の上司でここの責任者の……」

「灰沢志郎はいざわ しろうです。すまないね、こちらの都合で君が意識を失っている間に連れてこさせてもらった」


 誘拐じゃん、と思いつつも俺に人質の価値とかないよな、と内心で自虐する。

 少し遅れて俺も自己紹介をして、ゼロが俺の元に来る。都宮さんの方にもクワガタが戻って嬉しそうに頭を撫でている。


「で、あの……なんで俺ここに連れてこられたんでしょうか。多少の想像はつくんですがこんな高級そうな部屋にまで呼ばれるほどとは思ってないので」

「ふむ、ごもっともだね。まぁそこのソファーに座ってくれ。ゆっくりと説明をしよう。もしかして都宮くんが説明をしたかもしれないが」

「とりあえずゼロはエヴォルダーとかいう未知の存在で、ほとんど概要がわかってないということはわかりました」

「ざっくりだ……ま、まぁいい。ともあれ君がここに連れ込まれたのは二つ理由がある。一つ目は君が我々管理局の存在を見たこと。それともう一つ、君がそのエヴォルダーと合体できたことだ」

「ん? そこの都宮さんだって合体できたんだから別におかしくない話では?」

『そうイう訳デモないノダ、剣』


 頭にゼロの声が響いてくる。なんか最初より片言が減っているような……それは置いておいて、「どういうことでしょ?」と聞いてみる。


「君にはそのエヴォルダーの声が聞こえているんだろう? それは私にはできない芸当で、かつ君が選ばれた証明でもあるんだ」

「選ばれたって……そんな大袈裟な」

「大袈裟じゃないわよ? だってこの管理局でエヴォルダーと合体できるの私だけだし。誰でも合体できるんだったらもっと世の中にエヴォルダーが知れ渡ってるわよ」


 そういうことだ、と灰沢さんはうなずくが、俺はまだうまく理解できていない。


「まぁ君がまだわからないのは無理もない。だが一つ目の理由は納得できるだろ? 我々は極秘裏に政府が作った組織だ。そのため情報漏洩しないように君を連れてこさせてもらった。何も知らずに今日のことをSNSで拡散されてしまったら今後に関わるからね。その上君は牢屋送りだ。それはこちらとしても気分が良くないからね」

「守秘義務ってやつですか。まぁこんなこと人に言って信用してもらえるとも思いませんが」


 そもそもスマフォに登録されているのって家族だけだし、ツイングみたいなSNSもやってないし、興味もない。

 俺がこの件を人に漏らすのはまずあり得ないと言ってもいいだろう。

 だがそれを信じて無事解放してくれ、というのはこの人たちにとっては無理な話だろうし、説明義務もあるだろう。


「俺は誰にもこのことを話してはいけないし、ネットに呟かない。破れば即刑務所って理解でいいんですよね?」

「その通りだ。迷惑をかけてしまって申し訳ないが……」

「別に気にしませんよ。ま、奇妙なのとも知り合えましたし」


 チラリ、とゼロを見る。『奇妙トハなんダ』と直接頭に響かせて訴えかけてくるが、今はスルーしよう。

 一度きりの人生に政府機関本当かは知らんがに関われる機会なぞそうそうない。そう言う意味だけでも貴重な経験だったとも言える。


「で、二つ目の理由なんですけど……合体できたことに問題があるんですか?」

「ある。こちらとしては合体できる人材は是非とも確保しておきたい。何しろ彼女でも手に負えないような人物も確認できたわけだしね」


 灰沢さんは都宮さんを見ると頭を抱える。合体できる唯一の人間ですら手に負えなさそうな相手が出た以上仕方はないのだろう。

 当の本人である都宮さんは「次は負けないわよ」とも言ってるが……まぁ置いておこう。


「別に俺はなにか手伝う分には問題ありませんよ」

「本当かい? こちらとしては嬉しい限りだが」

「ただ何かしらの利益は俺もいただきたい。さすがにただ働きっていうのは割に合わないと思うので」

「もちろん。とりあえずの要望はあるかい?」

「今は休みなんでいいんですけど、このエヴォルダー案件の際に学校をいいふくめてもらうのと……できれば実家からこっちに住まわせてもらうことを許可してもらいたい」

「構わないが……ご両親とは仲が良くないのかい?」

「……まぁ、ガキのわがままだと思って納得していただければ。あとその、言い難いんですがもう一つ。できればその……」

「お金なら支払うさ。リスキーなことに協力してもらう以上、対価は払わせてもらう」

「察してくださってありがたいです」


 今後生きていく上でなにかしら金銭は必要になる。

 あとはそれに見合うだけの価値を俺自身が付与しなきゃいけないってとこかな。

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