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エヴォルダー  作者: 法相
管理局
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泣きっ面に蜂

「う、ん……」


 頭が重い。けれどなにか気持ち良い感触が頭を包んでいる。

 一体なんなのだろうか、力が入らない目蓋を必死に開こうと力を振り絞る。

 うっすらぼやけて見えてきたのは、誰かの顔だった。


「あ、起きたわね」


 この声は……空き地で聞いた声……

 ぼやけた視界がどんどんはっきりとしてきて見えたのは、俺の顔を覗き込む都宮さんだった。


「ぁ……ども……って」


 今の俺は横に寝そべっている。そして後頭部は柔らかく、暖かい。

 つまり、俺は今膝枕をされている。


「どぅえ!?」


 思わず飛び起きてしまった。


「おっと」


 俺を回避すると「元気そうで安心したわ」と言われ、そのまま転げ落ちた。

 勢いがあったせいか地味に痛い。

 あたりを見渡せばなにやら高級感漂う家具で揃えられた部屋で、今都宮さんが座っているソファーもかなり質が良いのだろう、黒革で光沢がさらに高級感を漂わせている。

 アレだけでどのくらいの値段するのか……少なくとも一般サラリーマンの月の給料より高いだろう。いや、それよりも。


「あの、ここはどこでしょう……」

「詳しい話は後できちんと話すわ。まずは自己紹介しましょう。私は都宮一姫、一姫って呼んでね」

「……俺は新城剣です。呼び方はお好きにどうぞ、都宮さん」

「私としては呼び捨てでもいいんだけど? 剣くん」

「からかわないでくださいよ」

「本気なんだけどなぁ」


 口をとがらせて愛らしいアヒル口をしてくる。美人なので普通に様になっているのがなんとも愛らしい。

 しかしそれとこれとは話が別で……


「ちゃんと説明してもらいましょうか」

「わかったわよ。まぁまずここは私の属する組織、正式名称は長ったらしいからはしょって管理局って言っておくわね」

「そういえばあの女の前でも噛みそうな名前を言ってたな……」


 て、違う! いや違わないけど、もっと別の問題があった!


「お、俺とくっついてたやつは!? あのライオンみたいなやつ!」

「ああ。あのエヴォルダーくんなら別室で私のシンザンが見てるわよ。新個体だから少し窮屈をかけちゃうかもだけど……」

「とりあえずは無事ってことか。よかった……でもこの組織とやらも気になりますけど、そもそもエヴォルダーってなんですか? 生きてるようだけど、どう見ても、それに触ってもガワは金属でした。ありゃ一体……」

「じゃあ最初にその質問から答えましょう。剣くんもだいたいの想像はつくだろうけどエヴォルダーっていうのはいわゆる金属生命体なのです。それも特別な力を持ったね」

「まぁ明らかに異質な力を持っているのは確かでしょうね」


 俺の目の前で二人の女性のエヴォルダーが分離して、それから合体して常人をはるかに超えた動きをしていた。

 俺自身もゼロと会話のようなものもして、同じく合体した。けれども……実感がない。

 あの時のことが夢ではないことは彼女が今ここにいる時点で証明されている。


「話を続けるわね。彼ら、あるいは彼女らエヴォルダーの出現経緯は基本的には不明で、今回みたいに上から落ちてくるなんて話は初めてなの。さらに言うならエヴォルダーはその構造のほとんどがブラックボックスで現代の科学じゃ計り知れない存在っていうこと」

「おっといきなり当事者もわからないと来ましたか」

「ごめんね。ただいくつかの特徴はわかっているの。なぜか地球の生物の姿をしていること、会話はテレパシーのようなもので直接頭にくること、そして合体できること。このプロセスを解析さえできれば人類をさらに進化させるかもしれないことから進化を意味する『EVOLUTION』をもじってエヴォルダーって名付けられたの。まぁ存在自体が公になってないけどね」


 いわゆる機密事項ということか。

 しかしそうなるとこの話を聞かされた俺も無事ではすまないんじゃなかろうか。


「……俺はこれからどうなるんだろ」

「わかんない」

「わかんないんすか!? アンタが連れてきたんでしょう!?」

「いやー上からの指示でねぇ……でも悪いようにはしないから。多分」

「せめて確信してくれませんかねぇ!?」


 不安しか煽ってこないぞこの女。

 頭を抑えて大きくため息をついて「厄日だ……」とぼやいた。頭痛がするわ……

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