安堵のひととき
「そこからウチの支部の人間が手錠やら拘束着やら持ってきて身柄を確保、それから二時間後くらいに本部の人間たちが来て汚職がバレた所長もろとも連れて行かれたわ」
「俺が意識がない間にそんな……俺どれだけ寝てたんですか?」
「二週間は寝てたわよ」
……二週間?
「は、はは……冗談ですよね?」
『本当だよ。あんまり起きないから先に起きてた一姫ちゃんたちやゼロとかすごく心配してたよ? 特に手術中の時なんか泣いてて……』
「シンザン、ストップ! ばらさなくていいから!」
「……ご心配をお掛けしたようで、すみません」
正直自分でも思いがけないところではあるが、心配かけてしまったのはまた別の話だ。
けれど、もう一つというか、これが一番気になることだ。
「花奏は、花奏はどうしたんですか!? あいつもだいぶ重傷だったから……いってぇ!?」
思わず起きようとしたらまたもや激痛に襲われ、悶える。
「剣くん、落ち着きなさい。大丈夫よあの子ならちゃんと無事だから」
「本当ですか!」
「ええ。犯罪に加担していたことは間違いないから完全無罪というわけには行かないけどね。今は彼女も別部屋で治療中よ。女性職員が監視、黒鉄とも離してるから特に危険はないだろうし、右足と左腕は骨折してるし他にも怪我多数。まともに動けないわよ」
「そうですか……でもよかった」
命があるのが、一番大事なことだから。
「自分が一番重傷なのによく人の心配できるわね……優しいこと」
「そりゃそうでしょ。俺からすれば、小さい頃の唯一無二の親友だったわけだし……」
それに再会した時は最悪だったが、なんだかんだと憎めないやつだし。
それを聞くと一姫さんは「羨ましいなぁ」とこぼした。
「私友達なんいたことなかったし」
「え、そうなんですか?」
「そうなのよ。まぁ最近は違うんだけど……それではがんばった剣くんにご褒美を上げましょうか」
「へ?」
ご褒美とは、と聞く前に思い切り抱きしめられて頭を撫でられた。
しかも柔らかいものが顔を覆っている。具体的に言うと胸。
「ななななあ!?」
「本当に、お疲れ様。それにこんなにぼろぼろになるまでがんばってくれて……ありがとう」
動揺する俺とは相反して、落ちついた様子でそのまま俺の頭をなでている。
……変に意識しすぎると俺の頭が爆発しかねない。
抵抗することをやめ、俺はそのまま暖かさと心地よさ、そして安心感に包まれながら穏やかに意識を落としていった……
※
『我らがいるのによくやるな、この女』
『精一杯のアプローチだよ。ほら、剣くん完全に寝ちゃってるけど一姫ちゃん顔真っ赤』
「……ナニモイワナイデクレルトウレシイカナ」
次回で最終回予定です。
お楽しみに!




