一難さってまた一難
機械生命体との合体って最高にかっこいいですよね!
『承知』
エヴォルダーの、ゼロの身体が分解される。
そして両手両足には四肢の爪を模した白銀の爪が、籠手が、兜が瞬く間に装着されていき、そのまま走り出して二人の装着者の間に割って入った。
「うそ!?」
「これは……!」
咄嗟に後退しつつ、一姫も女も驚愕の声を漏らす。
二人の間にはゼロを身に纏っていた剣が立っていた。
「……状況が変わったか。この場は引き分けだ、管理局の女」
冷静で淡々とした声でそのまま女は跳躍し、鉄の翼を広げ羽ばたきさっていく。
凄まじい速度での離脱だったので追いかけることはできないが、それが目的ではないから最善の状態に持って行けた幸運に安堵する。
「これで一難去ってくれたか……」
「ちょっと君! すごいじゃない!」
拍手しながら変身を解き、素直に剣を褒める一姫。
「あ、どうも……って」
(うおぉ……めっちゃ美人だ)
改めて見ると一姫は目の覚めるような美人であった。快活な印象とうらはらに儚さも感じるその白髪を尻尾のように揺らしているところも実に愛らしかった。
「えと……いや、その」
しかし対人関係が苦手な剣は困惑してしまう。ここからどうすればいいものか、まるでわからなかった。
『……スマン、限界ダ』
「へ?」
頭に直接響いたゼロの声を聞いた直後、身体中の力が抜けてそのまま剣は意識を失った。
※
「ここまで来れば安全か」
山中に降り立ち黒鉄との変身を解除した女、紅花奏は呟き横腹を抑える。
(……ボクが押していたはずだったんだが、彼が割り込んでくる一瞬の隙に一撃入れていたとは。抜け目がない)
ダメージはさしてないが、今後油断できない相手であることはしっかりと頭に刻み込む。
「それにしても彼も巻き込まれて不運なことだ。そうは思わないかい、黒鉄?」
『かも知れんな。しかしあの青年があの獅子と合体できた以上、今回のことは必然だったのであろう』
「そういうものかな。ま、なんにせよ雇い主様に失敗したから報告しなきゃね。なんせあの一姫って人のこと聞かされてなかったわけだし、多少は大目に見てもらわないと」
『だな。しかし花奏よ、一つ聞いていいか?』
「なんだい?」
『本当にお前はあの青年を見逃す気は、あったのか?』
純粋に素朴な疑問。それに花奏は微笑んで答えた。
もちろん見逃したよ、と。
その答えに納得したのか、あるいはまだ裏を感じているのか黒鉄は「そうか」とだけ答えてそれ以上口を開かなかった。