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エヴォルダー  作者: 法相
暴く未知
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目覚め

「はっ!」


 目が覚めると、見知らぬ天井が映った。

 管理局の医務室、ではないようなのは確かだが……あそこの天井はもっとシミあるし。


「でもだとするとここは……」

『……起きたか』


 ふと、ゼロの声が聞こえて横を見る。

 そこには籠のようなベッド(クッション?)に」入っているゼロがいた。

 その身体には数多の亀裂が入っており、灰沢さんとの戦いでいかにゼロに無理をさせていたかがわかる。


「すまんゼ……!?」


 体を起こそうとしながら謝罪の言葉を口にしようとした瞬間、激痛に襲われ声が出なくなる。

 いやちょっと待ってこれほんとにアホほど痛いんだけど!?

 起こしかけた身体はあっさりとベッドへと逆戻りし、痛みに悶え苦しむ。


『無理に動こうとするな。我とて無理に動くなとゆわれているのだから』

「ぉおお……」


 まぁ、あれだけ後先考えずに立ち回ればそれも当然なのだろうけど。

 無理やり痛覚を抑えこんで気合いと根性だけで動いたのだから当然の代償と言えば代償だ。


「つ〜。そ、それよりも一姫さんと花奏は? それにこの部屋は……」


『ここは管理局管轄の病院よ』


 と、聴き慣れた声が隣から聞こえた。

 身体はしんどすぎて動けないので頭だけ声の方へ向けると、仕切りのカーテンに人影が見えた。そしてこの声は……


「ようやく起きたわね、剣くん」


 カーテンを開き、にひひと悪戯っぽく笑う一姫さんがいた。


「一姫さん! よかった……とは言えないですね」


 腕には痛々しくギプスが巻かれており、頭の方にも包帯が巻かれている。

 一姫さんは「気にしなくていいのよ」と明るく笑っているが、痛々しいのは変わりない。


「私より剣くんのほうがよっぽど重傷よ。骨折だけで何箇所あるかわからないし、内臓の方もなかなか……エヴォルダーと合体できるおかげで私たちは多少回復力上がると言っても、これだけ重傷だとどれくらいかかるやら……」

『お医者さんも全治で二ヶ月以上はかかるだろうって言ってたしね』

「シンザン! お前の足、すまない……」


 シンザンの足の一本はまだ亀裂が入っており、刃が欠けている部分もある。

 具体的に言うと、俺がぶん投げてた方の足。


『いいよいいよ。時間が経てば治るものだし、こんな状態でも一姫ちゃんが万全だったらこれでも戦えるしね』

「もう灰沢さんみたいな化け物クラスとはやりあいたくないけどね」


 はぁ、と深いため息を吐く一姫さん。


「て、そうだ。一姫さん、花奏と灰沢さんは……」

「ちゃんと話してあげるから落ち着きなさい。まず結論から言うと……灰沢さんは投降して今は本部の方にある独房にいるわ」

「……投降した?」

「ええ。剣くんが意識を失った後になるんだけど……」


 ※


「「剣くん!」」


 高高度に飛翔した剣が灰沢から剥がれ落ち、落下していく最中に一姫と花奏が同時に叫ぶ。

 直後に合体も強制的に解除され、ゼロとも分離した。このまま落ちれば間違いなく身体は地面に叩きつけられ、潰れたトマトのように中身が飛び散る。

 しかし、そんなことにはならなかった。

 剣の手から離れ、すでに解放された灰沢が急降下し鶴来を放り投げ、意識のない剣とゼロを手を握る。

 落下速度は急激に下がり、徐々に降りていき剣とゼロを地面に寝かせた。


「……助けた、のか?」


 呆然とした様子で花奏は呟き、その声は灰沢の耳にも届いたようで「そうだよ」と返した。


「最初に加減こそ間違えたが、彼を殺す気なんて最初からないさ」

『志郎、申し訳ありませんが限界です』


 エグゼの言葉とともに灰沢の合体も解除され、エグゼは一度灰沢に目配せをした後にすぐに飛び去った。


『お、置いて行ったぁ!?』

『……なぜに?』


 シンザンと黒鉄も困惑せざるを得ず、頭に?が浮かんでいる。


「黒幕は俺、と言ったけども仲間に置いていかれないとも言ってないだろ?」

「詭弁ね、この腹黒親父」

「君は一気に辛辣になったねぇ都宮くん」

「当たり前でしょ。こっちも大概ひどい目を見たんだから。で、エグゼだけ逃げてどうするつもり? 言っとくけどあんた一人で逃げられるとは思わない方が……」

「もう俺に戦う意志はない。投降する」


 両手を上げて戦意のないことを示す。


「……はぁ!?」

「いやぁ剣くんの最後にやった羽をもぎろうとしたのがけっこうな急所攻撃でね……この両手上げるのも実はかなりしんどい」


 そういう姿は飄々とした様子からは想像できないが、もう交戦する意思がないのだけは確かなようには一姫には見えた。

 だが、これだけのクーデターを起こしていた人間があっさりと降伏するのはどうにも不自然としか思えなかった。


「安心しなよ。武器を持ってるかどうかなんかは君はわかるだろ?」

「……妙な動きをしたら殺すわよ」


 脅しではなく本気。

 それは近くにいた花奏もしっかりと感じ取った。


「もちろんさ。なんなら両足両腕の腱も切ってくれて構わないよ」


 対する灰沢は飄々とした態度は変えない。

 少しだけ静寂の時間が流れ、やがて呆れたようなため息が一姫から漏れた。

 腰の方から連絡用のスマフォを取り出し、連絡を取り始めた。


「都宮です。主犯である灰沢志郎の身柄を拘束するため至急こちらまで誰かこちらに。場所は……」


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