瞬きの戦い後編
二人が交差し刀がぶつかり合い、鈍い金属のぶつかり合う音が響いた。
折れたのは、一姫の刀の内の一本であった。
交差した直後に二人は地面に降り立ち、折れた刃が地に突き刺さる。
数瞬の間沈黙が流れ、膝をついたのは花奏であった。
「ぐぅ……!?」
脇腹の装甲を切り裂かれ、血が吹き出す。
致命傷ではないものの大幅な戦力低下は間違いなかった。
「参ったな……確実に倒したと思ったんだけど」
『花奏、しっかりしろ! くそ、戦力では我らの方が優位だったはずなのになぜ……!』
黒鉄の苦痛の声に対し、シンザンは『こっちも手痛いんだけどなー』とこぼした。
一姫の方も肩の装甲を砕かれ、深々と斬り込まれた傷がある。先ほどの一撃で受けたものだ。
「腕一本切り落とす予定だったけれど……狙いが甘かったかな」
刀を突き刺し、杖のようにして立ち上がる。
それを見てまだやる気なのか、と少々呆れつつ一姫は「理がうわよ」と悟すように返した。
「正確すぎだったから狙えたのよ。確かに一歩間違えたら左腕ぶっつり切断されてたでしょうけど」
「……渾身の一撃だったんだけどね。防御しても完全に切れたと思ったよ」
『まさかあれを堪えるとは』
「堪えてないわよ!? 二本とも折れる寸前にしたあんな一髪受け切れるわけないじゃない! ただ流しただけよ!」
『流した、だと?』
「そう。ほんの少しだけ勢いを上に逸らしたのよ。それでも肩の装甲は砕かれるわ正直あげるのも辛いくらい痛いわで散々ね」
ケラケラと笑いながら答える一姫に花奏と黒鉄は言葉を失う。
攻撃の軌道を逸らすと簡単には言ったが、大きく差のついた相手ならいざ知らずかなりの接戦になるほどの相手にそんな賭けに出るのは無謀でしかない。
『貴様、阿呆か?』
「失礼な。勝算は多少はあったしここでやらなきゃ勝ち目はなかったわよ。その上で刀一本、もといシンザンの足一本を犠牲にしてね。肉を切らせてなんとやら、ってね」
『まぁ正直なところ手痛い欠損だけど、時間が経てばくっつくしね』
「……参った。ボクたちの負けだよ」
苦笑しつつ花奏は黒鉄との合体を解除し、両手を上げる。
「えらく素直ね。まだなにか隠してるのかしら」
「とんでもない。元々ボクは空っぽだからね、戦麗華に加担したのもただの食い扶持稼ぎさ。まぁ剣くんと再会できたのは嬉しい誤算だったけど」
ポッ、と一瞬にして表情を赤らめる花奏に今度は一姫が苦笑する番だった。
黒鉄の方ももはやどうでもいいのか傷の修復に充てるように静かになる。
「と、そうだ聞いておかなきゃなんだけど……」
「なんだい? 答えれることには素直に答えるよ。敗者には抵抗する権利もないしね」
このいさぎの良さは素直に見習うべきだな、と感心しつつ一姫はとある疑問を発した。
「管理局にいる内通者って……」




