生死の境
久方ぶりに更新です。
新しい仕事に慣れるのに必死で、体力仕事なのでくたくたになっておりました。
でも褒めてもらいながらやれているので仕事執筆共に頑張っていきます。
『先の二人を見ればあの一撃に耐えれんだろう』
(だな。早く一姫さんを……)
すぐに気を失っている一姫さんに近づき、水面へと浮上した。
「ぷはぁっ! 一姫さん、大丈夫ですか? ……一姫さん?」
「……」
反応が全くない。背筋に悪寒が走り、耳を彼女の口元に寄せると息をしていなかった。
「っそだろ!」
心臓が早鐘を打ち始め、最悪の事態を想定する。
急いでダムから這い上がり彼女を横に寝かせ、脈の方も測ってみるが動いていない。感じられない。
「よくやった剣くん! 犯人は全員気絶しているからこれで捕縛は楽に……どうした?」
『一姫ちゃん? なんで動いてない、の……?』
「灰沢さん! 早くAEDをとってきてください! シンザンは人間の方だけとっ捕まえてこっちに運んで周囲の警戒!」
「任された!」
ゼロとの合体を解除し、灰沢さんが場を離れるのを確認してから一姫さんの服を破いてから心臓マッサージを始める。知識がある以上、有効活用するしかない。
力を入れ過ぎれば折れてしまうが、この際加減なんかしている余裕はない。
強く、速くリズミカルに三十回胸を圧迫させ、気道確保。人工呼吸を行う。
無我夢中にただ一姫さんを助けるために必死に、何度も。
『一姫ちゃん、お願いだから起きて……!』
「起きろ……起きてくれ……!」
必死に、ただただ必死に彼女の素性を願う。どのタイミングで呼吸が完全に止まってしまっていたのかはわからないが、まだ自力で呼吸させることまで戻せることができるはずだ。
だから頼むよ……頼むから!
これで幾度目かの人工呼吸で息を吹き込む。
「……げぼっ!」
息を吹き込んで顔を離した直後、彼女の口から水が勢いよく飛び出て俺の顔にかかった。
「っけほ……がほ……あ、あれ……」
当の本人は虚な目でなにが起こったのかわからないようで、少し困惑していた。
けれど……よかった。
「よかったぁ……」
「……剣くん、なんで泣いてるの……?」
まだむせているのか苦しそうにしているが、俺のことを気遣ってくれている優しさが嬉しかった。
そして言われて気づいたが、俺の目からは涙が溢れていた。
「だっでぇ……かずぎしゃん……」
「どうやら心配、かけちゃったみたいだね」
まだ力ないが、笑顔を見せ心配かけまいとしている。そういうところを遠慮しなくていいのに。
『一姫ちゃん! よかった、息を吹き返したんだね!』
『蘇生成功か! やるじゃないか剣!』
ゼロとシンザンもそれぞれ合体していた人間の方を引きずって連れてきて、一姫さんの様子を見て喜んでくれているようだ。
「それにしても胸がなんかスースー……あ」
一姫さんは今の自分の状況に気づいたのか、慌てて胸を隠した。さっきまでは無我夢中で人工呼吸とかしていたわけだから気にする余裕がなかったのだが……
『おい、この二人顔を真っ赤にしたけどどうしたんだ?』
『今は触れないでおいてあげよう? ゼロはその辺の空気読めるようになろうね?』
「か、一姫さん……とりあえずこれで隠してください……」
「あ、ありがと……」
自分の上着を脱いで彼女に渡す。濡れたままだから身体が冷えてしまうのが難点だが……あとは俺がこいつらを拘束しておいて灰沢さんを待つとしよう。
ヒロインを助ける主人公っていいですよね。うちの作品の子はこうやって助かると安堵して泣く傾向があります。
だって好きなんだもの。
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