そんじゃ一丁、もらっておけ!
久方ぶりの更新です。
頭の中でああいう感じにしよう、こういう感じにしようと悩むのは楽しいですね。
そして見直すと、自分がかつて触れていた作品の影響あるなぁとしみじみ感じます。
『もう三分近く経った……』
シンザンに焦りが募る。
人間が潜っていられる時間などたかが知れている。一姫とてそれは例外ではなくせいぜいが一般人よりは息を止めていられるくらいだ。
それが三分、敵がエヴォルダー装着者であることを加味したらこの時間まで水面に浮かんでこないとなれば生存は絶望的だ。
シンザンは明確に動揺し、羽ばたけなくなり地面に堕ちる。
一姫を助けに行った剣もゼロも戻ってこない。最悪の事態を想定し、恐怖がシンザンを支配する。
「クソ! 俺がついていながら……」
灰沢も思いきり地面を踏みつけ、苛立つ。
そんな時だった、水面が大きく爆ぜたのは。
『な、何!?』
シンザンも灰沢も視線は一緒の方へ向く。
そこに見えたのは、合体を強制解除させられる二人のエヴォルダー装着者と蒼い装甲を纏った剣とゼロだった。
※
ーー時はほんの数十秒ほど遡る。
信じられない光景だ、と思った。水中で装甲が再構築されているにも関わらず俺の身体はなんの負荷もかからない。
そしてみるみる内に装甲は白から蒼に。
ブースターも船のスクリューのように。
俺の口元には酸素ボンベのようなものが装着され、息ができるように。
装甲にも水中での抵抗を減らし動けるような鋭利なヒレと丸みが。
視界も徐々に地上のそれとは変わらないほどクリアに整っていく。
『……剣! 行こうぞ!』
先ほどまでとはうって変わった活力に満ちたゼロの声。
こんな急激な変化は普通に考えればあり得ない。けれど、今を逃せばもう勝機はないというのは本能的にわかった。
(任せろ相棒!)
スクリューを回転させ、近くにいたツヴァイ、ドライに狙いを定める。
このまま一直線に一姫さんを狙いに行ってもこいつら二人が阻害する以上、放置はできない。
『(ぉ、オオオオオオオオオオオオオオ!)』
スクリュータービンが一気に回転数がマックスになり、考えると同時に身体がツヴァイへ向かう。
そして間合いを詰めたのはほんの瞬きの間だった。
『嘘だろ速すギィ!?』
さっきとは比較にならない力の込められた拳を打ち込み、さらに無理やり姿勢を変えて進行方向をドライに移す。
ドライも迎撃の態勢を整えようとするが、ツヴァイを盾にするような形で突貫してくる剣とゼロに対してリーチが足りなかった。
そしてそのまま激突。
(やられたらやり返せ、だ)
全力全開のタービンの出力はツヴァイたちごと自らを水面へと苦もなく押し上げていく。
だが先ほどとは違い、ダメージを受けているのはツヴァイたちの方だった。
自分たちでコントロールできない速度での上昇、覚悟していない負荷が無理やり押し付けられているのだから当然だ。
覚悟を与える間なんて、与えない。
そして体感的にはほんの一、二秒も経たない時間で水上まで戻り、勢いが強すぎたのか水面が大きく爆ぜた上に宙に身体が浮いた。
だがツヴァイとドライの合体解除は確認できた。
もう邪魔者はいない。
「ゼロ、入って三秒で片をつけるぞ!」
『おお!』
両腕に装備されてるクローが黄金色に光っていき、俺たちは水中に戻る。
そして対象であるアインは茫然自失としていた。
『まさか……こんな』
なにかを呟いているようだが関係ない。
全速力でタービンを回し接近。掌底で顎に一撃いれ、一姫さんを解放させる。
(そんじゃ一丁)
『もらっておけ!』
スクリュータービンを片方だけ回転させ、身体を一回転。
黄金色に光ったクローがアインの胸元を打ち抜き、他の二人同様に水面へと殴り飛ばした。
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