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エヴォルダー  作者: 法相
はじまり
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ふり落ちるなにか

 2030年も過ぎた今ではもうほとんど見られることのない寂れた空き地で俺、新城剣しんじょう つるぎは土管の上で寝転がっていた。


「たまの休日、こうやってひなたぼっこで寝るのも悪くないな」


 あくびをし、陽気な天気なのでそのままうとうとする。頭の方もぼんやりと気持ち良くなってきて……目蓋も閉じそうな時だった。

 ズドン! と突如なにか重いものが落ちた音が響いて、さらに衝撃が襲ってきて土管の上から転げ落ちた。

 慌てて這い上がると、空き地の中央にはクレーターができていた。


「な、なんだ……?」


 土煙がまっていてまだ視界がよろしくないが、こんだけ土煙がまっているということは相当な質量のものが落ちてきたのだと思う。


「隕石でも降ってきたってのか? 冗談じゃねえぞ……当たらなかったからよかったけど」


 直撃したら俺の遺体なんぞ残っていないだろう。残っていたとしても残骸か。

 ……まぁ死んでカケラも残らないならそれはそれで困らないけど。

 とはいえ死ななかったのだからここでこの落ちてきた物体を確認、持ち帰っても文句を言われまい。


「さぁてクレーターできるくらいなんだから、相当な大物……え」


 近づき、見えたものは……動物だった。

 いや、正しくは動物の見た目を模した『機械』だった。


「ライオン……いや、これもしかしてライガーか?」


 トラとライオンの雑種の動物、以前ネットで調べた時にそういう生物がいると見たことある。

 しかしそれを模した機械がなんでこんな場所に落ちてくるんだ。


「わけがわからん……が、とりあえず」


 連れて帰ろう。落ちてきた理由なんぞは正直どうでもいい。

 素敵なプレゼントというわけでもないが、ここに放置するのもどうかと思うし。


「よいしょっと……思ったより軽いな」


 持ち上げた感じ二十キロと言ったところか。想像していたよりははるかにマシな重量だ。

 肩に乗せ、両手で固定させて立ち上がろうとしたその時だった。

 首筋にヒヤリ、とした物が触れていた。

 視線をやることはできないが、おそらく刃物だ。いやなんでや。


『動くな。動けば斬る』

(いや動かなくても斬る流れでしょコレ)


 とりあえず動きはしないけど、内心で反論しておく。


『お前が肩に乗せているソレをおとなしく渡せ。そうすれば命は取らない』


 つまり渡さない場合は命がないのかよ。実質選択肢はない状態だろそれ。

 しかしどうするか。普通に考えれば渡す以外に選択肢はないところだが、相手が約束を守ってくれる保証がない以上俺とて安易に返答をするわけにはいかない。

 なにはともあれ思考を止めたら間違いなくデッド・オア・ダイ。死がまっていることだろう。

 ここが法治国家日本といえど、年間の行方不明者は多数いる。某海外の拉致問題などもあるわけだし、俺がここで殺されて行方不明者になっても不思議なことはない。


「本当に殺さない? いくらなんでも顔すら見せない人相手にそう簡単に信用はできないんだけど。常識的に考えて」

『ふむ、一理ある』


 納得するんかい。


『いいだろう、振り向くくらいの許可はくれてやる』

「そりゃどうも……」


 ゆっくり座ったままの状態で振り返る。

 俺の視界に入ったのは、白髪まじりのショートカットの女性だった。

 スレンダーな体型でモデルだと言われても信用できるくらいだが、中性的な顔立ちで男女どちらともとれそうだったが、声から女性だと言うのはわかった。

 ただ、その瞳には間違いなく殺気を宿していた。そしてその手に持っている得物は、日本刀だった。

 こんなもんを人の首筋に当てていたのか。

 今のはうまくごまかせたけれど、ここから先は一つでも行動を誤れば首と胴体はお別れすることだろう。


「要望には答えてやった。素直に渡せば命の保証はしよう」


 女は低い声で威圧的に言ってくる。


「日本刀を首に当てながら言うセリフじゃないよね。せめて納めてくれない?」

「断る。すでにお前の要求を一つ望んだのだ。これ以上聞いてやる道理はない」

「あらら……貴重な一回は今ので終わりか」


 減らず口を叩きながら肩に乗せていたライガーをゆっくりと横におろす。


「それでいい。ソレは君のような一般人に手に余る……!?」


 女は突然後ろへ下がり、直後にその場に小刀が突き刺さっていた。

 ちょっと待て。これはどういうことだ。


『残念、外れてしまいましたか』


 そしてまた別の女の声が聞こえ、俺と奴さんの間に勢いよく割って入った。

 その横に、ライガーと同類であろう金属質なクワガタムシを連れて。完全な白髪という特徴的な色の髪をポニーテールにして、それを揺らして。


「貴様……何者だ」


 同じ疑問を思ったのか奴さんは彼女の正体を問うた。

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