休息の終わり
今回でノベルアップぶんに追いつきました。
「あれ、もう行っちゃったの?」
「ええ。あいつ、必要とあらば一姫さんを殺す気みたいですよ」
「怖いなー。ま、簡単に殺されてはあげないけどね」
少し時間が経ち、花奏は姿を消していた。
なににもとらわれる気はない、そう言って彼女は俺とゼロの前から黒鉄と合体して飛び去っていった。
俺はなぜ彼女が今なにをしているかは知らない。だから今花奏がなぜ敵対するような立場になっているかは深く聞くことはできない。
けれども彼女は俺のことをしっかり覚えてていてくれた。
それは、すごく嬉しいことだった。俺だけじゃなくてあいつにとってもあの時間は大切なものであったということだから。
『……我にはわからないことだらけだ』
そう呟くゼロに「俺もだよ」と返す。人生なんて、世界なんてそんなものだ。
「……どんな話をしてたかは知らないけど、満足できる時間は過ごせたみたいね」
「なんでそう思うんですか?」
「すごく穏やかな顔をしてるからね。少しやけちゃうかなー」
『一姫ちゃん、そう言いながら顔がすごい笑ってるよ』
「そりゃあ剣くんの新しい一面見れたんだもの。楽しさの方が勝るわよ」
こっぱずかしいセリフを自然に言われ、俺の顔は熱くなる。
……そういえば俺も一姫さんのこと全然知らないな。今回のことで少しだけ知らない表情を見れて、嬉しくはあったけど。
「一姫さん」
「ん? なに?」
「よかったら今度一姫さんの話も聞かせてもらえませんか? 俺は一姫さんのこと、あんまりわかってないから」
少しだけキョトン、と一姫さんはするが、すぐに微笑んだ。
「いいわよ。その代わり剣くんのこともしっかりと聞かせてね」
「もちろん。まぁそこまで面白いことのない人生だとは思いますけど」
『それでもいいんじゃないかな? 私は剣さんの話興味あるもの』
「さすが相棒、息ばっちしね」
『そういえば我も剣個人の話は聞いたことないな』
ゼロもシンザンも乗り気でいるようだ。
本当に面白味もない話になると思うけど、ここまで興味を持ってくれるのは少しだけ嬉しい。
そろそろ日も暮れてきた。
「今日はもう戻りましょうか」
「そうね。それじゃあ」
彼女はごく自然に手を握り、そのまま駆け出した。
この自然な流れが一姫さんらしいな、と思わず笑ってしまった。
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