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エヴォルダー  作者: 法相
管理局
14/41

不可解

これでほぼノベルアップ分に追いつきました。

 ――一方、少し時間は遡る。

 剣はなんとかかんとかして首魁である人物を捕まえ、合体した身を活かして全員の捕縛に成功していた。


「な、なんとかなった……」


 肩で息をしながら縄で縛った輩どもを見る。

 二桁以上の人数がいながらも一人たりとも逃さなかったのは一姫さんと八咫鐘という男の戦いのおかげだ。

 あの馬鹿げた空間を利用した戦闘スタイルはこっちにまで影響を及ぼした。

 まぁあんだけのスピードで動いたらそりゃ余波とかで一般人の奴らは逃げるどころじゃないもんな。かすっても致命傷になるぞアレ。


『敵ながラ驚異的ナ速さであったガ、それが仇となったワケだ』

「そういうことだな。て、ゼロ。なんかまた言葉が流暢になってきてない?」

「そりゃあ剣くん、何度か合体してるんだからエヴォルダーとのリンクも深くなっていくぶん意思疎通もやりやすくなるさ。ボクと鉄も最初はなかなか苦労してね……」

「へぇそうなん……だ!?」


 自然に会話をしていたが、いつの間にか横に誰かいた。


「って、アンタは……!」

「やぁ、昨日ぶりだね。剣くん」


 昨日一姫さんとやりあって俺の首に日本刀とかいうヤバいものを首筋に当ててきた女だった。

 この女……昨日に引き続きいつの間にここに入り込んだんだ。合体してないけど、カラスのエヴォルダーは思いきりこっちガン見してるし。


「そう警戒しないでもいいよ。今日は剣くんと戦うためにきたわけじゃないから」

「……本当かよ」

「本当さ。その証拠にボクは君をいつでも襲えたけど、無事でしょ?」


 確かに、そうだ。

 気配を消してこの距離まで迫られたんだ。俺を葬ることなんざいつでもできたはずなのに、それをしていないということは本当にやる気はないんだろう。少なくとも今は。


「ボクは紅花奏。こっちはボクのパートナーの鉄って言うんだ。気難しいけどいいやつだよ」


 ははは、と笑いながら彼女は言う。


「……一応俺も公僕の手伝いだから、あんたをこの間の件で捕まえなきゃなんだけど」

「君にはできないし、君もする気はないだろ。安心しなよ、ボクは君とやり合うつもりはないし、すぐにいなくなるから」

『剣』


 ゼロは警戒するように俺の名を呼ぶ。


「ああ、ボクとあったことは当然ながら隠さなくていいよ。君はボクに『見逃された』っていう形にすればいいさ」


 見逃す、というのを強調しているのが少々気にくわない。が、事実そうなので言い返せない。


「これはご親切にどうも。でもいいのかよアンタ……」

「花奏って呼んでくれよ」

「は?」

「花奏って呼んでくれなかったら質問にも今後答えないよ? もちろん呼び捨てでね」

『何ダこの女』


 俺の心の声を代弁するようにゼロがあっけに取られた声で言う。


『……まぁ、なんだ。この女が変わり者なのは見た目通りだから気にするな』


 彼女の相棒である鉄もなにか諦めているのか、達観した様子だった。


「……花奏」

「なんだい剣くん」

「お前こそ俺を見逃すメリットあんのか?」


 不確定要素を排除するというのはよくある話で、アニメや漫画みたいに見逃して脅威となる展開なるなんてこの女からしてみれば損でしかない。

 俺の質問に「そうだねぇ」と少し微笑んで、すぐに口を開いてこう答えた。


「ボクにとっては大いにあるよ。けれど内緒。女には秘密がつきものだからね」

「なんじゃそりゃ」

『絶対この女ふざけてル』


 全くもって同感だ。結局何しにこんな場所に来たんだ……


「と、そろそろお邪魔するよ。あの人の戦いももう終わりそうだからね。それじゃ、また会おうね剣くん」


 素早い身のこなしで隙も見せずにあの女、花奏は立ち去る。

 ……下手に打ち込んでたら逆に一撃で気絶させられてただろうな。それだけの実力差があった。


「おまたせ剣くん! 犯人を無事確保……って、なんかあった?」

「ありましたね」

『あった』


 拘束した犯人を背負い、降りてきた一姫さんに俺は事の経緯を話す。

 彼女も最初は驚いた様子だったが、すぐにいつもの調子に戻り「大丈夫よ」と声をかけてくれた。


「なにはともあれ本筋の方は解決したんだから。さすがに玉砕覚悟で突っ込んで一味を逃す方がリスクが大きいもの。理由はわからないけど見逃してくれたことに感謝しましょう。あとは管理局に……と、噂をしたらかしら」


 外からサイレンの音が鳴る。灰沢さんたちが来てくれたのだろう。

 色々と思うところはあるが、とりあえずは事件は解決したということで、今は納得しよう。

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