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「感情」から書く脚本術ノート⑥CHAPTER5「物語」

コンセプト、キャラクターが完成したら、残りはキャラクターを阻む障害を考えなくてはいけない。


●物語とプロット

 両者は混同されやすいが、脚本つくりの上では別物である。物語はキャラクターがやりたいと望むことにであり、プロットは作家がキャラクターにやらせたいとことである。

 『市民ケーン』の場合、人を愛せないまま愛を求める男の生涯の物語であるが、「薔薇の蕾」の意味を求める記者がその意味を探る中でケーンの物語が明らかになっていくというプロットである。


●読者が理屈抜きで感じたい感情を体験させてやる。どんな感情を読者が求めているかを以下に記す。


〇興味/魅力/洞察/畏敬

 物語の中では、読者は結果に原因を求めたがる。辻褄が合わない偶然の出来事によって物語が語られると不満を抱いてしまう。それらを回避し、興味/魅力/洞察/畏敬を読者が感じられるために必要なものを羅列する。

・キャラクター(CHAPTER4を参照)

・対立(問題、障壁との対立)

 主人公の意志が何らかの妨害にあうことを対立と呼ぶ。意志はできる限り強固なものであり、妨害は出来る限り厳しいものであるのが良い。なぜその意志が強固なのか、なぜ厳しく妨害されるのかは物語中で読者が納得いくように演出すること。

・変化

 作中で読者の心理は山あり谷ありにする。物語の始まりと終わりで主人公に変化があるのはもちろんのこと、そういった大きな変化に至る小さな変化を物語中にたくさん入れること。分かりやすい作品中の変化で言えば「発見(知識の変化)」「決断(行動の変化)」がある。

・独創性と鮮度

・サブテクスト(CHAPTER9を参照)

・洞察的な情報の提示

 作中で読者が予想・推理をしたくなるような情報が提示されると、読者は強く興味をひく。

・バックストーリー

・好奇心でそそる、驚かせる

 作中ではできる限り至る所に問いと答えを用意しておくとと良い。言い換えれば、物語とはすべてが何らかの問いとその答えの連続で構成すべきである。

 オープニングでは強い問いと小さな答えを用意する。強い問いは読者に作品への期待感を抱かせ、小さな答えは作者の手腕への安心感と満足感を与える。

 物語はいくつかの「幕」で構成され、その下にいくつかの「シークエンス」が、そのまた下にいくつかの「場面」が、そしてさらにその下にいくつかの「やり取り(ビート)」が入れ子式になっている。それらのすべてで問いを用意し、作中のどこかで答えを提示してあげること。

具体例『北北西に進路をとれ』

幕ごとの問い

第一幕 主人公は自分がキャプテンという人物でないと証明できるか

第二幕 自身の無実を証明することができるか

第三幕 ヒロインのイヴを救うことができるか

シークエンスごとの問い(第二幕)

1.主人公は警察の手を逃れてシカゴへ辿り着けるか

2.イヴに裏切られた主人公は殺されてしまうのか

3.イヴの正体を掴むことができるか

場面ごとの問い(列車の場面)

1.主人公は列車に乗るか

2.逃げ切ることができるか

3.イヴは主人公を警察に突き出してしまうのか

4.主人公とイヴはベッドをともにするか

5.主人公は捕まってしまうのか

6.イヴは主人公のために嘘を吐いてくれるのか

7.イヴのメモには何が書かれているのか

8.翌朝主人公はどうなってしまうのか

やり取りごとの問いはCHAPTER7を参照

・情報を出さないことで謎を仕掛ける

 読者が非常に気になる情報については、あえて明かさずに謎のまま引っ張ることで興味を持続させられる

・主人公が非合法な行為を行ったり、他者に知られてはいけない秘密を知る


〇期待/希望/心配/恐れ

好奇心、サスペンス、緊張感を読者に抱かせ、それに満足のいく結果を与えることが物語の役割である。以下にそのために必要な項目を羅列する。

・キャラクターを作り込む

・キャラクターごとの目標を設定する

 登場するキャラクターそれぞれの目標を設定すると生き生きとし、そのための行動であれば読者は納得して展開を受け入れる。

・問題と解決、質問と答えを重複させる

 物語中はエンディングまで常に何らかの問いが残ったままにしておくこと。最後の最後にすべてを回収して終わるように作らなくてはいけない。

・未来について話す

 作中でキャラクターが未来のことについて話せば、読者は本当にそうなるのだろうかと期待し、予測する。

・計画と夢想

 キャラクターの計画は読者によって成功しそう/失敗しそうというどちらかの感情を抱かせる。なお、重大な計画はあえて明かさないことにより読者の注意をひきつけるという手法もある。

・約束と時間制限

 約束をしたり、時間制限が生まれたりすれば、物語に緊迫感が出て、そのリミットの地点まで読者の気を引くことができる。

・心配と予感

・警告

・マクガフィン

 キャラクターに動機を与え、物語を進展させること

例)『北北西に進路を取れ』では、「ジョージ・キャプテン」という人物の正体

  『市民ケーン』では、「薔薇の蕾」という言葉の意味

・ムード(CHAPTER8を参照)

・劇的アイロニー

 キャラクターが知らない事実をあえて観客に知らせる、つまり観客をキャラクターに対して優位におくことで、キャラクターが正しい行動をとれるかどうかという意味で観客を惹きつける。キャラクターが誤解する、騙されたというのも観客を優位にする劇的アイロニーの一つ。


〇サスペンス/緊張感/不安/心配/疑念

 キャラクターを気にかける気持ち、危機的状況の不可避性、結果の確実性がサスペンスを発生させる。

 サスペンスとは、キャラクターの目標が達成するかどうかのドキドキ感。

 好奇心とは、キャラクターが何を望んでいるのかを知りたいという感情。

 驚きとは、結果に対する読者の反応。

 このように脚本上では定義する。

 これらの感情を読者に抱かせるものを以下に羅列する。

・苛立ちとご褒美の釣り合いを取る

 読者に伏せた情報は長く伏せれば伏せるほど、待った価値のある面白く衝撃的な結果を用意してあげること。

・切迫させる

・邪魔する、阻む、拗らせる(対立を強くする)

・二つの出来事を交互に見せる

・結果を遅らせ、緊迫感を出す

 いつでも自分の思った通りの結果を起こせる立場のキャラがあえてそれを起こさないことにより、読者は緊迫感を抱く。

・主人公を見知らぬ場所に置く

・物に焦点を合わせる

・キャラクターをジレンマに追い込む(難しいものであればあるほど良い)

・内面に抱えた恐怖に向き合わせる

・危機を増やす

・隠されたものを露呈する

・さらに予想しにくくする、多くの読者が予想したであろうことを否定する

・読者に優位性を与える

・読者に失敗の代償を思い出させる

・失敗の代償を大きくする

・不明確な動機をキャラクターに持たせる(動機が気になる)

・おかしな2人という状況を作り出す(バディ効果)

・危険な仕事をさせる

・時間的制約を設ける

・空間的サスペンス

・キャラクターが予期せぬ反応を見せる

・罠、または試練を与える

・緊張感から解放させる


〇驚き/狼狽/笑い

 読者は結果が気になるものだが、脚本家が見せなくてはいけないのはどのような結果になるかよりも、「どうやって」その結果になるのかである。

 これらを抱かせる方法を以下に羅列する。

・予期せぬ障害と混乱

 障害…目標達成を邪魔するもの、取り除けば元の手法で目標へ向かえる

 混乱…目標達成のための手段を変えさせるもの、基本的に代替策を強い、元の手法へは戻らない

・発見と露呈

 発見…キャラクターと読者の両方が同時に真実を知る

 露呈…読者優位の情報からキャラクターが真実を知る

 うまく使えば、物語の展開を完全に転倒させることができる 例)『シックス・センス』のラストシーン

・逆転

・秘密

・読者劣位 情報の開示の際に読者を驚かせることができる

・衝撃

・引っ掛けと誘導

・お膳立てとタネ明かし

 お膳立ては平凡なものでも良いが、タネ明かしは独創性を発揮すること

・奥の手

 作中で見せた主人公のちょっとした能力や道具が問題の解決に役立つと読者は興奮する

・偶然

 偶然は作中では避けたいが、主人公が不利になる障害や混乱の発生などには使っても問題ない。主人公の問題が偶然に解決するのを「デウス・エクス・マキナ」と呼ばれるが、下手な脚本に見られる典型的なもの。主人公の問題は自身の能力・努力や仲間の助けで解決させろ。

・緊張感と安堵の組み合わせ


〇スリル/喜び/笑い/悲しみ/勝利

・スペクタクルあるものにする

・セックスとバイオレンス(人間の本能的もの)

・ユーモア

・脱出

・別離、再会

・勝利と敗北、獲得と喪失

・因果応報

 特に、悪いことをしたのに法律やルールでは罰せられない適役が何らかのペナルティを受けると、読者はスカッとする。物語の最後に配置する。


〇共感/情/賞賛/軽蔑

 共感に関してはキャラクターに感情移入をさせなくてはいけないが、キャラクターの感情の変化は十分な手続きを経て大げさでないものにしなくてはいけない。メロドラマになってしまうと、大体の場合観客は「冷める」

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