「感情」から書く脚本術ノート④CHAPTER3「テーマ」
物語は人生の隠喩であり、テーマがない脚本は軽い。ただし、テーマが出しゃばりすぎて説教になってしまってはいけない。テーマは物語にうまく溶け込ませる必要がある。コーヒーのシロップのように。
テーマの技巧:テーマを仄めかせる
普遍的テーマ3種類
①別離/再開
②人間性の危機
③人間関係
書くべきテーマをどうやって見つけるか
一番良いのは自分の心の中にあるもの、それで見つからなければ自身が何に憤りを感じるかを考えれば心の中が見えてくる、それでもだめなら大事なものを思い浮かべる。過去の賢者の言葉を見てみるのも良い。
テーマを語らず見せるための技法
①伝えるのではなく、問いかける
②感情で包む
③主人公の心の変化を通じて伝える
④肯定的なことを主人公に担わせる一方で、その逆の否定的なことは適役に担わせる
⑤サブプロットを利用する
⑥複数の登場人物にテーマを一分ずつ背負わせる
⑦伝えたい内容への強い反論を作中に用意し、戦わせる
⑧テーマを会話に盛り込む、格好良い台詞がテーマの隠喩になっている
⑨ライトモティーフを用いる
テーマを上手に熱かった実例
『羊たちの沈黙』
泣き叫ぶ羊を沈黙させることは過去のトラウマを克服することを意味しているが、他にも二つのテーマが隠れている。一つは人間の変身。バッファロー・ビルは女性の皮を集めることで女性に変わろうとしており、男社会のFBIで活躍しようとするクラリスは過去のコンプレックスの克服を目指している。レクター博士の脱獄も見ようによっては変身の一種である。髑髏蝶という小道具も変身の暗示。また、男性から女性への何気ない重圧もテーマ。障害物レースのクラリスはエレベータの中で大きな男たちに囲まれて見る者に重圧を感じさせるし、出てくる男はことごとくクラリスに直接的ないし間接的な重圧をかけているようになっている。