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斉藤洋『ルドルフとイッパイアッテナ』読了

 児童書なんですけど、エンターテイメントの要素が薄いですけどふんだんに盛り込まれていますね。エンターテイメント的な分析を中心にご紹介いたします。


 ストーリーは主人公のルドルフから読者への呼びで始まります。これは小説にしては珍しい形式ですが、映画なんかでは非常によく見る形ですね。そして設定が魅力的です。人の言葉を解し、文字まで書ける猫。猫という多くの人が大好きな存在を主人公にしながらストーリーを展開することに成功していますね。

 序章ではルドルフがトラックに乗って自分の町から東京へと期せずして移動してしまいます。そしてトラックを降りたところで大きな体の先輩猫であるイッパイアッテナに出会います。ルドルフはイッパイアッテナから野良猫としての生き方を学んでいきます。主人公ルドルフの目的はメインとして「自分の町へ戻ること」そしてサブとして「キョウヨウを身に着けること」と設定されます。まあここはメインとサブが逆だという意見もあるかと思いますが、そのあたりは目的と動機の違いというやつですので、まだ読んだことのない方のためにもこのように紹介しておきます。

 そして物語が中盤に入ると、ルドルフはイッパイアッテナとともに自分の家へ帰る方法を模索しつつも、イッパイアッテナから文字の読み書きを教わりはじめます。そして少しずつルドルフが文字の読み書きを身に着けていたところ、TVで岐阜市の街並みが映し出され、ルドルフは自分がかつていた町が岐阜だったということを知ります。そして商店街のポスターから一か月後に岐阜へのバス旅行が実施されることを読み取り、そのバスに忍び込んで岐阜へと戻ろうという作戦を画策するわけです。

 終盤は、主人公のルドルフの決意と対決のシーンです。もうすぐ岐阜へのバス旅行が始まるという時に、イッパイアッテナは別れの選別としてルドルフに肉を食わせてやりたいと言って宿敵の犬であるデビルの下へ行き肉をくれないかと頼み込みますが、結果は失敗に終わりイッパイアッテナは手痛い傷を負ってしまいます。

 ここからがここまでの下準備を生かしたルドルフの活躍です。まずは自分がイッパイアッテナから教わった野良猫なりの人間とのかかわり方を活用し、知り合いの学校の先生を怪我したイッパイアッテナの下へと連れてきます。先生はイッパイアッテナを獣医の下へと連れていってくれて、見事に治療してもらうことに成功します。そのおかげでイッパイアッテナは一命を取り留め、とうとう岐阜へのバス旅行の出立の日を迎えます。

 しかし、これで終わりではまだ一つエンターテイメントに足りないものがありますよね。そう、「勧善懲悪」です。汚い手を使ってイッパイアッテナに傷を負わせたデビルに対して罰を受けさせなくてはいけません。そこでルドルフは決意します。自分が岐阜へ戻るチャンスを逃してでも、敵討ちを自分の手でしなくてはいけない、と。そしてルドルフは勇気と知恵を振り絞り、自分の得意技を生かして犬のデビルをとっちめてやります。

 岐阜行きのバスへ乗るチャンスは逃してしまいますが、その気さえあれば「いつだって、歩いてだって、帰れる」と自分の選択を誇りに思ったところで終幕となります。

 エンターテイメントとして、非常によくまとまっている作品だと感じました。ルドルフはイッパイアッテナと出会い様々な経験をすることでどんどん成長していき、終盤には「努力して身に着けた能力の発揮」によって活躍して問題を解決するという王道の展開がきちんと組み込まれています。「葛藤」に欠けるという指摘はあるでしょうが、児童文学として子ども(子猫)が成長していくというストーリーとして十分面白みのあるものになっていますね。

 個人的にはいつまでもルドルフが家に帰ってこなくなってしまった飼い主の女の子の胸中を思うと少し胸の奥に小さなトゲが残っているような気もしますが、続編もあることですし、「キョウヨウ」を身に着けたルドルフですから、もう普通の飼い猫に戻らせてしまうのももったいないですから、「成長」の描き方としてはこの方が良いのかもしれませんね。続編はまだ読んでいませんが、飼い猫には戻らないにしても、気持ちの区切りをきちんとつけるために飼い主に別れを告げに行く展開が入っていてくれていたらなあ、と願います。


 随所に「成長」というストーリーの根幹をなす名言も飛び出しており、絵本を卒業して小説に入っていこうとする小学生あたりにぜひ読んでもらいたい作品ですね。先ほどご紹介したとおり、エンターテイメントとしての要旨もきっちり詰まっているので、そのあたりを勉強したい方もぜひどうぞ。

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