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「感情」から書く脚本術ノート⑩CHAPTER9「台詞」

映画の脚本術についての内容なので、小説では当てはまらない部分があります。また、英語の著書のノート(要点まとめ)なので、日本語では当て当てはまらない部分があります。注意書きを付している場所もありますが、不十分なのを承知の上でお読みください。

映画においては、台詞は校正よりも優先度はずっと低い。台詞は聴覚だけの情報であり、五感を刺激する映画の中では効果としては高くないためだ。なので、台詞も最小限にすることが望ましい。最小限の台詞が最高であれば、その台詞はお客さんの心に強く残るものになる。


基本:台詞について知っておくべきこと

(1)最高の台詞の特徴

  最高の台詞によくある特徴を以下に並べる。

 ①現実感を出す

  台詞によってキャラクターが現実にいても不思議でないと読者に思わせれば成功。

  ただし、現実の会話のように重複、言葉の誤りがあっていいわけではない。

 ②キャラクターを定義し、立てる

  人格、社会観、社会的背景は台詞以外の行動などで見せておくのが望ましいが、後々の布石としたりなど使う理由があるのならば台詞に盛り込むのも手だ。

 ③感情を間接的に伝え、キャラクターを動かす

 ④キャラクターの感情と対立を映す

 ⑤キャラクターの動機を暴く、または隠す

 ⑥話者と他のキャラクターの関係性を映す

  話し方によって、話し相手と話し手の人間関係が説明せずとも伝わる。

 ⑦連鎖反応を起こす

  他者の台詞を引き出す台詞になっている。

 ⑧今後の展開を予感させる

 ⑨ジャンルから外れていない

 ⑩場面の内容から外れていない

  バックストーリーに沿わない台詞になっていないか確認する。

 ⑪能動的で目的に向かっていく

  目的がない、役に立たない(なくても物語が成立する)、説明的、といった台詞はNG

 ⑫感情的なインパクトを持っている

  読者の感情を引き起こせ!

 

 全体として言えるが、台詞は文字通りの情報を伝えるだけのものは良い台詞とは言えない。サブテクストの一種として使うのが望ましい。


(2)やってはいけない台詞の失敗

 ①硬い台詞

 ②不自然な台詞

 ③説明的な台詞

  「君も知っていると思うがボブ、俺は君の父親だ」は分かりやすいNGワード。硬く、不自然で、説明的。

 ④鼻につく台詞

  本音は台詞で語らせるな。

 ⑤驚きがない台詞

  読者が次の台詞を予想できるようでは脚本家としての怠慢。

 ⑥喋りすぎるキャラクター

  台詞はできるだけ最小限に、ぜい肉のように削れ

 ⑦どの人も同じに聞こえる

  台詞を読んだだけで誰が言ったのか伝わるように努力しよう。キャラクターごとに訛りを入れたり語尾を特徴的にしたりする工夫も多いが、それで誤魔化せた気にならないこと。言葉のチョイス、リズム、抑揚までキャラクターごとに違いを意識しなくてはいけない。

  ⑧名前を繰り返す

   (日本語ではあまりないミス)

  ⑨つなぎの言葉

   間投詞は無駄ではないだろうか、と見直すと多くは消える

  ⑩雑談

   「今日は天気が良いね」、「元気かい?」などの雑談は後の布石になっていないのであればまず不要である。

  ⑪不必要な念押し

   念押しは逆の結果になるフラグとしての機能のほうが強い

  ⑫訛りと方言

   使って悪いわけではないが、耳慣れないものだと「どういうイントネーション?」と読者の手が止まる原因になりやすいので、むやみやたらに使わないこと。

  ⑬外国語

   (脚本の場合、ト書きで〇〇語であると示せば良い)


技巧:鮮やかな台詞を書くために

(1)感情的インパクトを与える技

 感情的インパクトは名台詞の必要条件である。

 ①つっこみ返し

  つっこみに対する鋭く気の利いた一言での返しは印象に残る。

 ②スイッチを入れる台詞

  その台詞によって誰かの感情を変えることができれば良い台詞。

 ③皮肉

  ただし、皮肉を言うようなキャラクターは意外と限られる。そうでないキャラクターに言わせてしまうと、読者はとんでもない違和感を抱く。

 ④ユーモアの連続

  ユーモアのある言葉にさらにユーモアのある返しをするとウケる。

 ⑤対比のユーモア

  相手の言ったことをユーモアを交えて反論するとウケる。

 ⑥ダブル・ミーニングになっている

 ⑦ウィットに富んでいる

  脚本家のセンスが要求される。

 ⑧誰か、または何かに注意を促す

  読者もそれが気になるようになる。

 ⑨誇張

 ⑩控えめに言う

  ⑨と⑩は皮肉で逆の意味が真意であることが多い。

 ⑪話をそらす

  興味がない、あるいは相手の意見に反対であることを示す、など使い道が多い。

 ⑫不適切な発言、反応

  空気を読めない発言はギャグとして有効になりやすい。

  「君の彼女じゃないのかい?」

  「もう彼女なんかじゃないよ」

  「そうかい。でも良かったよ。口には出さなかったけど、あいつは尻軽女だと思ってたよ」

  「……今は僕の妻なんだ」

 ⑬口を挟む

  緊張感、興奮をもたらす。ホラーなどで常用される。

 ⑭羅列

  協調、フラストレーションの表れ

 ⑮暗喩と隠喩

 ⑯同じ構造の文で構成する

  リズムが生まれ、訴える力が増す

 ⑰エスカレートする台詞

 ⑱不意打ち

 ⑲お膳立てとタネ明かし

 ⑳引き金になる言葉、またはフレーズ

 ㉑意外な反応

 ㉒本能に訴えかける台詞

 ㉓反復

 ㉔使い古された言葉で遊ぶ

  「賽は投げられたってわけだな」

  「サイを投げるなんてずいぶんと力持ちだな」

 ㉕はい、いいえ以外の返事


(2)個性的な台詞を生む技

  台詞の中に話者の個性や態度を滲ませよう。

  リズム、品格、表現、言葉選びなどがそのキャラクターに合っていることが大事。

  ①対称的な台詞と文脈

   本来なら予想されるはずの台詞とあえて逆の台詞を言わせると印象に残る

  ②対象的な台詞と感情のテンポ

   話し手と相手は同じようなテンポよりも対称的な方が望ましい。

  ③お気に入りの口癖

  ④断片的な、あるいは端折った短い台詞

   きちんと意図を持ったうえでなら、語句を欠落させるのが台詞の効果を増すこともある

  ⑤専門用語、仲間内の言葉、スラング

  ⑥譲れないもの

   キャラクターにとって譲れないものを表す会話は魅力的

  ⑦我が道をいく

   相手に有無を言わさない台詞は多くの情報を読者に伝える

  ⑧態度、特徴

  ⑨好み

  ⑩リズム


(3)さり気なく説明の技

 説明は読者を白けさせやすい部分。説明はさり気なく、面白くを意識せよ。

 ①一言ずつ小分けにして出す

  複数人が状況を確認するように代わる代わる話す。

 ②前兆

  匂わせる。

 ③感情をまぶす

  苛立っているキャラクターだと早口でも自然に感じられる。

 ④情報を示唆する

  読者は示唆を受け取り推理する。推理することで次が気になり、能動的に物語に加わる。

 ⑤読者が欲しがるときに与える

  早すぎる情報の開示は説明になる。知りたくて待っていた情報を聞くときは満足する。

 ⑥対立で隠す

 ⑦劇的アイロニーを使う

  劇的アイロニーについてはCHAPTER5を参照

 ⑧能動的な説明

 ⑨キャラクターに勝ち取らせる

  主人公は知りたいのに相手に教える気がないという状況から引き出した情報は読者も喜んで聞く

 ⑩独自の方法があれば


(4)サブテクストの技

 口に出していないのにキャラクターの頭の中を照らし出すのがサブテクスト。サブテクストに気づいた読者は自分のことを鋭いと感じて能動的に物語に参加したくなる。

 ①リアクションというアクション

  愛している→見つめ返す、というようなもの。

 ②話題を変えて逃げる

 ③台詞とアクションの対比

  口で言っていることと行動が違うのは、行動に隠された真意が強い証。

 ④口に出す難しい気持ち

  心理戦などによって引き出された気持ちはは心を奪う。

 ⑤隠された意味

  後から実はダブルミーニングだったと判明する台詞は評価が高い。

 ⑥感情的覆面

  隠された感情が滲み出てしまう

 ⑦言い切らず仄めかす

 ⑧暗喩、または直喩の台詞

 ⑨感情を体現する

 ⑩質問に質問で答える

  隠し事をしている、手の内を見せたくない、などが多い。

 ⑪テンポで気持ちを表す

 ⑫キャラクターの特徴や態度を表す

 ⑬場面の文脈に隠されたサブテクスト

  文脈次第では「大嫌い」も愛の告白になると心得よ。

 ⑭沈黙

  時には黙っている方が雄弁になることもある。


鼻につく台詞が許される時

 ①感情的に安全な時

  親友、ペットなどには本音を話しても自然だし、独り言なら本音が出ても自然。弱さという魅力を見せつつストレートに感情を表せる。

 ②クライマックスで勝ち取ったとき

  作中を通してため込んだ感情が爆発する時は本音が許される。

 ③単刀直入に言う必要がある時


最後に、台詞を良くする三原則

 何度でも書き直せ、台詞は口に出して読んでみろ、達人から学べ

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