「感情」から書く脚本術ノート⑧CHAPTER7「場面」
基本
場面には次の三つの場面がある
(1)説明の場面
劇的な場面に繋がる辻褄を正しく読者に理解させるために情報を提示。この場面に対立は不要。
(2)スペクタクルの場面
(3)劇的な場面
以下では主に劇的な場面について説明する。
それぞれの場面は、小さな物語である
場面の役割は以下の三つ
(1)対立を介して物語を進める
(2)キャラクターの知られざる側面を明かす
(3)読者の感情を揺さぶる
劇的場面に必要な要素(何を考えるべきか)
(1)目的(その場面は本当に必要か)
素人脚本家は物語の展開上不必要なのに場面を入れてしまう。なぜその場面を入れたか聞くと、「キャラクターを深めるため」と答える。しかし、そのために平坦で物語の足しにならない場面を加えてはならない。きちんと対立を介し、物語を進行する中でキャラクターを深めるようにしなくてはいけないのだ。
(2)場所
ムード、雰囲気を左右する
(3)時間
(4)天候
行き詰った時は天候を変えるとうまくいくbyエリック・ロス
場面とキャラクター
読者は場面ごとに自分の視点を誰を通すかを決める。
読者が自分の視点としたがるキャラクターは、明確な目的をもって能動的なキャラクター。
場面同士には因果関係を持たせ、キャラクターが直前までどのような心理状態で何を欲していたかをきちんと考え、それに沿った行動をとらせる。良くかけた場面は、キャラクターが欲しているのが物よりも関係性であることが多い。例えば、就職活動の面接の場面だったら、「内定が欲しい」ではなく、「この人に認められたい」あるいは「この人の下で働きたい」のほうが切迫感が出る。
キャラクター、特に主人公は大きな目的を持ち、それに向かって小さな目的を達成していく。言い換えれば、場面場面はキャラクターが大きな目標を達成するための計画(意図的かは問わない)の一つだとも言える。
対立を用意する。対立がない場面なら、次の対立を予感させる緊迫感や期待感を抱かせる。
場面ごとに代償を用意して読者に見せておくこと(失敗したらどうなるか)
ビート(=やり取り)を華麗に反応させ続けよ
説明の場面で取られる手法は以下のとおり
①台詞、ト書き
②ナレーション
③カメラ目線の独白
④テレビやラジオのニュース
⑤文字情報
⑥紹介
⑦モンタージュ
⑧イメージや標識
場面の陰陽を意識せよ。陽は上手くいっている状態、陰は上手くいっていない状態。場面の最初と最後では陰と陽に変化があること。変化がないのは意味のない場面。
技巧:最高の場面を書くために意識すべきこと
・場面の始まりと終わり
場面の始まり…素人は場面の始まりで読者にすべての情報を与えたがるが、良くない。'in media res'、つまり何かの途中からいきなり場面を始めるのがプロの技。具体的には、就職面接の場面で素人は「面接会場へ向かう→会場へ入る→順番を待つ→呼ばれる→質疑応答に入る」という手順を踏む。これは読者に推理をさせる要素がないし、間延びする。プロは「難しい質問を面接官から聞かれる→就活生が答えに悩む」という場面からいきなり入り、読者に「ああ、これは面接かな?」「これに答えられないということはこの就活生はこんな人かな?」などと推理をさせる。
場面の終わり…場面の終わらせ方に悩む脚本家は多い。基本は「理屈を超えた感情のツボ」をおさえたら次の場面にいく、ということを意識すること。読者が「なるほどねえ」とか「ああ、〇〇だった」と思わせたら場面を転換する。
・感情のパレット
脚本家は感情を操作するのが仕事。その場面でキャラクターと読者にどのような感情を抱かせるのか意識して進める。感情移入をさせてキャラクターと読者の感情を同じにして見たり、読者優位/劣位の状況を作って両者を乖離させても良いが、意識するかどうかで出来が大きく変わる。重要なのは、「語るな、見せろ」である。「俺は怒っているんだ」とキャラクターに言わせてはいけない。口調が荒々しくなる、物をぞんざいに扱う、などで読者に読み取らせる。
・読者の感情を意識する
当たり前だが「ここを読んでいる時読者はこう思うはずだ」と意識すること。
・飛び跳ねる感情
読者には同じ感情ばかり味あわせてはいけない。飽きられる。ハラハラドキドキの次はしんみり、その次は正義に燃える、など感情を振り回してこそ面白い脚本になる。
・予期せぬ動きを見せる
浮気された女が「許せない」と怒ると読者の予想通りで平凡な場面となる。「その女の人ってどういう人なんだろう?私もそうならないと」と好奇心を抱けば、女が男に耽溺しているのだと分からせた上で読者はその女に興味を抱きやすくなる。
・キャラクターへ感情移入させる→CHAPTER4へ
・能動的な台詞を使う
受動的でなされるがままのキャラクターよりも能動的で場面を自分で作っていくキャラクターのほうが強い。
対立
対立には三種類がある
(1)個人VS自分自身
(2)個人VS他者
(3)個人VS自然(神、運命、テクノロジー、怪物、などを含む)
以下では上手に対立を演出する技を紹介する。
・アクターズ・スタジオ方式
キャラクターに相反する正義を抱かせる。対立は必然。
・衝突
・尋問
キャラクター同士の誤解や読者優位/劣位を生み出しやすい
・障害物、混乱を配置する
・内なる葛藤を見せる
・場面内の対比
対比はあらゆるものに仕えて面白くなる 凸凹コンビ、陸に上がったカッパ状態、など
・発見と露呈
一つの場面で一つは読者とキャラクターに新しい発見をさせることが必要
・初めての体験と最後の体験
普通に出勤するよりも、五十年勤めた最後の出勤日のほうが興味を抱かせる
・過去の回想
素人の脚本をつまらなくする原因としてありがち。使う場合は以下の三点を満たすこと。
①それを読者に知らせないと物語が進まない場合のみ使う
②「このキャラクターの過去が知りたい」と読者に思わせてから使うこと
③回想の前後で本筋に何らかの変化があること
・登場と退場
・お膳立てと感情的な種明かし
お膳立ては平凡で良いが、種明かしは読者の感情を揺り動かすものにするよう気を付ける
・同時進行の出来事を並行して見せる
・小道具を使う
・キャラクターの内面を明かす
素人脚本家は感情移入しやすいようにと初登場時にすべての情報を開示してしまいやすい。読者に「このキャラのここはどうなっているの」と思わせて謎のままにしておくことで続きを気にならせるという技を有効に使おう。
・お約束ギャグ
作中で何度も同じギャグを使いつつ、クライマックスで意表をつくと有効
・叶えられた欲求、叶えられない苛々
成功ばかり、失敗ばかりの話にはしない。必ず両者をバランスよく配置すること。
・秘密をつくる
・衝撃的瞬間をつくる
物語の重要な要素にすることが大切。ただ読者を驚かせるだけの衝撃的な場面は無意味。
・お定まりの場面をひっくり返す
『羊たちの沈黙』では囚人のレクター博士が連続殺人鬼バッファロー・ビルの情報を知っていて、FBIがそれを知りたがっているという囚人>FBIという逆転現象が面白くさせている。
・強烈なイメージ、特殊視界効果
・場面の味付け
・サブテクスト(→CHAPTER9へ)
・捻りと逆転
最後で読者を「あっ」と言わせればその作品は一気に良い作品になる。
実例:『羊たちの沈黙』4度目のレクター博士とクラリスの対峙
長くなるし、重大なネタバレになるのでここでは割愛




