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我孫子武丸『殺戮にいたる病』読了

 実は私は叙述トリックというものに大きな何かを感じたことがない。感動も、驚愕も、である。

 原因の一つとしては中学生の頃にアガサクリスティを読む前にはすでにその存在を知ってしまっていたので、ミステリーを読む際には「これは叙述トリックじゃないか」というのを可能性の一つとして考慮しながら読んでしまうから、というのがある。

 それはミステリーをある程度読んだものなら誰もがそうであると言われるかもしれないが、何となく「感じるところが少ない」というのが正直な感想なのだ。

 『殺戮にいたる病』が叙述トリックの名作だということは知っていたが、今回私はそのことをあまり意識せずに読むことで叙述トリックを味わってみようという期待があった。私はミステリーに関しては初級者なのもあり、無事にそのトリックの確信は最後のページまでとっておくことができた。私の予測は文中で三人称が「樋口」や「稔」から「彼」にちょくちょく変わるので、実は名前の出ていない読者の予期せぬ人物が「彼」という名で部分部分に登場しているのではないかというてんで的外れなものだった。

 だから最後のページでそのトリックが明かされた時には、「そういうことか」と思った。

 しかし、それが私に何かを感じさせたかというと、「そういうことか」以上のものはなかったというのが残念ながら私の本音である。少なくとも、文庫の解説にあった「呆然」「驚愕」というような感情からは程遠かった。

 それがなぜかというのを偉そうに言わせてもらえば、「トリックのために作品が存在しているから」ではないかと思う。

 「それがミステリーという分野だから」と言われれば全く持ってその通りなのだが、やはり個人的思いとして「作品を面白くする手段としてトリックが存在してほしい」というのがあるのが本音なのである。

 タネ明かしがされることによって、それまで読者に与え続けていたメッセージがより強烈で鮮明になる、という作品を私が求めている、と言っても良いだろうか。

 まあ、この感想を抱いてしまう時点で本格ミステリ小説に自分が向いていないという証左ではあるだろうか…

 畢竟、トリックとしては見事に私の予想を裏切ってくれただけに、それに不感な自分に残念、といったところであろうか。この感想に不快に思う方いたら申し訳ない。

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