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5・毒親は独身でいるべきなのです

「病人のいる屋敷で四六時中ピアノを弾き続ける……

 ベアトリス、お前は十歳になってまだ物事の分別がつかないのか?」


 ベアトリスちゃんはじゅうにさいだばーか。

 私は目の前の相手に心の中で盛大に毒づく。

 ベアトリスちゃんの年齢を大幅に間違えたこの男。

 こいつはマクシミリアン。イケFの攻略対象の一人だ。

 そしてベアトリスちゃんの父親でもある。

 父親なのに娘の年齢すら覚えていない残念さからお分かりかと思うが、こいつはベアトリスちゃんに全く興味がない。

 自分の奥さんのことしか考えていないのだ。ベアトリスちゃんが愛されない理由は、母親に似ていないからというのもある。

 ただこのマクシミリアン、私はマー坊と呼んでいるが……腹が立つことにこいつはかなりの美形だ。

 攻略対象のイケメンたちの中でもトップスリーに入るレベルである。

 なので父親似であるベアトリスちゃんも超絶美少女なのだがこのマー坊は一切可愛がろうとしない。というか関心がないのだ。

 そんな駄目親が久しぶりにベアトリスちゃんを呼び出したと思ったら開口一番これである。

 流石、亡き妻にそっくりだからって親子ほど離れてる娘を養女にした挙句ルート次第とはいえ卒業前に孕ませる奴は違う。

 しかもこいつは自分のルートでベアトリスちゃんを容赦なく殺害するのだ。

 確かに結婚式に刃物を持って乱入したベアトリスちゃんは危険だったよ?

 でも彼女がそこまで追い詰められた理由が今の私ならわかる。

 ベアトリスちゃんはずっと父親から愛されたかったのだ。もちろん恋愛ではなく家族愛で。

 なのにそれは叶わなくて、孤独を抱えて成長していく中である日突然血のつながっていない妹が出来る。

 そして自分を一切愛さない父親はその娘に対してはベタベタに甘やかして更に結婚までしてしまうのだ。

 そりゃ、狂うわ。

 ゲーム内のベアトリスちゃん、いや悪役令嬢ベアトリスの最期の台詞を思い出す。


『私を、私を抱き締めて、お父様……一度だけで、いいから……愛し、て』


 そう実の娘が死の淵で願ったことすらこいつは知らないのだ。

 怪我なんて全くしていないヒロインのことだけを気遣って死にゆく娘に冷たく背を向け続けた。

 このゲームがネットで話題になる時は大抵『胸糞ゲー』の話題になった時だ。

 そしてゲームのスクショが貼られる時は絶対このシーンである。

 本当、ゲーム内でも今現在でもいい加減にしとけよマー坊。


「ごめんなさい、お父様……」


 久々に父親から呼ばれたとはしゃいで部屋に向かったベアトリスちゃんは、今は泣きそうな顔で謝っている。

 いや謝ることなんてないよ?だってベアトリスちゃんはお母さんからお願いされたから頑張ってピアノを弾き続けたんだよ。

 つーか父親の癖にそんなことも知らないのかこいつは。


「全く……叱られなければ反省もしないのか。娘だからといって私の時間を煩わせるな」

「、っ、ごめんな……」

「謝るぐらいならやるな。お前の役目は私達両親に迷惑をかけないように生きることだ」

「……はい」


 あ、もう無理ですね。これはもう駄目ですね、処刑っすわ。

 前世の自分が人間だったこととか、アラサー女だったこととか、今は全部忘れますね。

 大好きなご主人様が悪者にいじめられて激怒している子猫が取る手段は一つ。


 しょわ~~。


 マクシミリアンのよく磨かれた革靴の上にちょこんと座った私は盛大に下半身からぶちかました。

 この馬鹿親、猫砂があったら頭まで埋めてやりたいところだわ。


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