13・両想いで何よりなのです
子狼形態に戻ったレックスを連れてオーウェンは大はしゃぎで自宅へ戻っていった。
「変身するとかやべぇ!」「俺の犬マジかっけぇ!」と大興奮だったので獣人であることがバレても捨てたり虐待されることはないと思う。
オーウェンがよくも悪くも男の子でよかった。弟が欲しかったとも言っていたのでレックスとも今以上に仲良くしてくれるだろう。
彼らはゲームのレックスルートのような血生臭い関係にはならなさそうだ。
子供部屋で散々騒いだのでヘビークレーマーのマクシミリアンが怒鳴り込んでくることを恐れたが幸いにも外出中だったのでそれはなかった。
代わりにメイド長に子供二人がお説教を受けていた。これもいつかは二人にとって微笑ましい思い出になるだろう。
別れ際レックスにはいくつかの指示を出しておいた。
人狼形態の時は服を着ること。手紙を書けるくらい字の勉強をすること。毎週この屋敷に遊びにきたいとオーウェンにねだること。
報酬は私を子狼形態で舐めまわし人間形態で撫でまわす権利だ。正直ベアトリスちゃん以外にそういうことをされるのは滅茶苦茶嫌だ。
けれどこの世界に身一つで転生した私に差し出せるのは自らの体しかないのだ。
ええい、私も元はアラサー社会人。大切な主人の幸福な未来の為だ。若い雄に欲望のまま汚されることを受け入れてやろうじゃないか。
それに実は会話ができる相手に出会えたというのは少しだけ嬉しい。
私とレックスがにゃごにゃごわんわんと会話している様子を見てベアトリスちゃんとオーウェンは私達がすっかり仲良くなったと思っている。
これならば『私と遊びたい』という理由でレックスがこの屋敷に来たがるのも不自然ではないだろう。
そして私は近い内にレックスに代筆させて手紙を持ってベアトリスちゃんのママへとカチコミをかけるのだ。
ちなみに今のベアトリスちゃんはというと。
「も、もう、レックスったら……私とオーウェンがつがいだなんて……まだ早いわよ……ちょっと、だけ♡」
そう、オーウェンはオトコノコだったがベアトリスちゃんはしっかりオンナノコだった。
オーウェンもベアトリスちゃんに惚れているし婚約者二人が相思相愛なのは何よりである。
ヒロイン登場までにいっそ入籍までしてくれないかな。私はくねくねと恥じらうベアトリスちゃんを見て思った。




