表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/24

11・闇堕ちの連鎖は阻止します

 今の段階ではちょっとアホっぽいが元気いっぱいで無邪気な男の子のオーウェン。

 しかしゲームに登場する頃には完全に闇属性になっている。

 婚約者の悪役令嬢ベアトリスに見下され馬鹿にされプライドを踏み躙られ続けた結果だ。

 そんな目に遭わされているなら婚約破棄すればいいのにと誰もが思うだろう。

 だがそうさせないのが悪役令嬢ベアトリスの厄介な所で飴と鞭を使い分けてオーウェンを飼い殺し続けているのだ。

 まあ、今の段階だとオーウェン普通に美少女なベアトリスちゃんのこと大好きみたいだしね。

 後から出てくるヒロインに心奪われるけれど、それまではなんだかんだで婚約者のことが好きだったのかもしれない。

 そして、そんな病んだ青年オーウェンの家で飼われているのがレックスだ。

 獣人である彼は、狼の姿でオーウェンの屋敷で鎖につながれて暮らしている。

 日当たりの悪い場所に繋ぎっぱなしで餌は残飯という劣悪な環境だ。

 レックス登場には条件があって、まずオーウェンの好感度をかなり高くする必要がある。

 そうすると週末デートの場所に『オーウェンの家』が追加されるのだ。

 そして初めて彼の家に訪れた時に出てくる選択肢で『犬が好き』を選ぶ。

 そうするとヒロインの気を引きたいオーウェンは自らが飼っているレックスを紹介してくるのだ。

 皮肉にも犬好きのヒロインに虐待されているレックスを見せたことによりオーウェンは攻略対象から外れる。

 だが、ヒロインはレックス攻略のためにオーウェンとの自宅デートを頻繁に選ぶことになるのでオーウェンからの好感度は上がり続けるのだった。

 レックスとは毎週会う度にイベントがあり、二回目で大きな犬ではなく狼の獣人であることがヒロインにバレる。

 三回目でヒロインがレックスに人間の言葉を教え始める。四回目でオーウェンがレックスに八つ当たりで暴力を振るっていることがわかる。

 五回目でヒロインはレックスからラブレターを貰って想いを受け入れる。六回目にオーウェンがヒロインに告白し断られる。

 そこで完全に闇落ちしたオーウェンは裏庭でヒロインを凌辱しようとして、レックスに噛み殺されるのだ。

 オーウェンの死体から首輪の鍵を回収したヒロインはレックスを解放し、二人で幸せな逃避行をして終了。これがレックスルートである。


「なあ、ベロア落ち着いたみたいだしレックスそろそろ籠から出していいか?可哀想じゃん」


 籠越しにレックスに声をかけてやりながらオーウェンを言う。

 いや本当にゲーム内のあの病んだ姿はどうしてこうなったという感じだ。まあ悪役令嬢ベアトリスのせいだが。

 そう考えるとベアトリスちゃんの悪役令嬢化を阻止することはオーウェンの人生も間接的に救うことになるのだろうか。


『こわくないよ、こわくないよ』

「にゃおん」


 籠の中からしきりに話しかけてくるレックス。少なくとも今は虐待されているようには思えない。

 うーん、悪役令嬢は父親のせいで人生狂っていたけど、彼女に人生を狂わされた人間も相当数いるのかもしれない。


『ねえ、レックス』 


 私から初めて彼に話しかけた。籠の中からビシビシ音がする。

 恐らく尻尾を振りまくっているのだ。彼と会話はできるのだろうか。


『やっぱりかわいい!ちっちゃくてかわいい!なまえよんでくれた!こえもかわいいねえ!』


 ちょっと雑念が多いが私の言葉も聞き取れているようだ。

 猫好きな犬ってこんな感じなのだろうか。いや彼は狼だけれど。厳密にいえば狼の獣人だ。

 そう、ゲーム内の彼はほぼ人間と変わらない姿だった。

 そして教えれば字も書ける。……手紙が書けるのだ。

 今でも犬は好きじゃないけど、そんな我儘を言っている場合ではない。 


「ねえ、ベロア。レックスを籠から外に出してもいいかしら」


 ベアトリスちゃんが私の頭を撫でながら恐る恐る聞く。

 肯定代わりに私はみゃおんと鳴いた。  


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ