サバイバル 4日目前編~エルフ?の少女~
???「・・・・ソチオ!ソチオ、ミコデコ!」
誰かに揺すられてる気がするが、体はまだ休息を欲している。俺は無視して覚醒しかけた意識を再び手放した。
目が覚めた時にはすでに太陽は天高く上がり、地平線めがけて下り始める時間だった。久しぶりにゆっくり眠れた気がするが長時間地面に直で寝たため体のあちこちが痛い。背伸びをして凝った体をほぐす。
???「ワフホソチハタ、メヨヌテ。」
春行「うわっ!?」
いきなり近くで声が聞こえたのでビックリして飛び退く。
俺の目の前には小学生くらいの少女が座っていた。
白い肌、艶やかな黒く長い髪、まるで宝石のような金色の瞳、まだまだ幼い顔の横には異常に長くとがった耳が生えている。その容姿から推測するにエルフか?
エルフは金髪というイメージがあったから違和感がある。
???「メヨヌテモスセソツリンスバマコヘ、ヤヤホヤソソヒダシメ。」
何て言ってるのか全く分からん。ただジト目から察するに友好的なことは言われてないだろう。
初めて異世界人に出会ったわけだがいきなりすぎて頭が働かない。
とりあえず自己紹介するべきか。
春行「ハ・ル・ユ・キ」
自分の顔を指さしながら名前を言ってみたが首を傾げられる。エルフ可愛いな・・・。
もう一度自分の名前を伝えてみる。
春行「ハ・ル・ユ・キ」
???「ハ・ル・ユ・キ?」
俺を指さしながら聞いてきたので、頷きで答える。エルフの少女はこのやり取りで言葉が通じないことを察してくれたらしく、俺がやったように自己紹介してくれる。
???「ミ・ティ・ナ」
今度は俺がミティナを指さしながら答える。
春行「ミティナちゃん?」
ミティナ「ミ!ティ!ナ!」
春行「ミティナ」
ミティナは笑顔で頷いた。
ミティナは麻織物のような生地の服を着ているが、袖は無いし着丈は短くへそが見えている。下は短いスカートと木の板とつるで作られた下駄をはいていてとてもジャングルを歩く格好ではない。
それでも露出している肌には傷や汚れは見当たらない。
俺はここに来るまでに傷だらけで服もボロボロという有様だ。それはつまりミティナはこの近くに住んでいて安全な生活を送っているという事だ。
ミティナに案内してもらえればエルフたちの住む場所で保護してもらえるかもしれない。そうなれば生存環境が確保でき召喚魔法について調べることもできるだろう。
エルフの住んでいる場所に案内してもらう為、棒で地面に家の絵を書き、そこに連れて行ってとジェスチャーで伝える。
頷いたミティナは屋根の下から出て、手招きしてくる。どうやら上手く伝わったらしい。
俺は学ランに袖を通しミティナについていく。
苦労して作った寝床だがここでさよならだ。と、歩き出そうとした途端俺の腹の虫が鳴き出す。
背中を向けているので表情は分からないがミティナは長い耳を真っ赤にしてお腹を押さえている。
どうやら鳴いた虫は2匹だったようだ。
春行「飯食ってから行こうか。」
確保してあった5個のモニピーを二人で分け合った後、上流に向かって川沿いを進む。
川岸は苔の生えた岩や石で滑りやすく、とても歩きづらいのにも関わらずミティナは軽い足取りでどんどん進んでいく。
ミティナ「ソノシ!ハルユキホオヌヂ!」
おそらく俺を急かしているのだろう。慣れない足場を慎重に進んでいる為、遅すぎるというのもあるだろうがミティナは何故か焦っているように見える。
あれでは怪我をしかねないと思っていると、案の定転倒してしまう。慎重に駆け寄ると、ミティナは右足を押さえながらうずくまっていた。
春行「ミティナ!」
ミティナ「ハルユキダソノシネシバノ、ヤタワオス!」
涙目で何かを訴えているが分からない。とりあえず押さえている右足を見せてもらう。
左足と比べると少し赤く腫れている。捻挫だと思うが程度を確かめるため触ってみると軽く押しただけで顔をしかめている。
ミティナ「シハシバオ、ヤタワオス!」
幹部を触ったせいでミティナは怒りながらポコポコ叩いてくる。
これは歩けそうにないな。
俺は川で右足を冷やすようジェスチャーで伝えると、ポケットからハンカチを取り出し帯状に畳む。
数分冷やさせたあと表情を見ながら慎重に右足首を固定するようにしっかり結んでいく。その際、スカートの中は見ないよう細心の注意を払う。
なんで履いてないんだ・・・。
ミティナはその作業を不思議そうに見守っていた。
少し休憩した後、うつむいたまま隣に座っているミティナの正面にしゃがみ背中を差し出すと素直に首に手をまわし体を預けてくる。ボリュームのある双丘の感触が背中に伝わってくる。
ミティナって見た目に似合わず結構あるんだな・・・。
一瞬湧いてきた邪な感情を振り払い足を抱えて立ち上がる。
体力の衰えた今の俺ではきついとも思ったがミティナは驚くほど軽かった。
ミティナ「ナフチカリボシトホシフヘドエコマナシ。サホ・・・サキダホ・・・」
何て言っているのかは分からないが、今まで聞いた中で一番優しい声だった。
寝床から1時間弱歩いた所でおんぶされているミティナが川の対岸を指さす。川には渡れそうなぐらい浅い所がありそこを通って対岸に渡る。正面には小さな道がありミティナはその先を指さしているので道を辿って行く。道なりに進むとすぐに開けた場所が見えてくる。
が、何か様子がおかしい。
その場所に近づくにつれ空気がピリつき心拍数が上昇する。
体が強張り額から汗が噴き出す。
俺の本能がそこに行くなと警告を発している。
俺は一度足を止め道の脇の茂みにミティナを隠すように降ろすとここにいるようジェスチャーで伝える。ミティナもこの空気を感じているのだろう。立ち上がった俺の手を掴み心配そうに見上げてくる。
なるべく心配させないよう笑顔でそっと手を放し、その場を離れる。
道から少し茂みに入った所から匍匐前進でゆっくり近づいていく。
開けた場所の様子が見えてくる。
テニスコートぐらいの広場に家だったであろう残骸の山が一塊あり残骸の向こう側にその姿があった。
ライオンの頭に山羊の胴体、蛇の尻尾を持つ怪物。
キマイラだ。