サバイバル 0日目~異世界転送~
俺の名前は伊達春行。
自分で言うのも何だが自衛官の父のおかげでアウトドアが趣味、剣道と合気道を少々とそこそこなスペックを持っている。勉強は中の上くらいだけど・・・。
”おそらく”イタリア人の超絶美人な母のDNAのおかげで見た目も悪くない。圧倒的に父親似だけど・・・。
”おそらく”と言うのは母の出身地を聞いても何故か『かいがい』としか教えてくれないからだ。
そんな俺は今日から高校生になりました。
???「ハル!」
春行「どした?」
入学式が終わり、靴箱で上履きを履き替えさっさと帰ろうとしていた俺を呼び止めたのは小学校からの友人である高原純平だった。
純平「部活動説明会参加しねえの?」
春行「キャンプ部とかアウトドア的なのがあったら参加したかもな。」
純平「じゃあオカ研入ろうぜ!」
春行「人の話聞こうな。あと、何でオカ研?」
純平「チサがハルも誘って来いって言ってたから、でも何でだろ?」
チサとは、坂本千紗の事で純平が中2の頃から付き合い始めた一個上の先輩だ。
純平に彼女ができるまではよく一緒にゲーセン行ったりキャンプに行ったりしていた。
その頃は親友と言ってもよかったかもしれないが今では休日一緒に出掛けないしキャンプも俺だけで行っている。
だから今では純平を親友から友人に格下げしてる、決してリア充を妬んでいるわけではない。
春行「どうせ部員数確保したいだけだろ。他をあたってくれ。」
純平「え~~頼むよハル~今日だけ、今日だけ部室に顔出すだけでいいからさあ~。」
今にも土下座してきそうな姿から純平と坂本先輩の普段の上下関係が伺える。友人を哀れに思った俺は今日だけ、オカ研についていってあげることにした。
部室棟一階の一番奥の教室、室名札には『1-5』とあるが扉には手書きで『オカルト研究部』と書かれた紙が貼られている。
純平「チサ~春行連れてきたよ~グエッ」
坂本先輩「伊達君!よく来てくれたわね。儀式にはあなたの協力が必要だったのよ。」
扉を開けて早々褒めてーと抱き着こうとした純平を押しのけ、坂本先輩は俺の手を引いて部室に招き入れる。
倦怠期かな?
部室内はカーテンで閉め切られていて薄暗く坂本先輩、純平の他に3人の生徒がいる。
床には五芒星の魔法陣のようなものがチョークで書かれていてその中央にボロボロのマットが置かれている。まるで生贄の祭壇みたいだ。
春行「儀式って何ですか?俺、何も知らないんですけど。」
坂本先輩「異世界への扉を開く儀式よ!」
つかまれている手を払い、坂本先輩の手首を握り返しそのまま組み伏せる。
部室内にいる他の3人にも対応できるように構えるが、オロオロするばかりで何もしてこない。
春行「純平、俺が先輩を抑えてる間に早く救急車を呼べ。」
坂本先輩「イタタタタ!待って待って話を聞いて!」
純平「ハル、落ち着け!救急車を呼ぶのは話を聞いてからでも遅くないって!」
ハッとして、チサ先輩から手を放す。部室の異様な雰囲気のせいで過剰に反応してしまった。
春行「坂本先輩、すいません!」
坂本先輩「大丈夫よ、目覚めかけたけど何とか踏みとどまったわ。」
純平には後で坂本先輩と別れることをお勧めしとこう。
話によると、この教室で20年前に一人の男子生徒が教師や生徒たちの目の前で失踪するという事件があったらしい。
その事件を坂本先輩は男子生徒が異世界へ強制転送されたと思っているようだ。
そして、その失踪した生徒が伊達という苗字だったそうなので俺を媒体にしてもう一度異世界への扉を開く儀式をしようという事らしい。苗字は絶対関係ないだろ・・・。
何の信憑性もないよくある学校の七不思議の一つだが、オカ研の人たちは信じている。
自分の知らない世界や超常的な力に憧れる気持ちは分からなくもないが現実にはそんなもの存在しない。 だが、今の先輩たちには何を言っても納得しないだろう。
なら、儀式をしても何も起きはしないという現実を先輩たちに突きつけるしかない。
春行「話は分かりました。一度だけ協力しますから、もう勧誘しないでくださいね。」
坂本先輩「約束するわ。この日の為にネットで異世界召喚の儀式について調べ上げ、準備してきたんだから必ず成功するはずよ。」
ネットすげぇな。
先輩たちが五芒星の角にそれぞれ立ち、俺は寝心地最悪なマットに仰向けになる。
坂本先輩「ジュンジュンはそこね。あとこれに呪文書いてあるから私たちと一緒に読んで。」
純平が坂本先輩から紙を受け取り最後の角に立つ。
坂本先輩「せーーのっ@#*+‘*~」
坂本先輩の合図で一斉に呪文の詠唱が始まる。先輩たちが呪文を唱え始めた途端、睡魔が襲ってくる。
まるで子守唄を聴いてるようだ。
特に純平の強弱のまったくない呪文の朗読に意識が遠退いていく・・・