第4話 奈々の恋
「果歩・・・」
奈々はさっきから、泣いているあたしをなぐさめている。
「果歩、もう今日はあたしの家に泊まっていきなよ」
「ヒック・・・うん・・・」
確かに今日は、家に帰りたくない気分。
時計を見ると、もう軽く1時を過ぎていた。
・・・疲れた―――。
今日は精神的にも、肉体的にも、もう限界。
あたしは泣き止んだものの、悠斗のことが頭から離れない。
事故のこともそうだけど・・・
悠斗に好きな人がいるって知ったとき、何よりもショックだったんだ。
あたし、失恋したんだ。
『初恋は実らない』
誰かの言葉を思い出す。
実らないのかな・・・
―――――――――――――
奈々ん家のお風呂を借りて、
寝ようとしたとき、奈々はあたしに自分の恋の話をしてくれた。
「果歩、あたしね、初恋は1年前――小学校6年生のときだったんだ。
そのときクラスにすごくモテてた男の子がいて、友達はみんなその子があたしのことが好きなんだってウワサしてた。
でもあたしはその子の友達で・・・ウワサは知ってたけど告白して付き合うことになったの」
「・・・そっか」
「でもね・・・その日からあたしの元だけどカレシは友達を無くした・・・
モテてた男の子の逆恨みだったの。」
「え?それで・・・?」
「あたしは見てられなかったなぁ・・・
だから分かれたの。彼のために・・・。
その日から彼は一人ぼっちじゃなくなったけど笑わなくなった。そのまま卒業して・・・
今でも思う。あれは本当に彼のためになったのかな――って。」
「・・・そっか・・・」
奈々がこんな恋してたなんて・・・
「あたしは・・・あたしなら絶対別れないよ!
だって・・・好きな人を失ってまであんな友達がほしいなんて思わない・・・」
「果歩・・・だよね。あのときのあたしってほんとバカだった・・・
でも今、好きな人がいるんだ・・・純平くん」
奈々はテレながらつぶやいた。
あたしはいきなりさっきの告白を思い出した。
『・・・オレさぁ、果歩のこと好きかも』
・・・何思い出してんのよあたし!
あれは冗談って言ったじゃん!
「果歩?どうしたの?」
「う・・・ううん!もう寝よう!!」
そうだよ・・・あれは冗談・・・
奈々に言わないほうがいいよね・・・
そう思って、気にもとめてなかったんだ。
あたしは疲れているにもかかわらず、眠れなかった。
悠斗のことが心配。いろんな意味で・・・
そのまま夜が明け、あたしは奈々と一緒に学校へ行った。
正直言うと、行く気になれなかった。
着いたとたん、みんなに話しかけられた。
「ねぇ、悠斗くん大丈夫?」
「どうして事故なんかに会ったの?」
「不良だったんでしょ?犯人捕まったって今日ニュースで見たよ」
・・・犯人、つかまったんだ。
「え、そうなの?」
「悠斗くん狙っていたって・・・」
・・・うるさいなぁ・・・
今はそんな気分じゃないのに。
あたしはあらかさまにいやな顔をした。
みんなはそれに気づいて離れていく。
「果歩、大丈夫?」
さっきからあたしと同じ状態だった沙世が聞いてきた。
「あたし、今日早退するね。バイバイ」
「え?」
沙世が一瞬驚いた顔をしたけど、
「・・・わかった」
と言った。
あたしはいきたいところがあった。
そう、悠斗が入院してる病院。
純平のことは気にも留めてなかった果歩。
でも、そのことで果歩は後で悩まされてしまいます。
それはどうしてでしょうか?
では、また次回で・・・