第3話 悠斗の好きな人
「悠斗!!悠斗!!大丈夫??」
意識がない悠斗に話しかけている。
・・・あたしは○○病院にいた。
そこには、変わり果てた姿の悠斗がいた。
あたしはそれを見た瞬間、涙が止まらなくなっていた。
着ていたシャツはボロボロに破れ、体中から驚くほどに血がでていた。
あたしのとなりには、震えながら泣いている沙世がいる。
悠斗が運ばれ、その手術室だと思われる部屋は、「集中治療室」と書いてあった。
そして今は「手術中」。
「沙世・・・」
沙世はまだ泣いている。
あたしの目からも涙があふれている。
「ねぇ沙世!!どうしたの??なんで悠斗があんなふうに・・・!!」
あたしの中は怒りと悲しみで埋め尽くされた。
「わ、私―――・・・」
沙世はひき逃げの現場を目撃したから、怖がっているのも仕方がない。
「ひき逃げだよね?!見たまま話して・・・?」
「うん・・・みんなと分かれた後、私は悠斗と一緒に帰っていたの・・・
ヒック・・・そしたら、いきなり白い車が飛び出してきて・・・
その車は、明らかに悠斗だけを狙っていたの・・・ヒック」
沙世は涙声で話してくれた。
「何それ・・・」
沙世の話を聞いたあたしは、ぞっとした。
そんな・・・ただのひき逃げだと思ってたのに・・・
「殺人未遂」だっただなんて・・・
そのとき奈々と、悠斗のお母さんが、やっと病院についた。
「果歩・・・」
「おばさん・・・」
「悠斗・・・悠斗は大丈夫なの??」
悠斗のお母さんは、混乱していた。
「あばさん・・・悠斗を恨んでた人に覚えがないですか?」
「え?どうして・・・」
「悠斗は・・・狙われてたって・・・沙世が・・・」
「もしかして・・・」
「あるんですか?!」
「ええ・・・千沙のことじゃないかしら・・・」
「それってどういう・・・」
おばさんは、ゆっくりと話し出した。
「千沙は悠斗のいとこで・・・長野に住んでて、
1ヵ月ほど前、千沙は東京に遊びに来ていたの。
かわいらしい顔をしてるから・・・不良の男に絡まれてて・・・
それを悠斗が見つけ・・・不良と喧嘩になったのよ・・・
あのこ喧嘩強いからあっという間に倒しちゃったらしいんだけどね・・・
あの子・・・千沙のこと好きみたいだし・・・」
「・・・え?」
それを聞いた瞬間、あたしの中で何かが崩れ落ちた。
さっきととは違う涙が流れてきて、抑えきれない。
それに気づいたのか、奈々は
「すみません、うちら今日のトコもう帰ります。」
と、おばさんにことわって、あたしに
「ほら、いこ・・・」
と言った。
おばさんは、「そうね、今日のところは・・・来てくれてありがとう」と言った。
病院からすぐ近くの奈々の家に行き、あたしはまだ泣いていた。
「奈々・・・これって失恋ってことかなぁ・・・?」
「果歩・・・」
悠斗が苦しんでるのに、あたしはこんなことを考えるなんて・・・
あたし、どうかしたのかな?
でも気持ちは止まらなくて・・・
今まで感じたこともない気持ち・・・
絶望と悲しみが入り交ざったような、苦しい気持ちが、どんどん溢れてくる・・・
悠斗に好きな人がいると発覚。
果歩は悲しみから立ち直れる?
そして、悠斗大丈夫なのでしょうか。
では、また次回・・・