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完全階級国立魔法学園  作者: 葛葉蹈鞴
1/3

1話・再来とテスト

太平洋のど真ん中に位置する島国、マリオネアル王国。


そこでは、今ではありえない絶対王政制度が取られていた。


しかし、それに反対するものは誰もいない。


マリオネアル王国では、世界で一番幸せと言われるほどの、絶対王政がとられていた。






【バッジ】


「・・・迷った」


入学式から約7か月、俺は初めて登校した学校で迷っていた。

転校というわけではない。入学式も出ず約7か月の間、不登校だったのだ。

学校が面倒くさいという理由だけで。


「無駄にでかい校舎だな・・・。職員室はこっちか。」


この学校はマリオネアル王国が管理する学校、完全階級国立魔法学園。その名の通り、家の持つ階級でクラス、優遇制度が変わるというものだった。

ボケボケと歩きながら職員室に到着するとノックもなしに扉を開いた。


「失礼しますーっと。」

「あぁ、やっと来ましたね、蹈鞴陰さん。あなたのクラスは1ーEクラスです。・・・本当にいいんですね?」

「同じことを何度も言わせないでくれませんかね。」


再度クラスについて確認をとられるが、俺にとってはただただイラつかせるだけの言葉だ。同じことを何度も言わせないでほしい。

わざわざ意思を曲げる必要なんてない。一度決めたことはやり通す主義だ。


「では、こちらが高華クラスのバッジです。身分を提示するものになりますから、なくさないようにお願いいたします。」

「いや、無くすほうがおかしいから……。」


変に念を押されても、これはブレザーに身につけるもの。一度つけてしまえば、ブレザーを洗う時、買い換える時以外外すことがないのだから、無くす理由がない。逆になくしたらそれは無くし物の天才だ。

渡された高華バッチを胸につけ、職員室を出る。

この王国に存在する、10つの階級。


下階級 ゲ H

一般階級 イッパン G

中間階級 チュウカン F

高華階級 コウカ E

市準管理者階級 シジュンカンリシャ D

市管理者階級 シカンリシャ C

貴族階級 キゾク B

||

国家準管理者階級(政治家とか) コッカジュンカンリシャ A

国家管理者階級(国王・国王側近)SS


この9つが誰にでも公開されている階級で、残りの1つは、その階級であるものしか知らない。

一般の人間にはそもそも、存在すら知られていない。

……いや、知る必要が無いのだ。

ただ、その情報公開がされたことが一度だけある。数百年前の話だが。

なんて、誰に言っているかわからないことを考えながら、赤い絨毯が敷かれた、無駄に豪華な廊下を、俺は歩き始めた。


-これから何が起こるかも知らずに。






ぱちぱちと歓迎の拍手がなる。歓迎なんかしてないくせによくやると感心する。そもそも転校してきたわけでもないのに。

教室に来る途中、遠回りをして全教室の渡り廊下を歩いてきた俺だが、階級というものの大きさを理解した。

階級が高ければ高いほど教室の広さ、清潔度が変わっている。

Hクラスは遠目で見てもわかるほどぼろぼろ。しかし、Aクラスは教室の外ですらカーテンや石像などで装飾されていた。異常だ。

高華クラスはいかにも普通な教室だった。一般クラスは少しぼろい教室にエアコン完備。

中間クラスは一般クラスの教室がきれいになっただけ。大差はない。

高華クラスになり追加されるのはタブレット端末だ。

これにより必要なノート、教科書、プリントはすべて省略される。

だから、課題などのアナログによる紛失物は一切なくなったわけで。

もちろん、復帰した俺のプロフィールもタブレット端末に表示されている。だから、俺を見ている人は一人もいない・・・。

と思っていた。

一つの空席、その隣の女の子が、机に置いてある俺のプロフィールの載ったタブレットに目もくれず、こちらを凝視していた。

しかも満面の笑み。恐怖をほとんど感じない自分の背筋が冷えるほど恐ろしい笑みだった。

「蹈鞴陰尊です。よろしくおねがいします。」

挨拶をし、改めて笑み女を見る。どんなバカでもわかる、空いている席は笑み女の隣だけ。

・・・必然的に、笑み女の隣の空席、そこが俺の席となる。

「蹈鞴陰さんの席はあそこです。」

と指差されたのは笑み女の隣の空席。ものすごく、現実逃避したい。

仕方なしにその席に座る。右からの恐ろしい視線は気にしないでおこうと決めたのだが…。

HRが終わった後、一番に話しかけてきたのは笑み女だった。

「よろしくね、尊くん、私は狐斬陽華。隣の席同士よろしく!気軽に陽華って呼んでね!」

右手を差し出していた。満面の狂気的な笑みで。俺は、仕方なく握り返す。

「あぁ、うん、よろしく・・・。」

まちがいない、陽華は俺の苦手なタイプだ。無駄に明るい、ハイテンションなやつ。

とりあえず俺は彼女に言いたいことを言った。

「・・・自己紹介の時の、作り笑いだろ。鳥肌立ったぞ。」

いまだ立って俺のことを見下ろしてくる彼女に本音を向けると、笑いながら俺を見下ろしていた彼女は、はぁ、とため息をついて、笑顔を崩した。

「やっぱり?みんな怖いっていうの。」

「お前はただ単に第一印象を気にしてるだけだろ。その調子だと、クラスで友達が出来なかったから、いずれ登校するであろう俺と友達になるため、第一印象を良くしようとその笑みを張り付けたって感じだろ?」

「仏頂面のあなたに言われたくないわ。まぁ、当たってるけど…」

さっきの笑みは完全に消滅し、しょんぼりとした顔をする陽華。なんだか安心した。あれが普通の笑みじゃなくて。あれが普通の笑みだったら俺は明日からまた不登校になるところだった。同級生にそんな笑みの怖いやつがいてたまるもんか。

しかし、これからどうしたものか。正直、授業に出る気はない。今日は復帰として教室に来たが、授業は屋上ですごすつもりだった。

どうしようかと突っ伏していたら無駄に顔がイケメンなやつが出てきた。

「こんにちは、尊くん、僕はこのクラスの学級委員をしている、熊谷海斗。さっそくで申し訳ないんだけど、授業そっちのけで施設案内をしたいんだ。」

「施設案内・・・。君が?」

「誰が案内するかに指定はないよ。」

指定がない。ならクラスを見回しおとなしそうな人間を選ぼうとした矢先、「わたしがやりたい!」と、陽華が名乗り出た。

授業そっちのけなんだ。もう正直いうと誰でもいいから早く決めてほしい。教室にいるのは嫌だ。

「よし、じゃあいくよ!尊君!」

決める以前に既に決まってた。というか、強引に決まったみたいだ。委員が苦笑いでこちらを見ていた。

この様子を見ると、普段つるまないやつが無駄にハイテンションで困っているのだろう。

ぱたぱたうるさい足音が、右の方で響く。足踏みをしながら俺が来るのを待っていた。

「なにしてるの尊くん!はやく!」

「・・・わかったよ。」

正直、連れまわされるのは嫌だが、さぼるためだと思い、嫌な気持ちを押しとどめた。



案内をしてもらっているが、思うことは一つ。広すぎる。

普通の学校にあるような施設はもちろん、実験室、射撃場、防音室、プール、乗馬場、劇場、あまりないようなものまでそろっている。

一部寮制でもあるため、映画館などの娯楽施設も多少はそろっている。さすが国が管理する学校といえる。

「じゃあ最後はここ。この学校のほぼすべての情報を自動的に管理しているともいえる通信施設よ。」

「・・・自動ってことは、これはAIか?」

「当たり!」

「・・・ここもか。」

というか、なぜ陽華がそんな部屋に入れるのか。部屋の入室にカードキーは必要だった。PCの起動に必要なカードキーも彼女が持っていた。

「ここのプログラムは、世界一の学力を誇る、【とある人間】が構成したと聞いているわ。」

そういうと、右端にあった不思議なボタンを押した。すると、二進数の文章が上から下へと流れ始めた。

この制御装置のプログラムだ。

「なぁ、このAIも国が管理してるのか?」

「まぁ、そうだね。」

AIということは、なにか起きた時手動で直さなくてはいけない。AIを書いたのが人間なのだから、それを直すにもそれを書いた人間が必要だ。

ただ、全てをAIなどの機械で制御するのも、割と効率が悪い。学校の管理するAIがエラーなんて出したらたまったもんじゃない。自動ドアが開かない、電気がつかない。もっとたくさんの問題が出てくる。

予備電源も同じプログラムで構成されているはずだから、予備電源が起動したとしてもいずれまたエラーになる。

……帰る口実はできた。

「え、ちょ、ちょっとどこ行くのよ!」

「帰る」

「はぁ!?」

少なくとも、【プログラム管理者】としての役目は、果たさないといけない。


「お、ビンゴ」

自宅に帰って、さっそく学校のプログラムに目を通す。間違いなく、ミスっている。

修正をして、動作確認。よし、ちゃんと動く。

たぶんこれで問題はない、はず。同じことを予備電源にも行えば、学校の問題点はすべて解決される。

「そういえば、無断で学校帰ってきたから怒られそうだな・・・」

たしか、先生が言っていた高華クラス独特なテストの受け方とはなんなのだろうか…。

確かにあの学校は普通とは違う。そもそも国自体が異様だが。人一人一人の扱いが違う、平等だなんて、夢のまた夢なこの国だ。

テストまで一人ひとり別々に作られていそうで恐ろしいな…。

ただ、そう作られていたとしても、困ることなど何もない。俺にわからないことなんて、なにもない。



「こういうことか。確かに独特だ。」

まさか全員からみられながらテストをするという異様なテストの受け方とは思わなかった。

教室が机で囲まれていて、ちょうどど真ん中の席に俺はいる。

プレッシャーとか嫌な視線とかで点数を落とす作戦なのだろうか。まぁ、視線という視線には慣れてるから問題ない。

受けるテストは国語、数学、外国語、社会、理科、情報基礎、国家基礎。国家基礎を除けばよくある一般的なテストだ。

ただ、高1の内容とはいかない。この学校のほかにも、高等学校はある。ただ、それは他のタイプ。

この学校はノーマルタイプではなく、エリートタイプ。学校につけられる階級の最上位だ。それに伴い、生徒の学力だってエリート級。

ビギナー、ノーマル、アドバンス、エリート。この四つの階級に分けられる学校。この国ではありとあらゆるものに階級がつけられている。

食料、動物、機材。家系とは別でさらに人間一人一人にも、存在まるまる知らされていないが階級がつけられているのだ。

そんな他国ではありえない、マリオネアル王国独自がとっている体制などをこたえるのが国家基礎。

ただ、国家基礎なんて授業はない。テストはクラス別。階級によって公開されている国の情報が違うため、自分たちで端末から情報を取得しないといけないのだ。

一般的な五教科+情報基礎のテストは、さすがエリートタイプ学校だと言わざる負えない問題だった。問題文をすべて外国語で書くのをやめてほしいが。

しかし、これは少しおかしい。高華階級では知りえない歴史の問題や体制問題なとが作られている。

これは四国管理者階級以上が見ることのできる情報についての問題だ。

「ここ、高華クラスですよね…?」

「そうよ?」

先生は平然とした顔で答えた。

…なるほど、これは予測問題というわけか。

解答には、自分の考えを書きなさい。問題文にはそう書かれている。国家の情報を自分で予測しろということか。

に、しても困った。俺はこの答えを知っている。ただ、これは自分の考えを書く問題。知っている情報をきっちりここに書いてしまっては自分の考えにはならない。必然的にバツになってしまう。

「仕方ない…」

自分の考えを書くことは得意ではないが、かけるだけ書くことにしよう。




「テストは全て満点よ!すごいわね、蹈鞴陰くん」

担任からテストを返された。ただ、それは自分にとっては当たり前の結果。

すごい、なんて。そんなバカげた言葉をかけられたって、うれしくもなんともない。

「へぇ…そのテスト、あたしでも満点取れなかったのに…」

後ろからテストの結果を覗き込む陽華。かなり拗ねているようだ。

「この学校で一番点よかったのあたしじゃなくなっちゃった!尊君のばーか!」

「…お前より成績よかったのにバカにされる義理はない。」

それよりも、周りからの視線が痛い。

これは後で、「尊君すごーい」みたいな言葉を受けるんだろう。知ってるよ。

そもそも、こんな少し頭をひねれば簡単に答えられる問題を、間違える方が逆にすごいと思う。

まぁ、人それぞれ得意不得意はあるが…。

…。

そういえば、こいつ今、「この学校で一番点よかった」って言ったよな。

たしかに出されたテストの問題内容は国家基礎以外は同じだ。

ってことは、こいつってなかなか頭いいんじゃ…。

「なぁ、お前って、学力は学年1なのか?」

「学力だけじゃないわ。運動神経においてはマリオネアル国全高校の中で一番なのよ!知らなかったの?情報開示はされているのに!」

自分の端末を見る。


学生専用開示情報<学校ランキング<一位・完全階級国立魔法学園<1年Eクラス<狐斬陽華


成績・オール4



・・・オール4?

「なぁ、ここの成績の最高単位は「5」だよな?」

「そうね」

「なんで、オール4?」

「私提出物出さないの」

なるほど、理解した。いくら頭が良くても、運動が出来ても、課題を出さないのなら成績は下がって当たり前だ。

課題を出せばオール5をとれるはずなのに、課題が面倒だからやらない。そんなやつがオール5だったらこの学校は階級優遇主義ではなくただの実力主義だ。

まぁ、家の階級はほとんど魔法の実力で決まるが。

「あとは魔法実技だけね!」

1番気がのらない、唯一の実技テスト、魔法実技。

気が乗らないのは面倒ということもあるが、あまり人前で魔法を使うのは好きではないのだ。

「さぁ、学力最優秀のあなたの魔法の実力はいかほどかしら!」


……はぁ、本当に気が乗らない。

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