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流れ星を手のひらに  作者: ただみかえで
第10章 クリスマス
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第89話 ホワイトクリスマス

ガラガラッ


「お、やっと帰ってきた」

「トラ先輩、ただいまです」

 部室に戻ると、ちょうどトラ先輩が玄関先にいた。

 迎えにいったはずの私まで戻ってこないものだから、様子を見に来てくれる所だったらしい。

「んで、こんな寒いのに二人して何してたの?」

「えーっと……」

 何をしてた、と聞かれると告白をしてました、としか言えないんだけど、もちろんそんなこと言えるわけもなく。

 どうしたものかと思っていると、横からケイ先輩が助け舟を出してくれた。

「ちょうど流星群が見られたので、それを見てたんです」

「そうそう!

 すっごくキレイでしたよー!」

「なんだよー、そういうのは俺らも呼べよなー」

「あら、トラ。

 今からでも見られるんじゃないかしら?

 そんなちょっとの時間で終わるものでもないでしょうし」

 話し声を聞いてステラ先輩もやってきた。

「お、そかそか。

 んじゃ、みんなで見にいこうぜ!」

 というか、ステラ先輩だけじゃなくみんなぞろぞろと。

 まぁ、そうだよね。


「それがですね。

 急に雲が出てきちゃいまして……って、あー!

 そうだそうだ、雪降ってきましたよ!!」

「おおー! 今年は遅かったなー!

 積もりそう?」

「んー……そこまでではなさそうですねー」

 ここら辺は、冬の間はそれなりに雪は降るのでそんなに珍しくもないんだけど、降れば降ったでやっぱりテンションはあがる。

 今年初が、クリスマスに合わせて(厳密には2日ほど早いけど)ってのもまたポイントが高い。

「流星群も、雲の隙間から見えるかもしれないから、どっちにしろみんなで外に行きましょうか」

「はーい!」

 ステラ先輩の言葉に全員が――

「あ、私は寒いのはパスで」

――伊織音先生を除く全員が素直に返事をする。


「はい、おねぇ」

 コートしか来ていなかった私に、なゆがマフラーを手渡してくれた。

「ありがと。

 気が利くね!」

「それはもう」

 ちょっとレアな、なゆのドヤ顔付きで。

「ふふ、なにその顔」

「おねぇと同じ顔だよ?」

「違いない」


「ほんっと、星空姉妹は仲良しだなー」

 なゆと軽く漫才をしているとスミカ先輩に茶化されてしまった。

「羨ましいですか―?

 でも、なゆはあげませんよー?」

「いらないよ」

「え!? いらないんですか!?

 なゆは可愛くないってことですか!?」

「いや、そ、そう言う意味じゃなくて!」

「なーんて、うそですよー」

「くっ! そうだとは思ったけどさ!

 いいや、先行ってるね」

「はーい」


 そうこうしている間にみんな出ていってしまって、部室には私となゆだけになっていた。

「おねぇ、苦しい……」

「あ! ごめん!」

 スミカ先輩()遊んでた時に、ぎゅってしすぎた。

 慌てて腕を離す。

「……ふぅ。

 で?」

 首をさすりながら、なゆが聞く。

「『で?』って何が?

 ……って聞き返すまでもないか」

「うん」

 真剣な目で見るなゆを、同じように見つめ返す。

「言ったよ」

「先輩はなんて?」

「まだそう言う事考えられない、って」

「そっか」

「うん」

 誰もいない部室は、とても静かだ。

 外から聞こえるみんなの声が、TVから漏れているかのように思えてくる。

「でも、嫌いではない、って。

 あとね……いつか誰かを好きになりたい、って。

 それが私だったら嬉しいけど。

 だから、このままアピール続けるって言っちゃった」

 できるだけ明るく話しているつもりだけど、できているだろうか。

「……がんばったね」

「うん……」

 優しく頭をなでてくれる。

 同じ顔をした、私の大切な妹。

 いつもそばにいて、支えてくれる。

「ちょっとだけ、ごめん……」

 そう言って肩に顔を埋める。

 ずっとずっとこらえてきたけれど、もう溢れてくる涙を抑えられそうになかった。

「…………」

 何も言わずに、頭を撫で続けてくれる。

「辛くない?」

「うん」

「……そっか。

 おねぇが大丈夫なら、いい」

「……ありがとう……」

「泣きたくなったら、いつでも言って」

「……ふふふ、ウチの妹は男前だぁ」

「もう、馬鹿なこと言ってるとはたくよ?」

「ごめんなさーい」


 5分くらいそのままでいてから、二人で外に出た。

 雪はぱらぱら舞っていたけど、雲の切れ間からは時たま流れ星が見えていた。


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