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流れ星を手のひらに  作者: ただみかえで
第10章 クリスマス
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第86話 クリスマス会

「メリークリスマース!!!」

「かんぱーーーい!!」


 緊張していようが何していようが時間というものは流れていくわけで。

 気がついたらクリスマス会がスタートしていた。

 『気がついたら』というのは比喩表現でもなんでもなく。

 実際、お昼ご飯を食べ終わってからの記憶がいまいち曖昧だったりする。

 ずっと心臓の音を聞いていた気がする。


「どうしたの? すばるん、なんか上の空ね?」

「ひゃっ!

 あ、け、ケイ先輩!!」

 変な声が出てしまった。

「なに? そんなに驚いて」

「いえ、その……すみません、ちょっと考え事してて」

「まぁいいけど?

 折角だから楽しみなさいね。

 悩み事があるなら聞くわよ」

「あ、ありがとうございます、大丈夫です」


 うぅ、なんか変な心配をかけてしまった。

 自分でも挙動不審だと思うし。

「ふーーー」

 大きく息を吐く。

 うん、いまさらわちゃわちゃしてもしょうがない。

 ドキドキするのは止まらないけれど、いまさらだ。

 この2週間くらい、ずっと付き合ってきたのだ。

 1年分くらいは心臓くんが張り切っていたんじゃないだろうか。


 ちょっとだけ。

 この期に及んで怖気づいている。

 やっぱり言わない方がいいんじゃないか、とか。

 言うことで今のままでいられなくなってしまうんじゃないか、とか。

 ああもう、私ってほんとヘタレ……。


「それでは、プレゼント交換の時間です!

 誰のが当たっても、文句言ってはいけないわよ?」

 テーブルの上のご飯の減りがゆっくりになったのを見て、ステラ先輩が切り出す。

 プレゼントは一人2000円まで。

 中身は当然その人のセンスにお任せ、だけど、あまりに変なもの、ナマモノは不可。

 私は無難にミニクリスマスツリー(電池入れるとちゃんと光ったり回ったりするやつで、可愛かった)にした。


 プレゼントの包装に番号が振られていて、くじ引きで何が当たるか決定する仕組みらしい。

「誰から引く?」

 ガサガサ、と、くじの入った箱を振りながら聞かれる。

 トップバッターはちょっと……と尻込みしていると、

「んじゃ、俺から行こうかな!」

と、トラ先輩。

「トラ、あなたは一番先輩なんだから後にしなさい」

「なんだよー。

 みんなお見合いして動かないからいいじゃんかよー」

 夫婦漫才が始まってしまった。

「あはは、トラ先輩からでいいと思いますよ」

「お、すばるちゃんいい事言う!」

「ありがとうございます」

 こういう時に場の空気を変えることができるのってすごいなぁ、って思う。

 別に引く順番でどうこうなるものでもないしね。

「てことで、すばるちゃんから引いてな!」

「……へ!?」

 って思ってたら、なぜかご指名が。

「ほらほら、はーやくー!」

 おかしい、トラ先輩からで、って言ったばっかりなのになんで私?!

 なんて思ってる間に、後ろから押されて箱の前に立たされてしまった。

 ま、まぁ、うん。

 別に引く順番でどうこうなるものでもないしね!!


「えいっ!!」


 勢いよく引いた番号は……『7』。

「お、ラッキーセブンじゃーん!」

 後ろで覗き込んでいたトラ先輩が読み上げて、プレゼントの山から7番を持ってきてくれた。

「やったねすばるちゃん。

 7番は、俺からだ!」

「わ、ありがとうございますー!」

 手渡された箱は小さめの箱だった。

 ケイ先輩のでなくて残念、とかちょっと思ってしまったけど(トラ先輩ごめんなさい!)。

「開けていいですか?」

「もちもち!」


ガサガサッ


 キレイな包装紙だったので、破れ内容に丁寧に開けていく。

 すると、これまたキレイな箱が出てくる。

 中には、

「シャーペン??」

「そそ、キレイだろー?」

「はい、とっても!!!」

 自分で買うことはなさそうなちょっとおしゃれなシャープペン。

 なんだか、勉強ができそうな気がしてくる。


「んじゃ、次はー……すばるちゃん、指名して!!」

「え!?

 えっと……じゃあマキちゃん!」

「うわ、私かー」


 そうして、指名制となったプレゼント交換会はつつがなく進んでいく。

 番号を引き、その番号のプレゼントを選んだ本人が直接手渡す方式まで引き継いで。


 ちなみに。

 ケイ先輩のプレゼントは、かのちゃんがゲットしていた。

 カップとソーサーのセット。

 ……アレで飲むお茶は美味しそうだなぁ。



「あれ、ケイ先輩は?」

 ふと気がつくと、部室の中からケイ先輩の姿が消えていた。

「そういえば、結構前にお手洗い行く、って言ってから戻ってきてないかも」

「具合悪いのかな?」

 マキちゃんが言うには、10分以上経っているんじゃないかな、とのこと。

「ちょっと心配なので見てくる」

「おねぇ、上着着てった方がいいかも」

「うん、ありがと。

 あ、ケイ先輩のも持ってっとこう」

「それがいいかも」


ガラガラッ


 茶色のふかふかのダッフルコートを持って外に出る。

「あれ?」

 探すまでもなく、ケイ先輩はそこにいた。


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