番外編6 例えばこんな
3/14 9:00に少しだけ加筆修正しました。
内容自体には変更はないですが、若干描写を追加した感じです。
夜のうちに見ていただいた皆様すみません……。
プシュー
小気味良い音を立てて電車のドアが開く。
ホームに降りると聞こえてくるのは軽快な音楽。
所々にイルミネーションが光り、街はすっかりクリスマスムードだ。
見上げた先の時計は、17時45分を指している。
うん、待ち合わせまでまだ余裕がある。
ちょっと慣れない靴を履いてきてしまったので、できるだけゆっくり歩きたいのでよかった。
と、思ったのに。
階段を降りた先には見慣れた人影が。
慌ててもう一度時間を確認したけど、駅の時計も私の時計も、狂っているわけでも止まっているわけでもなかった。
単に、相手が早く着いていただけ。
たまには私のほうが早く着いて待っていたいなぁ、なんて思うけれど。
どうしても洋服に悩んでしまうからギリギリになってしまう。
だから今日みたく待ち合わせ15分前というのは私としてはかなり優秀なのだ。
けど……ってことは、もしかしていつもこんなに早くから待っててくれているってこと??
「ケイせんぱーい!」
柱に寄りかかって文庫本を読む姿は、とても絵になるなぁ、なんて思って眺めていてもしょうがないので声を掛ける。
「あら、すばる。
今日は早かったわね」
私の声に、本から顔をあげにっこりと微笑む先輩。
って、すばる??
聞き間違えたかな?
「ふっふっふー。
私だってやればできるんですよ?」
なんて、威張るようなことではないんだけど。
「ふぅん……?」
けれど、そんな私を上から下まで流して見た先輩は、
「なるほど……その靴、可愛いわね」
とヒトコト。
「今日のために新調しちゃいました!」
「よく似合ってるわよ。
でもそうね、そうしたら今日は少しゆっくり歩きましょうか」
「はーい」
こういったちょっとしたことでも気がついてくれる所、本当に好きだなぁ。
「ほら、行くわよ」
そうして私たちは手をつないで歩きはじめた。
あれ?
いやいや、なんかすごく自然すぎてスルーしかけたけど、私達ってこんな風に手をつなぎながら歩いたっけ?
「えっと……ケイ先輩?」
「どうしたの? すばる?」
あ、またすばる。
「その……ケイ先輩って、私のこと『すばる』って呼んでましたっけ?
『すばるん』って呼ばれていた気がしたんですけど……?」
「ふふふ、懐かしいわね、その響き。
でも、そんな風に呼んでいたのは、高校の時じゃない」
ギモンをぶつけてみたものの、先輩の答えはなんか噛み合わない。
「高校の時、って今も高校生じゃないですか」
「いつまでも若いつもりでいるのはいいけれど、もう卒業してから5年は経つんだから、女子高生って主張するには無理があるわよ」
「5年!?」
ちょっとまって、どういうこと?!
「……ほんと、どうしたの?
もしかして体調悪い?
今日はデートやめて家でゆっくりする?」
へ? ケイ先輩とデート?
家でゆっくり?
全くもって状況についていけない私の目に、先輩の左手薬指に光る指輪が目に入る。
そして、同じ(に見える)デザインの指輪が私にも……。
「え? なにこれ?
先輩、これ!?」
どうしてお揃いなの? とか、どうして左手薬指なの? とか。
聞きたいのに言葉が出てこず、わけのわからないまま先輩の目の前にかざす。
「も、もう、急にやめてよ」
しかし、ケイ先輩は説明をしてくれず(聞いていないんだから当たり前だけど)顔を赤くして私の手を取り、下におろす。
「そ、そりゃあ、私だってすばるとそういう関係になったことが嬉しいけど。
そんな風に見せなくたってわかるわよ……」
赤くした顔のまま、ちょっぴりそっぽを向きながらそんな事を言う。
こちらをチラチラ見る姿は、可愛い……ってそうじゃなーい!
「そ、そういう関係ってなんですか!?」
「……今日のすばるはちょっと意地悪ね……。
私が口にするの照れくさくて苦手だ、って知ってるくせに。
そんなの、こいび――
◇
PiPiPiPiPiPiPiPiPi……
ぼんやりした頭に、ゆっくりと意識が浮上してくる。
ゆっくり目を開けると、目の前に天井。
外から差し込む日差しはまだない。
あれ? 先輩は?
それに、さっきから鳴っているこの音なんだろう。
せっかくいい雰囲気だったってのに、うるさいなぁ。
PiPiPiPiPiPiPiPiPi……
発生源を探して手を動かすと、何やら硬い感触が手に当たる。
それを掴んで眼の前に持ってくる。
目に入ってきたのは『5:30』と表示されているスマホだった。
……あ、これ、スマホのアラームか。
ピッ
音を止めるボタンをタップして止める。
…………、
ああああああああああああ!
さっきのって夢かああああああああ!!!!
うっわなにそれ、私の願望ってこと!?
おそろいの指輪を左手薬指に、って、もう明らかにアレだよね! アレ!
って!
そうじゃない!
いや、そうじゃなくないかもしれないけど、とりあえず置いといて!
このまま恥ずかし転がりしてたら時間がなくなっちゃうよ。
下の段で寝ているなゆを起こさないように、そっとベッドを降りて着替えを手に1階へ降りる。
「おかあさーん、おはよ~~~」
「はいはいおはよう。
顔洗って着替えてらっしゃい」
「ふぁわあああい」
あの早く目が覚めてしまった日依頼、毎朝お手伝いをすることになっていた。
私の担当は、今の所卵焼きだけだけど、最初と比べたらだいぶ上手になったと思う。
なんてったって、お弁当のおかずとして採用されるようになったくらいだもの。
パシャッ
洗顔をして制服に着替えて。
ハンガーにかかっているエプロンをして台所へ戻る。
「よし、そうしたら、今日も卵焼きお願いね」
「はーい!」
もっと上達したら、いつかケイ先輩にも食べてもらえるといいな!
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