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流れ星を手のひらに  作者: ただみかえで
番外編 その5、6
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86/134

番外編6 例えばこんな

3/14 9:00に少しだけ加筆修正しました。

内容自体には変更はないですが、若干描写を追加した感じです。

夜のうちに見ていただいた皆様すみません……。

プシュー


 小気味良い音を立てて電車のドアが開く。

 ホームに降りると聞こえてくるのは軽快な音楽。

 所々にイルミネーションが光り、街はすっかりクリスマスムードだ。


 見上げた先の時計は、17時45分を指している。

 うん、待ち合わせまでまだ余裕がある。

 ちょっと慣れない靴を履いてきてしまったので、できるだけゆっくり歩きたいのでよかった。


 と、思ったのに。

 階段を降りた先には見慣れた人影が。

 慌ててもう一度時間を確認したけど、駅の時計も私の時計も、狂っているわけでも止まっているわけでもなかった。

 単に、相手が早く着いていただけ。

 たまには私のほうが早く着いて待っていたいなぁ、なんて思うけれど。

 どうしても洋服に悩んでしまうからギリギリになってしまう。

 だから今日みたく待ち合わせ15分前というのは私としてはかなり優秀なのだ。

 けど……ってことは、もしかしていつもこんなに早くから待っててくれているってこと??


「ケイせんぱーい!」

 柱に寄りかかって文庫本を読む姿は、とても絵になるなぁ、なんて思って眺めていてもしょうがないので声を掛ける。

「あら、すばる。

 今日は早かったわね」

 私の声に、本から顔をあげにっこりと微笑む先輩。

 って、すばる(・・・)??

 聞き間違えたかな?

「ふっふっふー。

 私だってやればできるんですよ?」

 なんて、威張るようなことではないんだけど。

「ふぅん……?」

 けれど、そんな私を上から下まで流して見た先輩は、

「なるほど……その靴、可愛いわね」

とヒトコト。

「今日のために新調しちゃいました!」

「よく似合ってるわよ。

 でもそうね、そうしたら今日は少しゆっくり歩きましょうか」

「はーい」

 こういったちょっとしたことでも気がついてくれる所、本当に好きだなぁ。

「ほら、行くわよ」

 そうして私たちは手をつないで歩きはじめた。


 あれ?

 いやいや、なんかすごく自然すぎてスルーしかけたけど、私達ってこんな風に手をつなぎながら歩いたっけ?

「えっと……ケイ先輩?」

「どうしたの? すばる?」

 あ、またすばる(・・・)。

「その……ケイ先輩って、私のこと『すばる』って呼んでましたっけ?

 『すばるん』って呼ばれていた気がしたんですけど……?」

「ふふふ、懐かしいわね、その響き。

 でも、そんな風に呼んでいたのは、高校の時じゃない」

 ギモンをぶつけてみたものの、先輩の答えはなんか噛み合わない。

「高校の時、って今も高校生じゃないですか」

「いつまでも若いつもりでいるのはいいけれど、もう卒業してから5年は経つんだから、女子高生って主張するには無理があるわよ」

「5年!?」

 ちょっとまって、どういうこと?!

「……ほんと、どうしたの?

 もしかして体調悪い?

 今日はデートやめて家でゆっくりする?」

 へ? ケイ先輩とデート?

 家でゆっくり?


 全くもって状況についていけない私の目に、先輩の左手薬指に光る指輪が目に入る。

 そして、同じ(に見える)デザインの指輪が私にも……。

「え? なにこれ?

 先輩、これ!?」

 どうしてお揃いなの? とか、どうして左手薬指なの? とか。

 聞きたいのに言葉が出てこず、わけのわからないまま先輩の目の前にかざす。

「も、もう、急にやめてよ」

 しかし、ケイ先輩は説明をしてくれず(聞いていないんだから当たり前だけど)顔を赤くして私の手を取り、下におろす。

「そ、そりゃあ、私だってすばるとそういう関係になったことが嬉しいけど。

 そんな風に見せなくたってわかるわよ……」

 赤くした顔のまま、ちょっぴりそっぽを向きながらそんな事を言う。

 こちらをチラチラ見る姿は、可愛い……ってそうじゃなーい!


「そ、そういう関係ってなんですか!?」

「……今日のすばるはちょっと意地悪ね……。

 私が口にするの照れくさくて苦手だ、って知ってるくせに。

 そんなの、こいび――


◇


PiPiPiPiPiPiPiPiPi……


 ぼんやりした頭に、ゆっくりと意識が浮上してくる。

 ゆっくり目を開けると、目の前に天井。

 外から差し込む日差しはまだない。


 あれ? 先輩は?


 それに、さっきから鳴っているこの音なんだろう。

 せっかくいい雰囲気だったってのに、うるさいなぁ。


PiPiPiPiPiPiPiPiPi……


 発生源を探して手を動かすと、何やら硬い感触が手に当たる。

 それを掴んで眼の前に持ってくる。


 目に入ってきたのは『5:30』と表示されているスマホだった。


 ……あ、これ、スマホのアラームか。


ピッ


 音を止めるボタンをタップして止める。


 …………、

 ああああああああああああ!

 さっきのって夢かああああああああ!!!!

 うっわなにそれ、私の願望ってこと!?

 おそろいの指輪を左手薬指に、って、もう明らかにアレだよね! アレ!


 って!

 そうじゃない!

 いや、そうじゃなくないかもしれないけど、とりあえず置いといて!

 このまま恥ずかし転がりしてたら時間がなくなっちゃうよ。


 下の段で寝ているなゆを起こさないように、そっとベッドを降りて着替えを手に1階へ降りる。

「おかあさーん、おはよ~~~」

「はいはいおはよう。

 顔洗って着替えてらっしゃい」

「ふぁわあああい」


 あの早く目が覚めてしまった日依頼、毎朝お手伝いをすることになっていた。

 私の担当は、今の所卵焼きだけだけど、最初と比べたらだいぶ上手になったと思う。

 なんてったって、お弁当のおかずとして採用されるようになったくらいだもの。


パシャッ


 洗顔をして制服に着替えて。

 ハンガーにかかっているエプロンをして台所へ戻る。

「よし、そうしたら、今日も卵焼きお願いね」

「はーい!」

 もっと上達したら、いつかケイ先輩にも食べてもらえるといいな!


いつも応援ありがとうございます★

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