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流れ星を手のひらに  作者: ただみかえで
第9章 生徒会選挙
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第78話 引継と引退

 翌日。

 再び体育館に全員集まって、選挙結果の発表と引継式が行われた。


「第34代生徒会長、冷水(ケイ)!」

「はいっ!」

 学園長の声に、大きな声で返事が響く。

 予め脇に控えていた所から、壇上で待っているトラ先輩の元へとケイ先輩が歩いていく。

 始まる前、学園長先生から、

「あなたのお披露目も兼ねているから、あまり早く歩かないようにね」

と言われていたので、とてもゆっくりだ。


 ちなみに。

 相も変わらず司会役を仰せつかってしまった私も壇上である。

 ……なんか、このままこういうポジションに落ち着きそうで怖い。


 みんなからの注目を浴びながらケイ先輩はステージに上がる階段までやってきた。

 顔を見ると、さすがに緊張しているのかちょっと強張っていた。

 ふと、目が合う。

(大丈夫ですよ!)

と念を送ってみたら、にっこり、と少し硬いながらも笑顔を見せてくれた。

「見ててね」

 通り過ぎる時に一言。

 はい、しっかりと目に焼き付けておきます!


「私、根本エレクトラより、冷水慧へ。

 この生徒会長章を引き継ぎいたします。

 これからの学園をお願いします」

「はい、あなたが支えてくださった学園を、私なりの力で支えて行きたいと思います」


ぱちぱちぱちぱち


 大きな拍手が湧き上がる。

 生徒会長章というのは、小さなピンバッチだ。

 制服に縫い付けられている校章と同じデザインで、少しだけ周りに装飾が施されている。

 トラ先輩は絶対どっかで落とすから、という理由でしまいこんでいたらしく。

 いざ引き継ぎってなった時に見つからなくて大変だった。

 最後は、ステラ先輩のカバンの中から見つかったんだけど、なんでそんな所にあったのか謎だった。

 おおかた「ステラならなくさないだろう」とか思って勝手に入れたんじゃないか、との話だったけど。

 入れたはずのトラ先輩が覚えていなかったので、真相は闇の中だ。


「つ、続いて、新生徒会長よりの挨拶です」

 拍手がおさまってきたタイミングで次の次第へ進む。

 トラ先輩は拍手の間にすでに壇上から降りてしまっており、今残っているのは司会の私とケイ先輩、学園長のみだ。


「みなさまこんにちは。

 新しく生徒会長となりました、冷水慧です。

 諸先輩方に今後も学園OGであることを誇りに思ってもらえる学園となるよう、できうる限り尽力いたしますのでよろしくお願いします!」


パチパチパチパチ!!


 再び大きな拍手。

 短い挨拶ではあるけど、先日の立候補者演説と合わせてすごく人柄の出る内容だと思う。


「次に、新生徒会役員の発表です。

 冷水新会長、お願いします」

 ステージ中央の先輩に向けて目で合図を送る。

 他の役員を決めるのは、新生徒会長が行う一番最初のお仕事だ。

 といっても、これといったサプライズもないので、淡々としたものだけど。


「はい。

 それでは発表いたします。

 まずは、副会長。

 早乙女純佳!」

「はいっ!」

 フロアの中で大きな声で返事をし、立ち上がる。

 と、同時に巻き上がる歓声。

「みなさまご存知の通り、先日の選挙戦では私とほとんど票差のなかった彼女です。

 これまで広報として生徒会に属していましたが、今後はより一層活躍をしてもらえればと思います」


「二人目は、会計兼書紀、星空なゆた!」

「はいっ!」

 スミカ先輩から離れた場所でなゆが立ち上がる。

「こちらも前生徒会から参加してもらっています。

 裏方の仕事がメインとはなりますが、非常に優秀ですので、私を助けてもらえればと思っています」


「いずれ4人目をお願いするかとも思いますが、ひとまずはこの3人が新生徒会役員となります」


 会場でどよめきが起こる。

 私もさっき聞いて同じ感想だったので、気持ちはよくわかる。

 確かに、うちの学校はイベントごとに委員が組織されているので、生徒会は「統括」的な立ち位置になる。

 だから少数精鋭でなんとかなる、との話だ。

 とはいっても、(いくら優秀とはいえ)さすがに3人は少なすぎるとは思う。

 ……って言ったら

「じゃあ、すばるんやってみる?」

と言われてしまった。

「いやいやいやいや、さすがにそんな『お茶していく?』みたいなノリで生徒会に誘わないでください。

 お手伝いならしますけど、私は役員ってガラじゃないですよ」

とお断りしてしまった。

 いつもケイ先輩と一緒なのは嬉しいけど、あの(・・)選挙を見たあとでは、なんとなくでやってはいけないような気がしちゃって。

 それに、せっかく復活した天体観測部も盛り上げていきたいしね。

 来年以降、新入生とか入ったら、星空観察会とかもやりたいなぁ……。


「最後に、学園長からのお言葉です」



 そうして、つつがなく引継式は終了した。

 その後生徒会室で簡単な打ち上げをすることになった。


 入学式にトラ先輩に拉致られてからここまでおよそ半年。

 ほんといろんな経験をさせてもらったと思う(まさかファーストクラスで沖縄に行くことになるなんて思わなかったよ)。

 今日でトラ先輩とステラ先輩は生徒会を引退するけれど、別に学校をやめるわけではないし。

 寂しいけれど、こうやって時間は流れていくんだなぁ……。


「トラ先輩、ステラ先輩。

 短い間でしたけど本当にありがとうございました!!!」

「すばるちゃん、生徒会役員でもないのにいっぱい色んなこと手伝ってもらっちゃって、こっちこそありがとね」

「ほんと、すごく働き者だから助かったわ」

「い、いえ、そんな」

 お礼を言いに行ったら、なぜか逆にお礼を言われてしまった。

「いっそ役員になればよかったのに」

「えへへ、私はお手伝いさんでいいんです」

「ふぅむ、ま、いっけどよ。

 ケイのやつ、ほっとくと自分で抱え込むクセあるから、ちょっと見ててやってくれな」

「はいっ!」

 思わず元気よく返事をしてしまったら、


 支える、か。

 私にとってのなゆのように、先輩にとって安心できる存在になれるといいな。

 ちらっと端の方で学園長とお話しているケイ先輩を見ると、ちょうどこちらを見ていたらしく不思議そうに見られてしまった。

 なんでもないです、って口の動きだけで応えたけど伝わっただろうか……。




「んじゃ、あとは頼んだぜ!」

「引退といっても、まだ学校にはいるから何かあったら相談してね」

 そう言い残して、あっさりとお二人は引退していった。


いつも応援ありがとうございます♪

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