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流れ星を手のひらに  作者: ただみかえで
第9章 生徒会選挙
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第77話 新生徒会長

「これで、最後」

 集められた投票箱の最後の一箱から最後の票が取り出される。

「えっと、ふふ……最後はスミカね」

 スミカ先輩の名前に○のついた用紙を広げて、ケイ先輩が笑う。

 それを見て、なゆがホワイトボードに正の字を一本書き足す。


 すべての開票作業が終了した。

 結果は――

「おめでとう、ケイ」

「ありがと、スミカ」

 ケイ先輩の当選。

 でも、スミカ先輩との票差はわずかで、かなりの接戦だった。

「途中もしや!? って思ったけど、やー惜しかったなー」

 ホワイトボードを見ながら、トラ先輩が言う。

 確かに、途中まではスミカ先輩の方がリードしていたのだ。

「うん、でも……これは、ケイが積み上げてきたものだと思うから。

 結果は残念だったけど、やっぱりボクは頑張ってみてよかった、って思います」

「私も、スミカのおかげで色々わかったことがあるし。

 選挙やってよかった。

 ありがとうね」

「えへへ」

 ケイ先輩とスミカ先輩が握手する。

 なんかいいなぁ、こういうの。


 それにしても、

「候補者自ら開票するのって、どうなんですか?」

 そうなのだ。

 私が司会を仰せつかったのと同じ理由で、選挙管理委員会がいないせいで開票作業をする人手がなく、結局生徒会総出で開票するはめになったのだ。

 生徒会総出……そう、つまり、スミカ先輩とケイ先輩も自分で自分の票を数えることになっていた。

「やー、悪いなー、とは思ったんだけどさー。

 さすがに俺とステラと星空姉妹だけでは集計が終わる頃には日が明けてしまうからな」

「ごめんなさいね。

 最後の最後に後輩たちに迷惑をかけてしまったわね」

 最後……そっか、新生徒会長が決まった時点で、もう先輩たちは引退になるんだ。

「おねぇ……」

 妙にしんみりしてしまっていると、なゆがそっと手を握ってくる。

 見ると同じようにちょっとうるっとしてる。

 ふふふ、やっぱり私たちは双子なんだなぁ、ってなんかよくわかないことを思ってしまった。


「なんにしても、来年以降は選挙の有無に関わらず選挙管理委員会は組織した方がいいかもしれないわね」

「ええ、そうですね。

 来年度に向けて、その辺も調整しないといけませんね。

 すばるん、ちょっとそこのノートとってくれる?」

「あ、はい」

 なんだかしんみりしていた所に声をかけられて、ちょっとびっくりしてしまった。

 すでにお仕事モードなのはさすがだ。

 えーっと、ノートノート……これかな?

「はい、どうぞ」

「ありがと」

 受け取るなりケイ先輩は色々と書き込み始める。

「ちょっとちょっと、ケイ。

 さすがに今日は仕事してないで帰ろうよ」

「そ、それもそうね。

 つい……」

 ぱたんとノートを閉じて立ち上がる。


 ん?

 なんか、変?


 何が、と言われるとわかんないけど、いつものケイ先輩らしくないというか……?


「と、とりあえず。

 今日はこれで終わりましょう。

 片付けも……明日でいいわね」

 そう言うと、パタパタとカバンに筆記用具などを入れていく。

「っとに、ケイってば仕事の鬼だな」

「ふふふ、スミカにも頑張ってもらわないとね?」

「お、おう、程々に頼むよ」

「考えておくわ」

 そう言ってあげた顔はいつものケイ先輩だった。


 あ……。


 そっか、そうだよね。

 私が寂しいんだもん、もっと長く一緒にいたケイ先輩が寂しくないわけないよね。


 一瞬、目の端が光ったように見えたのは、きっと私と同じ理由だと思う。


「せーんぱい」

「ひゃっ、な、なに?

 どうしたのすばるん?」

「んーと……」

 しまった、勢いよく声かけたまではいいものの、そこから先花にも考えていなかった。

 ……って、そういえばいつもこうだな、私。

「なんというか、何も考えてませんでした、あはは」

「なにそれ、もう」

 でも、それで先輩が笑顔になるならいいか。

「あ、そうだ。

 もうコンビニで肉まん出てましたよ!

 食べて帰りません?」

「あら、いいわね」

「肉まん!

 いいね、ボクもいく!」

「おねぇ、私はあんまんがいい」

「え、ちょっとなゆ?

 別に奢るとは言ってないよ?」

「なになに? すばるちゃんのおごりなの?

 やった、じゃあ俺は――」

「あらそうなの? なら私は――」

「ちょっとちょっと、トラ先輩、ステラ先輩!

 お二人まで!」

「あはは」


 もうほんっと、しんみりしてる場合じゃないね。



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