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流れ星を手のひらに  作者: ただみかえで
第8章 文化祭
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第61話 取り立て

「戻りましたー」

 生徒会室(兼今は文化祭実行委員室)に戻ると、ケイ先輩しかいなかった。

 ちょうど一段落してた所なのかな?

 お茶を淹れ直そうと、お湯を沸かしているみたいだった。

「おかえりなさい、すばるん。

 時間かかってたみたいだけど、なにか問題あった?」

「あ、すいません。

 スミカ先輩がちょうど舞台で練習するから見てって、というので見てきちゃいました。

 撮影に関してはOKです!

 プリント渡したので、調整して連絡くれるそうです」

「ありがと」


「はい、紅茶でよかったわよね?」

「ありがとうございます」

 ホワイトボードの『パンフレット撮影』と書いてあるところに『日程連絡待ち』と書いていると、ケイ先輩が両手にマグカップを持って机に戻ってくる。

 他の実行委員の子たちは紙コップだけど、私のはちゃんとしたマグカップ。

 ちょこちょこお手伝いに来ている間に私専用になった、黒猫の書いてあるものだ。

 先輩のはシンプルな水色の無地。

 学校ではあの『ゆるいキャラ』のグッズは使っていないんだよねぇ。

 家にはあんなにあるのに。

「ん? どうかした?」

「あ、いえ。

 かわいいマグカップ使えばいいのにー、って思っただけです」

「だから、前も言ったけどあれは家用なの」

 ちょっとだけ顔が赤くなる。

 照れてる先輩は可愛い。

「もう、先輩をからかうもんじゃありません!」

 にやにやしてたら、つん、とおでこをつつかれてしまった。

「ごめんなさーい」


「それで。

 スミカはちゃんとやってたの?」

 椅子に座るなり書類に目も通さずに聞いてくるところを見ると、結構心配してるみたいだ。

「直接聞いても、大丈夫、としか言わないのよね。

 あの子の大丈夫はあんまりアテにならないから……」

「……なんかケイ先輩、スミカ先輩のお母さんみたいですね」

「ちょっとやめてよ、スミカが娘とか冗談じゃないわ……」

「あはは。

 でも、本当に大丈夫そうでしたよ。

 さすが書き下ろしって感じで、はまり役でしたし。

 それに、相手役の部長さんがめちゃくちゃ上手だったので、うまくリードしてくれてました」

「部長って言うと……ああ、柚子先輩ね。

 あの人が相手役なら安心だわ」

 肩の荷がおりたのか、ふっと表情がゆるむ。

「そんなにすごい人なんですか?

 いや、実際すごいところは見てきましたけど」

 動きも声のトーンも間のとり方も、素人の私でさえ別次元に感じたくらいだし。

「スゴイわよ。

 しかも、高校に入るまで演劇なんてしたことない、って言うんだから……才能の塊ね」

「え、元々やってたんじゃないんですか!

 スゴイなぁ……」

 やっぱり、今度サインもらってこようかな。


「あ、それと。

 衣装もすごかったです。

 あれが表紙になったら、って考えるとワクワクしちゃいます」

「ふふふ。

 そうなると、一般抽選分がますますプレミアムチケットになりそうね」

「ですねー」

 チケット管理班の方から悲鳴が聞こえてきそうだ……。


 よし。

 お茶も飲み終わったし、お仕事再開しよう。

「この後は何をしたらいいですか?」

 とりあえず、机の上に散らばった書類を集めながら聞いてみる。

「そうねぇ。

 パンフレットに乗せる部活ごとのアピール記事を整理しちゃいましょうか。

 提出締切が昨日だったんだけど、たぶんまだ提出してない所があると思うし」

「はーい」


 パンフレットには地図とは別に、自分たちの出し物をアピールする記事が載せられる。

 1ページに4グループ分、それぞれ小さな紙に書かれたものを集めて校舎内の位置に従って並べ替えるのだ。

 パンフレット作成班、がいないために会計班がやることになっている。

 スポンサーさんや印刷所さんとのやり取りにはお金も絡むので、ってことらしい。


「えーっと。

 バスケ部、ソフトボール部、卓球部、水泳部……」

 予め割り付けのされた台紙に各部活からの用紙を仮止めしていく。

「スポーツ吹き矢部とカバディ部はこっちか……」

 最初に部活を探した時にも思ったけど、ほんといろんな部活があるなぁ。

「お、漫画部と漫画研究部とアニメ研究部とイラスト部は、みんな絵が上手だなぁ。

 このキャラってあれだ、この間友達から借りた漫画のキャラだ。

 あれ? でも漫画のキャラだけど、アニメ研究部の方だ。

 アニメになってたっけか?

 うーん……それぞれの違いがよくわかんないな……」

「ああ、そこ?

 元々漫画部だったんだけど、漫画を描きたい人と漫画を読みたい人とアニメが好きな人とイラストを描きたい人、がそれぞれ独立したのよ。

 全部違う部だけど、部室は一つなのよ」

「へぇ……え? それって独立する必要あったんですか!?」

「ないんだけどねー。

 トラ先輩が『面白いからいいんじゃね?』って言って許可しちゃったのよ」

「なるほど……」

「しかも、うちってほら、兼部も可でしょ?

 だから、部は4つだけど実質10人くらいしかいなくて……」

「……本当に、独立する意味ないですね……」

「ほんとそう……。

 他にもそういう所がいくつかあるから、管理がめんどくさいしいつか統廃合したい所ね……」

 そう言って遠くを見つめるケイ先輩の顔には、ノリの良い上司に苦労させられる部下、って感じの悲哀がにじみ出ていた……。


 それから1時間。

 一通り集まったアピール記事を配置し終わり、未提出の部活のリストアップが終わった。

 ……10箇所もある……。

 はぁ、しょうがない。

「ちょっと取り立てに行ってきますねー」

「あ、今日中に出せなければ、名前だけこっちで入れるから、って言っちゃっていいからね」

「はーい!」


 今日も帰りは夜遅くなりそうだ。


いつも応援ありがとうございます♪

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