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流れ星を手のひらに  作者: ただみかえで
第8章 文化祭
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第60話 舞台の上

「では次!

 王女の登場シーンいきます!!

 早乙女さん、お願いします!!」

「うん、任せて」


 衣装を脱いで体操服姿になったスミカ先輩が舞台に上がる。

 どうでもいいけど、そういえば早乙女って名前だったっけ、なんてことを思い出す。

 前に本人も言ってたけど、『乙女』のイメージはないよなぁ……。


「始めてください!」


パンッ!!


 大きく手を叩く音で、ガラッと雰囲気が変わる。

「ふぅ、やれやれ。

 お嬢様方には困ったものだ」

 少し後ろを振り返るようにしながら、スミカ先輩のセリフが始まる。

 ファンの女の子から逃げてみた、みたいな感じかな。

「それは、あなたが愛想を振りまくからではなくて?」

 すると、今度は舞台の逆側から一人の女の人が出てくる。

 キッと釣り上がった目に強気そうな表情。

 『王女の登場シーン』って言ってたから、これが王女さまかな?

 王子さまに突っかかってくる感じっぽいな。

 強気幼馴染ってとこか。

 ふわっとウェーブのかかった髪を勢いよくかきあげ、その手は腰に当てられる。

「いつも言っているけれど、その軽薄な態度を改めないといつか痛い目を見ますわよ?」

 口調はキツイし、言い方も強いけど。

 なんとなく王子を心配していることが伝わってくる。

 演劇のことは詳しくないけど、めちゃくちゃ上手なんじゃないだろうか。

 すごく吸い込まれる演技だ。

 衣装も着ていないしセットも何もないけれど、どこかのお城の庭が見えてくるようだ。

「デネボラ、そう怖い顔をしないでおくれよ。

 美しい顔が台無しだ」

 お構いなし、といった感じで王女の手を取ろうとする王子。

 後ろに星がキラキラと舞っているかのようだ。


 ……王女さま役の人と比べるとさすがに可愛そうではあるけど、でも思った以上にスミカ先輩の演技は自然だった。

 若干演技過剰な気がしなくもないけど、きらびやかな王子様ってことでマイナスにはなってない。

 ある意味『いつもどおり』だしね。

 スミカ先輩のために書き下ろしたって言ってし、よく見ているんだろうな。

 そんな事を考えている間も、舞台上の時間は進んでいく。


「スピカ……?

 わたくしは怒っているんですのよ?」

 手を取られたことで、怒った顔が少し緩んだけれど、それを取り繕ったまま続ける王女。

「わかっているさデネボラ。

 ボクを心配してくれているんだろう?」

 握った手をくいっと引き寄せ、そんなに近くなくても!? ってくらいに顔を近づけて王子がささやく。

「だ、誰があなたの心配なんか!」

 けれど、王女はその手を勢いよく振り払い、

「いっそ誰かに刺されてしまえばいいのですわ!!」

と言って、出てきた舞台袖へ走り去っていってしまった。


パンッ!


「はいっ! オーケーです」

 手を叩く合図で、再び現実に。

 袖からは王女役の人も戻ってきてスミカ先輩の横にならぶ。


「早乙女さんもだいぶよくなってきたわね。

 ただ、相手がいるときの動きはもう少し大きく!

 独り言を言っている所としっかりギャップを出すように!」

「はい!

 えっと、こんな――」

 そう言うと、スミカ先輩は王女役の人と向き合うと、ふわっと腕を軽く上に上げてから円を描くように下ろし、そのままの流れですくい上げるように王女役の手を取る。

「――感じでいいですか?」

「……うん、いいわ、そのくらいやっちゃって!」

「はい!」

「柚子は完璧。

 いつもどおり、さすがね」

「ありがと」


 ……うん。

 まさか、とは思ってはいたけど、やっぱりあの王女さまが部長さんだったか……。

 さっきスミカ先輩が『ボクと部長が舞台にあがる』って言って、二人しかでこないってことは……? って思ってはいたけれど。

 あの『ザ・委員長』って感じの物腰の柔らかいお嬢様が、あんなに変わるんだ……。

 涼やかな声も、凛とした雰囲気で役に合っていたし。

 すごいなぁ……。



「では次!」

 舞台上では次のシーンの稽古が始まる。

「どうだった? すばるちゃん」

 出番が終わったスミカ先輩は、一旦帰ってきていた。

「すごかったです」

「……ふっふっふ、だろ?

 合宿から帰ってきてから、ずっと稽古してたからね!」

「あ、はい。

 スミカ先輩が思ったよりちゃんとしてたのもすごかったですけど、それ以上に部長さんすごすぎました」

「ああ、あれな。

 すごかったでしょ?

 ボクも始めて見たときはびっくりしてセリフ忘れて固まっちゃったくらいだからね。

 あの人はいつか大物になるよ」

「私もそう思います」

 今のうちにサインもらっておいたほうがいいかな?


「じゃあ、私は生徒会室に戻りますね」

「おー、ケイによろしく言っといて」

「はーい。

 スミカ先輩も稽古がばって下さい。

 それと、撮影もよろしくお願いしますね」

「うん、ありがとうー」


ゆるっとウェーブは、三つ編みのおかげです(笑)


いつも応援ありがとうございます★

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