表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
流れ星を手のひらに  作者: ただみかえで
第8章 文化祭
64/134

第59話 演劇部

 そういえば。

「肝心のスミカ先輩を見ない気がしますけど……」

 あれ? 文化祭実行委員の活動が始まったときっていたっけ?

 さすがに生徒会役員だし、いた……よね?

「スミカなら、演劇部よ?」

「演劇部??

 あー!

 そういえば、合宿のときに言ってましたね!」

「スミカが主役の書き下ろしらしくて、しかも春先にOKしてから半年かけて書いたって話で」

「それは……断れないですね」

「その上」

「まだあるんですか!?」

「もう、衣装まで出来てるらしいの……」

「それは……」

 こんなところで、スミカ先輩お得意の『安請け合い』のツケが回ってくるなんて。

 それにしても、演劇部すごい気合だ。

 よっぽどスミカ先輩がOKしてくれたのが嬉しかったんだろうなぁ。

「そんなわけで、『生徒会が忙しいから』なんて、流石に言えなくてね、そっちメインで動いてもらっているわ。

 広報活動の一貫、ってことで」

「なるほど」

「合宿戻ってから毎日稽古に行ってたわよ」

「ひゃぁ、大変ですね」

「すばるん、あれはね……自業自得っていうのよ」

「あはは、そうですね」


 劇かぁ。

 どんな風になるんだろう。

 スミカ先輩が主役の書き下ろし……楽しみなような怖いような……。


「あ、そしたら、その衣装のまま表紙撮っちゃったらよくないですか?」

「それ、いいわね!」

 舞台衣装、ってことはそれなりに目立つだろうし。

「演劇部の演目を今回の目玉にして……

 さっきも言ったけど、スミカのファンて学外にも結構いるし。

 ……うん、いけそうね」

「じゃあ、その方向で調整しましょう。

 演劇部まで行ってきますか?」

「んー、そうね。

 大枠を決めたらお願いするわね」

「はいっ!」



「こんにちは~」


ガラガラッ


「そこ! セリフはもっとはっきりと!

 それじゃ何言ってるかわからない!」

「はいっ!」

「あと、今の動き出しが半テンポ遅れてる!

 タイミング合ってないと見ててみっともない!!」

「はいっ!!!」


 体育館に入った瞬間、そんな声が響いてきた。

 舞台上では体操服姿で動き回る人たちがいて、舞台下から気迫のこもった指導が飛ぶ。

 他にも部活が練習しているのに、ここまで声が響いてくるのはすごい。

 演劇部ってこんな感じなんだ。

 うちの中学、演劇部なかったしなぁ。

 なんか新鮮。


「あれ? すばるちゃん?

 どうしたの?」

「あ、スミカせんぱ……い?」

「ちょっと、なんで疑問系なのよ」

「だって、制服じゃないから……」

 そうなのだ。

 振り向いた先には、男装の麗人、とでも言うべき王子様衣装のスミカ先輩がいた。

「ちょうどね、細かいサイズ調整をしてたところだったんだよ。

 どう、なかなか似合うでしょ?」

 フリル多めの白いシャツに濃い青のズボン。

 シンプルではあるけど、飾帯やらバラのコサージュやらの装飾が豪華で、まさに王子様って感じ。

 その後ろでは、上着と思わしきものを直している先輩方がいる。

 あの上着もすごいキレイ。

「なんか、見違えちゃいますね」

「お、ついにすばるちゃんもボクの魅力に気づいたかい?

 ふっふっふ、ボクに惚れたら火傷するぜ?」

「そういうのは大丈夫です」

「ちぇ、つれないなー」

「というか、セリフ古くないですか?

 お母さんに見せてもらった昔の少女漫画でしか聞いたことないですよ」

「えー、かっこよくない?」

「残念ながら私にはわかりません」

 そういうのは、仔猫ちゃん達におまかせします。


「で、なんの用?」

「そうでした。

 えっと、文化祭用のパンフレット撮影の件で、部長さんにお願いがあってきたんです」

「部長か……ちょっとまってね」

「はーい」


 そういえば、誰が部長なんだろう?

 やっぱり、さっき大きな声で指導していた人だろうか。

 それとも舞台で一際目立つヒロイン役っぽい人だろうか。

 あれ?

 はたして、スミカ先輩が連れてきた部長さんは、そのどちらでもなく。

 大きなメガネに三つ編みおさげという、それこそお母さんの少女漫画に出てきた『委員長』みたいな人だった。


「おまたせー。

 連れてきたよ」

「部長の手鬼(ておに)柚子(ゆず)です。

 よろしくお願いいたしますわ」

 ……すごい綺麗な声。

 鈴を転がすような声、っていうのかな?

 まさにそんな感じ。

 見た目は(失礼ながら)とても地味だけど……。

 その上、物腰も柔らかいし、良家のお嬢様、って雰囲気。

 本物のお嬢様を見たことがあるわけじゃないけどね。


「よ、よろしくお願いします!

 文化祭実行員の星空すばるです」

「え、すばるちゃん文化祭実行委員だったんだ!」

「……何だと思ってたんですか?」

「ケイの小間使い?」

 ……あながち間違っていないだけに、反論しづらい……。

「どういったご用件でしょうか?」

「えっとですね。

 文化祭のパンフレットの表紙、スミカ先輩をモデルに撮るんですけど。

 できたら、この舞台衣装のままで撮らせてもらえないか、と思いまして」

「ああ、そういうことですの。

 構いませんわ。

 あなたたち? 衣装の手直しは終わりそうかしら?」

「今日中には撮影に耐えられるレベルまでには仕上げてみせます!!」

「そう、お願いしますわね」

 すごいカリスマを感じる……。

 見た目地味なのに……。

「ということらしいので、明日以降であればいつでも。

 ああ、稽古の都合がありますので、事前に日程だけは頂けると助かりますわ」

「あ、それなら」

 ケイ先輩から託されていた、撮影候補日のプリントを差し出す。

「カメラマンさんの都合と、印刷のスケジュールの兼ね合いで、このうちのどれかでお願いしたいそうなんですけど」

「ふむ……これ、頂いてよろしいかしら?」

「もちろん」

「調整したら、改めてご連絡いたしますわ。

 生徒会室でよろしいかしら?」

「はい、お願いします!

 あ、一応私の携帯の番号も教えておきますね」

「では、番号の交換をいたしましょう。

 取ってまいりますので、少々お待ち下さいな」


「なんというか、すごい優雅な感じの方ですね」

 あるく姿まで優雅だ。

「ん? ああ、部長ね。

 ふっふっふ。

 すばるちゃん、この後まだ時間ある?」

「早めに戻らないとですけど、ちょっとなら」

「この後の練習で、ボクと部長が舞台にあがるからさ。

 ちょっと見ていってよ」

「おお、それは見たいですね!」


いつも応援ありがとうございます★

気に入っていただけたら、評価やブックマークをお願いします★

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ