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流れ星を手のひらに  作者: ただみかえで
第8章 文化祭
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第58話 パンフレット

 それからの毎日は目まぐるしかった。

 ケイ先輩と二人でがんばるぞー! なんて思ったのも束の間。

 3日目には、文化祭実行委員に立候補したことを後悔しそうになったくらいだ。

 ケイ先輩と一緒の担当でなかったら、絶対挫けてたよ……。


 うちは『女子校』ということもあって、誰でもウェルカム! ってわけにもいかず、来場するためにはチケットが必要となる。

 チケットといっても、コンサートや観劇のチケットみたく売っているわけではないので、何らかの方法で手に入れるしかない。


 その方法は4つ。

 一つ目は、生徒からチケットをもらうこと。

 生徒一人に5枚のチケットが配られるので、直接受け取ることで入手できる。

 なので、基本は直接の知り合いや親族に限られる。

 うちみたく姉妹で通っていたり、色々な事情で5人も呼ばなかったりで、チケットが余る子は足りない子へおすそ分けをするケースも多い。

 かくいう私(我が家)も、なゆの分と合わせると10枚もあるので、うち3枚をマキちゃんへ進呈することになっている。

 ご両親と両方の祖父母、それにお姉さんと妹さんで8人になってしまうのだとか。

 なんとも大家族だ。

 中学の頃のお友達とか呼ばないの? って聞いたら、ミクちゃんかのちゃんも共通なので、そっちから回すことになってるんだとか。

 うちは、両親と中学の頃の友達合わせても残りの7枚を消化しきれるとは思えないので、足りなさそうなら声かけて、と言っておいた。


 話がそれちゃった……。

 気を取り直して、チケット入手方法その2!

 それは、OGであること。

 厳密にはチケットとは違うんだけど、卒業時に渡される『卒業証明パス』が、チケット扱いになる。

 というか、卒業証明パスを持っていれば現役生徒と同じ扱いになるので、文化祭関係なく敷地内へ入ることが可能だったりする。

 うちの学校、天文関係の設備や書籍が下手な大学や研究機関よりも揃ってるから、卒業後も必要になることもあるだろう、っていうので発行されているんだって。

 太っ腹だ!


 三つ目は、将来的に受験を考えている小中学生の女の子、とその両親。

 これは、ネットからエントリーすればチケットが発行される。

 学校見学も兼ねて、ってとこだ。

 ただし、『保護者のみ』や『生徒のみ』はダメで、必ず一緒に来ること、って条件がある。


 ここまでは条件さえ満たせば、誰でも手に入れることができる。

 その『条件を満たす』のが大変なんだけどね。


 で、それらの条件を満たせない人はどうするか、というと。

 最後の一つ、ネットエントリーによる抽選に賭けることになる。

 これはもう純粋な抽選で、応募さえすれば可能性はある。

 聞いたところによると、とんでもない倍率になっているらしいけど……。


 以前、個人情報を偽装して『女子中学生枠』でエントリーした男の人がいたらしいんだけど、受付ですぐにバレて門前払いされたらしい。

 その後、ブラックリストに載って二度と当選することはなくなったとか……。

 最近は変な人も増えているから、警備も大変だなぁ。


 ちなみに、その辺のチケット管理をなゆが担当している。

 リストの管理や抽選の手配、当選した人への送付などとんでもなく仕事量が多く、聞いているだけですごく大変そうだ。

 しかも、ほとんどがパソコンを使った作業なので、その辺のスキルも必要になる。

 ……んだけど、今年の実行委員にはパソコン得意な人がほとんどいなくて、個人情報の管理もあるし、ってことで無理矢理なゆが駆り出されることになったらしい。

「生徒会入るまで、パソコンなんてほとんど触ったことなかったのに……」

と、昨日の夜ご飯を食べながら嘆いていた。

 唯一、3年生でめちゃくちゃパソコン関係が得意な人がいたおかげでなんとかなっているみたいだけど、その先輩がいなかったらどうなっていたんだろう……。


 そんなチケット班と私たち会計班は、基本的に生徒会室で作業をしている。

 一応、全体を統括しているトラ先輩とステラ先輩も拠点はここなんだけど、打ち合わせやら調整やらでほとんど顔を出すことがない。

 といっても、いろんな人が入れ替わり立ち替わり来るので、慌ただしいけど。


「ケイ先輩~、この『パンフレット代』ってなんかすごい額ですね」

 予算表を見ていると、一際金額が大きい項目があった。

 0が多くて……あれ、なんかぐるぐるして……。

「すばるん……大丈夫?

 顔から力が抜けているわよ?」

「なんとか~~」

「あんまり無理しないでね」

「はい~~」

 もうね、ケイ先輩効果のみで動いている状態。

 ……だめだ、気合を入れないと。


「で、パンフレットよね。

 これ、すごいのよ? 見たことない?」

「ないんですよー。

 去年、両親の都合が悪くて……」

「ああ、同伴ルールに引っかかったのね」

「それです」

「ちょっと待っててね」

 そう言うと、おもむろにケイ先輩は立ち上がって本棚の方へ。

 しゃがみこんで何やら探していたと思ったら、薄い冊子を手に戻ってくる。

「これが去年ので、こっちが一昨年のよ」

 机の上に置かれたものを見ると、本屋さんで売っている雑誌か!? ってくらいにちゃんとした作りになっていた。

 もしかしたら、それ以上かもしれない。

「おお……確かにお金かかってそう……」

 持ち上げてみると、薄さの割りにしっかりと重く、触った質感もなんかつるつるしてる。

表紙の写真もすごくきれい!

 って、去年の表紙……ステラ先輩とトラ先輩だ!

「ちゃんとプロのカメラマンが撮ってるのよ」

「このお二人が表紙だと、すごい目立ちますね」」

「ほんとにね。

 プロの技が合わさってとんでもないことになってるわよね。

 毎年、生徒の中からモデルを選ぶんだけど、去年はパンフレット欲しさに来場希望者が増えた、って話まであるくらいなのよ」

「そこまでとは……」

 でもうん、気持ちはわかる。

 このままポスターにして貼っておきたいくらいだもの。


「確かに、これだとすごくお金かかりそうですね」

「そうなのよ。

理事長のツテでちゃんとしたスポンサーがつくおかげね」

「スポンサー!

 なんかすごいですね……」

「ほらここ見て」

 パラッとめくったページには立派な広告が。

 あ、この望遠鏡のメーカー、名前聞いたことある!

「まぁ、逆に言うと、スポンサーがついているせいで豪華なものを作らなくちゃいけない、とも言うんだけど」

「あー……大人の事情、ってやつですね……」

「そそ」

 お金を出してもらうというのも大変なんだなぁ……。


「今年は誰がモデルになるんですか?」

「スミカよ」

「あー……うん、すごいことになりそう……」

「そうなのよね。

 あの子、校内外問わずファンが多いから……。

 いっそグッズでも作って売ろうかしら」

「あはは、すごく売れそうですね!」

「ふふ、そうね。

 困ったことにね!」


いつも応援ありがとうございます★

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