第54話 思い出と妹
結局、3回目の朝焼けは夢の中で終わってしまった。
予想通り全く起きられなかったのだ。
なゆに「あんなにしても起きないおねえ久しぶりに見た」と言われる程……。
『あんなにしても』の内容を教えてくれなかったのがちょっと怖い。
ていうか、ケイ先輩がずっと横を向いて笑いをこらえているんだけど……え? ほんと何したの!?
「さぁ、今日は宿題の日よ!!」
朝食を終えるなり、ステラ先輩の死の宣告……もとい、今日のスケジュールの確認が。
「うぇぇ。
わかってはいるけど、やりたくないーー」
ついつい絞り出すようなうめき声が漏れ出てしまった。
「おねえ……あの時の悪夢は……」
「わかってるよぉ……」
全然終わらなくて、泣きながら見た9/1の朝日は今でも忘れられない……。
とはいえ、みんなも宿題ヤダよねぇ、と思って周りを見ると、意外にもそうでもない人が多い雰囲気。
なんだかんだでみんなしっかりしてるからなぁ……。
でもでも、おベンキョ苦手組のミクちゃんならきっとわかってくれるはず!
そう思って、目を向けると、
「でも、みんないる方がだらけなくていいじゃない!
わかんない時に、かのん以外に聞けるのもいいわ!」
……くっ、まさか裏切られるとは……。
あ、あれ?
もしかして、こっち側にいるの私だけ?
「ほんと、やだよねぇ宿題」
よかった、スミカ先輩がいた。
……いや、これはよかったでいいのだろうか。
「はぁ、スミカ先輩と同じなのもアレなので、がんばります」
「ちょっとちょっと!?
あれ!? 私の扱いどんどんひどくなってない!?!?」
「うんうん、偉いわすばるん。
スミカのようにならないためにも、がんばりなさいね」
「はいっ! ケイ先輩!!
……わからない所あったら教えてくださいっ!」
「もちろんよ」
「おーい!! ひどくないー?!」
◇
「……っふあぁあぁぁぁ」
お風呂が気持ちいい。
かつてないほど集中して宿題をやっていたら、いつの間にかお風呂の時間になっていた。
「おねえ、ちょっとおじさんくさいよ」
「ええー!
だってだって、もうなんかとにかく疲れたし!
温泉気持ちいいし!!」
「ふふ、そうね。
ほんと、頑張ったものね」
「はいっ!」
なんとなんと、残るは読書感想文のみ、という快挙。
それも、明日の午前中には終わるんじゃないかという……。
すごい! 頑張ったよ私!!
「明日で合宿も終わりかー」
露天風呂に浸かりながら星空を見上げ、ひとりごちる。
幼い日に見たあの風景と重なり、思わず手を伸ばしてみる。
「何してるの? おねえ」
「んー? なーんか、掴めそうだなぁ、って」
「そう言えば、小さい頃よくやってたよね」
「そうだったっけー」
とかいいつつも、ちゃんと覚えている。
あまりにも目の前いっぱいに広がっているものだから、1個くらい持って帰ろうと思ってたんだよね。
「そうだよ。
で、1個も掴めなくて泣いちゃって……」
「う……よくそんなこと覚えてるね」
「あら、小さい頃のすばるんて、ずいぶんと可愛かったのね?」
「えへへ、そんな頃もありました。
たまに流れ星が流れると、落ちてきたものくらいなら拾えるかなー、とか」
当然、その辺に落ちてるわけもないんだけど。
「でも、お月さまはなんか怖かったなー」
「月が?
どうして?」
「まあるくて大きい、ってのもありますし、なによりずっとついてくるので」
「『逃げても逃げてもおっかけてくる!!』って言って、お父さんに言ってたよね」
「……なゆ、そういう記憶は残しておかなくていいのよ?」
「あの頃のおねえ、可愛かった」
もう。
「ていうか、なゆもケイ先輩も。
可愛かったって過去形なの酷くないです?」
「あら、ごめんなさい。
今のすばるんも可愛いわよ」
そう言ってケイ先輩が頭を撫でてくれる。
自分で振っていおいてなんだけど、めっちゃ照れる……。
「照れるおねえは可愛いと思うよ?」
「……余計な事は言わなくていいの」
最近、なゆの姉いじりが加速している気がする……。
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