第50話 お肉と写真
祝!50話!
夜。
ビーチではバーベキュー大会が始まっていた。
お肉の焼ける匂いがとても香ばしい。
昼間、さんざん海で遊びまくってお腹ペコペコだったので、匂いだけでお腹がぐうぐう鳴って仕方がなかった。
「ん〜〜!!
おいひぃ〜〜〜!!」
「ほらかのん、口の周りベタベタだぞ?」
「ふぁにいっふぇるのマキひゃんてば」
「ん、何言ってるかわかんないから、とりあえず口の中のもの飲み込んでからにしてね?」
「……んぐ。
そんなの気にしてちまちま食べてたら、お肉様に失礼でしょ〜〜〜!」
今日のご飯担当は……伊織音先生とステラ先輩!
と言っても、先生は夕方くらいから飲み始めててあまり役に立ちそうになかったので、瀬田さんがサポートに入ってる。
……いや、あれは瀬田さんがメインな気がする……。
お昼の焼きそばも美味しかったし、スーパー執事流石すぎる!
「それにしても、かのちゃんがあんなに肉食系だったとは……」
右手に串、左手に骨付きリブロースを持ってお肉を頬張る姿を遠目に見ながら、私、なゆ、ケイ先輩の3人はゆっくりとお肉を堪能していた。
「でも、すごいお肉ばっかりだし、気持ちはわからなくもないわね」
「ですね〜。
昨日のカレーのお肉が普通だったから油断してました」
串に刺さっていたお肉は、塊のくせに噛み付くとホロホロっとほどるほど柔らかく、その上脂っこくなくとっても美味しい。
骨付きのリブロースは、甘辛のタレがもう絶品!
かのちゃんじゃないけど、口の周りも手もベタベタにしながら頬張るのが礼儀!って感じ。
それだけじゃない。
お野菜もとってもおいしくて、串の間に挟まっていたネギも「こんなに甘いの!?」ってびっくりするくらいで、ネギの辛味があまり得意ではない私でもおかわりしたほどだ。
「まだまだありますので、じゃんじゃん召し上がってくださいね」
そう言って次に瀬田さんが取り出したのは……お値段を聞くのが怖くなるような霜降り!!
「これ、スゴイですねー!」
「今日のお昼に宮崎から空輸してもらったんですよ」
「ほぇー」
なんともスケールの違う話に間の抜けた声が出てしまった。
「こ、これは!!!
サーロインさま!!!」
「うわぁ! かのちゃん!?
びっくりしたー」
「あはは~~~、ごめんね~~~~」
突然真横からかのちゃんの声がして、ものすごくびっくりした。
さっきまで、あっちの方でほっぺたパンパンにしてたと思ったのに。
……って、あれ?
「さっきのお肉はどうしたの?
置いてきた?」
「ん~~?
すばるちゃんってば、何言ってるの~~?
そんなの食べ終わったに決まってるじゃ~~ん」
「……うそ……」
確か両手に持っていたモノ以外にもお皿にてんこ盛り乗っていたような気がしたんだけど……。
うん、深く考えるのはやめよう……。
「それにしても~~~、ステラ先輩の『焼き』はすごいですね~~~」
「あら、かのんちゃんは分かる人なのね?」
「ふふふふふ~~。
このいいお肉活かす最高の『焼き』かと~~~。
しかも炭火で……私炭火苦手なのでもう尊敬ですよ~~~」
気がつくと肉食系女子の集い? が始まっている。
二人にだけ通じる何かがあるのかもしれない。
目の輝きが違う。
「ありがとう。
でも、そんなに難しくもないのよ?
ほら――お肉の声が聞こえるでしょう?」
ちょっと待って! なんか今変なこと言いませんでした!?
「肉の声……なるほど~!」
え!? 今のでわかるの!?
「かのんのやつ、すげーな。
ステラの肉トークについて行けるやつ初めて見たよ」
「あ、トラ先輩!
ということは、やっぱりステラ先輩は――」
「そそ、ステラはかなり肉食系だぜ?」
「ひゃー」
なんというギャップ。
◇
「おなかいっぱ~い!
……あんまりおいしすぎて、食べ過ぎた気がしないでもない」
もう食べられないって思ってからも、出てくるお肉がどれもおいしそうで、結局限界以上に食べてしまった……。
最後にはシャーベットまで出てきたしね!(もちろんぺろっと頂きました)。
「あらあらすばるん。
おなかぽっこり出てるわよ?」
「え!? ほんとですか!?」
「ウソよ。
でも……この合宿、油断していると体重が倍くらいになっちゃいそうね……」
「ですね……」
砂浜に座り込んでおなかを落ち着けていると、ケイ先輩がお茶を持ってきてくれた。
「はいどーぞ」
「あ、ありがとうございます!」
冷たい烏龍茶が心地いい。
「昨日も思いましたけど、ここの星空はすごくキレイですねー」
「そうね。
空と海と陸の境界線が曖昧で、まるで宙に浮かんでいるみたいよね」
「はい。
私も昨日見た時に同じこと思いましたよ」
おんなじ感想って、なんか嬉しいな。
「この後って、どっかの橋まで星を見に行くんでしたっけ?」
「星空観察では有名な所らしいわよ」
「楽しみですね~……」
ん~……お腹いっぱいになったら眠くなってきちゃった。
「……すばるん?
食べてそのまま寝たら牛になっちゃうわよ?」
「だ、大丈夫ですよー」
いけないいけない。
◇
瀬田さんに車を出してもらってやってきた『橋』は、さすが有名なスポットだけあって人も多かった。
「うわぁ……すごいねぇ」
車から降りるなり眼に飛び込んできたのは星の海。
自分の足元以外には地面がなく、周りに遮るものもないのでビーチの時以上に境界線がわからなくなる。
このまま浮かんでいってしまいそう……。
お父さんからデジカメを借りてきてみたものの、これでちゃんと写せるかな。
『夜景モード』があるから大丈夫だろ、って言ってたけど……。
パシャッ
横では、なんだかごっついレンズをつけたカメラを構えたマキちゃんがパシパシと写真を取りまくっていた。
「マキちゃん、そのカメラ重そうだね」
「んー、それほどでもないかな。
持ってみる?」
「いいの?」
「どうぞどうぞ」
マキちゃんから恐る恐るカメラを受け取ると、がっちりしたストラップを首からかけてくれた。
確かに、思ったほどずっしりではなかったけれど、なかなかの重量感だ。
あ、でも、
「意外と軽い? って思ったけど、持ち上げて構えようとするとずっしり来るね」
「あはは。
重さのほとんどはレンズだからね。
しっかりレンズを支えないとバランスが取れないよ」
「あ、なるほど」
言われてレンズにしっかりと手を添えて構えてみる。
うーん。
頭の中にある『かっこいいカメラマンのポーズ』とは程遠い気がする……
パシャッ
「カメラマンすばるんを激写!」
「ケイ先輩!?」
「なかなかサマになってたじゃない?」
「……似合ってないのは自分が一番わかってます……」
「ふふふ、そんなことないって。
ねぇ?マキちゃん」
「そうですねー。
キレイなへっぴり腰だったかと」
もう、二人していじわるなんだから。
「ありがとー」
落とさないよう慎重にカメラを返す。
「どういたしまして。
んじゃ、私は色々撮ってくるね」
「うん、あとで見せてね!」
「任せて!」
行っちゃった……と思ったら、あれ? 戻ってきた?
「っと、そうだそうだ」
「どうしたの?」
「ふたりとも、ちょっとそこに立ってくれる?」
戻ってくるなり、橋の欄干の辺りを指差す。
「そそ。
そんで、ちょっと寄りかかるようにして……うん、そのまま上を見てみて」
なんだろ……? とりあえず言われた通りに上を見上げる。
キレイな星空……だけど、特別何かが違うわけでもないような……?
パシャッ
「ツーショット激写っ!」
「へ!?」
「……やられた」
「ふっふっふー。
人物を撮るときは、油断した瞬間を狙わないとねっ!
んじゃねっ!」
そう言い残して、今度こそ行ってしまった。
……あとで貰って、お部屋に飾ろう……。
「ケイ先輩はどうします?」
「そうねぇ。
折角だから、私も色々行ってみるわ」
「はーい」
私もウロウロしてみよう。
……一緒に行きましょう、って言えばよかったかな。
あ、そうだ。
「ケイ先輩!」
まだ声の届く所にいた先輩に後ろから声をかける。
「ん?」
パシャッ
「星空をバックに見返り美人、激写ですっ」
「もう、すばるんまで!」
「ごめんなさーい」
その後も、なんだか不意打ちで撮るのが楽しくなっちゃって、星空と一緒にみんなを激写して回ったのだった。
ようやく50話到達です!
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