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流れ星を手のひらに  作者: ただみかえで
第7章 夏休みと合宿と
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第45話 お料理と意外な弱点

「さて、それでは早速やりましょう!」

くじ引きが終わった時点で、既にいい時間だったため、早速料理にとりかかる。

ケイ先輩とペアになった私、その後の順番を決めるくじ引きでは見事1番を引いてしまった。

移動が大変だったから、今日の当番は順番的には一番ハズレ…。

なるほど、ケイ先輩とのペアを引き当てた時点で、私のくじ運は尽きたらしい。

世の中よくできてるなぁ…。


「今日のメニューは、カレー?」

「えっと…ですねー」

手元の『合宿のしおり(ステラ先輩作)』を覗き込んで確認する。

合宿期間中のメニューは事前に決まっていた。

なぜか、というと、メニューを決めておけば基本的に買い出しに行かないで済むから、とのこと。

確かに、何作るか決めて、買いに行って、ってしてたら結構時間をとってしまう。

本来の目的は、文化祭に向けての打ち合わせ、なのでできるだけ時間をかけないようにしたんだって。

ちなみに、歩いていける距離にスーパーがないので、昼間のうちに瀬田さんが車で買いに行ってくれるみたい。

これも買うものが決まっているからこそ、らしいんだけど…何度考えても執事付きの合宿、ってすごいなぁ。


冷蔵庫を開けると、カレーに必要な材料が一通り揃っていた。

じゃがいも、たまねぎ、にんじん、牛肉、それとカレールゥ。

これまでの流れで、なんかすっごいお肉が入ってたり!?と少しビクビクしながらだったけど、普通にスーパーで売ってそうなパックに入ったお肉だった。

ちょっとがっかりなような、ほっとしたような。

「あら、思ったより普通のお肉でよかった。

 すごい霜降り牛とかだったらどうしようかと思ったけど」

なんて思ってたら、ケイ先輩も同じことを思っていたらしい。

「ちょっと、見てみたかったですけどね、すごいお肉」

「ふふふ、そうね」

カレールゥもうちで使ってるのと同じやつだったし、うん、大丈夫そう。


「えーっと、じゃあ――」

「あのね、すばるん。

 始める前に一つだけ、言っておかなければいけないことがあるの」

どうやって分担したらいいかなー?なんて考えていると、黒いシックなエプロンを付けたケイ先輩が真面目な顔でこっちを見た。

「この間の可愛いエプロンじゃないんですね?」

「…あれは、家用だから…」

ちょっとだけ赤くなる先輩。

私だけが知ってる…じゃないか、スミカ先輩も知ってる、でも、ほとんどの人が知らない可愛いもの好きのケイ先輩の素顔。

誰と勝負している、というわけでもないんだけど、なんだかちょっとした優越感に浸ってしまう。

またこうして、ちょっと照れてる所も可愛いなぁ…。

「って、それはいいから!

 あのね、ちょっと、言いにくいことなんだけど…」

真面目な顔にドキッとして、つい茶化してしまったけど。

今度こそちゃんと聞きなさい、と目で言われたような気がして、何も答えられずに黙ってうなずく。


「実はね、私、料理からっきしだめなのよ…」

「へ???」


今、先輩はなんて?

料理がからっきし??

からっきし、ってどういう意味だっけ?

全く、とか、全然、とか、そういう意味だったはずだけど、それだと文脈が合わない。

「……ーい………ん?」

だめ…だめ、ってのは、どういうだめ?

料理したくない、とか。

いやでも、この間お泊りに行った時には、ちゃんと作ってくれていたし。

「……おーい……るん?」

ということは、なんだろう、からっきし、ってのが否定の意味?

そんな意味あったっけ?

私が知らないだけで、からっきしだめ、っていう新しい言葉がある、とか??

「ちょっと、すばるーん??

 もしもーし、聞いてるー??」

「あ、ケイ先輩、ごめんなさい。

 ちょっと言ってる意味がわからなくて考えちゃってました」

日本語って難しい。

「意味がわからなくて、って、そのままの意味よ。

 みんなの前では恥ずかしくて言えなかったけど、料理全然できないのよ」

あれ、どうやら、新しい意味はないらしい。

「え、でも、この間お泊りの時、サラダとスープを作ってくれましたよね?」

「…『出来合いのもの』って言ったじゃない。

 母が作り置いていたサラダを盛り付けて、粉末のスープにお湯を注いだだけよ…」

あれ、謙遜じゃなかったんだ…。

「えっと、ということは、本当にできない…?」

「だから、そう言ってるじゃない!」

「…なんかのドッキリじゃ」

「ありません!」


ぺしっ


「あうっ」

ツッコミが入ってしまった。

そっか、そうなんだ…。

意外な弱点発見!

「スミカにも言ってないんだから、内緒にしてね!」

と、いうことは、正真正銘2人だけの秘密!!

「もちろんです!

 私、口は堅いので」

「信用してるわよ。

 …はぁ、すばるんとペアでよかったわ…」

料理が苦手、ってくらい、わざわざ隠すことでもないと思うんだけど(むしろ可愛いと思う!!)。

「あれ、でもそうしたら調理実習の時ってどうしてるんですか?」

さすがに授業をサボるわけにもいかないと思うんだけど。

「その時はね…器具類の準備をしたり、分量を計ったり、裏方に徹してるのよ」

「…なんと」

まるで忍者のよう…。

「でも、私にバラすのはよかったんですか?」

「さすがにね、2人しかいないのに裏方に徹する、ってわけにもいかないし。

 それに、すばるんにはここの所かっこ悪いとこばっか見られちゃってるから、もうひとつくらい追加されてもいいかな、って。

 あーあ、もっとかっこいい先輩でいるつもりだったんだけどなー」

といって、ウィンク。

…もう、心臓が止まったらどうする気ですか!?

でも、そっか。

ちょっと特別、って言われているようで、すごく嬉しい。

顔がニヤニヤしちゃいそうになるのって、どうやって抑えたらいいんだろう…。


「えっと。

 じゃあ、ちょっと簡単バージョンで行きましょう!」

「簡単バージョン?」

「はい。

 うちの母直伝の、手抜きカレーです!」

「なによそれ、ふふ」

ちょっと不安そうにしてたケイ先輩が、やっと笑ってくれた。

「まずは、野菜の皮を剥きます!

 ピーラーを使えば簡単なので、一緒にやりましょう」


手抜きカレー、と言った所で、カレー自体がそんなに難しい行程がないんだけど。

皮を剥いて小さく切った具材を、一旦炒め…ずに、いきなりお湯にドボン。

ある程度煮えたらルゥを入れるだけ、という感じ。

母曰く『ちゃんとアクさえ取れば、ルゥがおいしいんだから炒めなくたって味に大差ないわよ』と。


「あとは細かくカットするだけなので、お湯の準備しておいてもらっていいですか?」

「おっけー」

ピーラーと格闘すること数分。

なんとか指を犠牲にすることなく、全ての野菜の皮が剥けた。

さすがに10人分、ともなると結構な量だなぁ。

一口大に切り分けている間に、ケイ先輩が水を張ったお鍋を火にかけている。

ピーラーの使い方はだいぶ恐る恐るだったけど、不器用、ってわけでもないし。

きっとちゃんと習えばすぐに料理できるようになりそう。

またこうやって教える機会があるかもだし、お母さんに習っておこう。

ケイ先輩と一緒に料理するのって、なんだか楽しいな。


いつも応援ありがとうございます★

ついに10万文字突破!これからも、ふんわり百合百合なお話にお付き合いくださいませ★

気に入っていただけたら、評価やブックマークをお願いします。


新連載もはじめましたので、下の方のリンクからよろしければっ

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