第38話 学校では見られない!
5/2 11:30頃
あとがきに謎の記号を追加…(ΦωΦ)フフフ…
ちゃぽん
「ふわぁぁ…」
温かいお湯が気持ちいい。
買い出しで外に出たのはいいけど、この時期にもなると夜でもじっとりしてる。
真夏の暑苦しさほどではないし、風が吹くとちょっぴり肌寒いくらいだけども、湿気がまとわりついてくる感じは好きじゃない。
って、好きな人もいないんだろうけど。
もう夏が来るんだなぁ…。
合宿、か。
どんな感じになるんだろうな~。
…まさか、それよりも前にお泊りすることになるとは思わなかったけど…。
「すばるん~?
ここに着替えとタオル置いておくわね~」
「ひゃぁっ!」
バシャーン!
「ちょ、ちょっと!?
大丈夫!?」
「だ、だいじょうぶれふ…」
うちのお風呂と違って、ゆったり足を伸ばせるくらいに大きな湯船なもんだから、立ち上がろうとしてバランスを崩してしまった。
そもそも立ち上がる必要もなかったんだけど。
危うく鼻からお湯を飲む所だった。
「大丈夫ならいいけど…。
のぼせないうちに出ておいでね?」
「ふぁーい」
パタンっ
先輩が出ていって、パタパタというスリッパの足音が遠ざかる。
そこからさらに10数えて、よしっ、と湯船から出た。
一回裸を見られてるし、そもそも女同士だから恥ずかしがることもないんだろうけど、そうは言っても、ね。
脱衣所に出ると、真っ白なタオルが置いてあった。
「ふわ、このタオルすっごい柔らかい…」
なんというか、見た目に派手さはないんだけど、逆に細かい所ですごく気を遣っているのがわかって、ケイ先輩のお母さんの人柄が感じられる。
夜遅いお仕事、って言ってたけど、すごい気配りの人なんだろうなぁ…。
あれ。
そういえば、着替え、って言ってたけどさっきの部屋着とは違うのかな?
しっかりと水気を拭き取った後、脱衣カゴを見るとふわふわのパジャマ(もちろんあのキャラが書いてある)が。
部屋着のままでもよかったのに、と思いながら、でもありがたくお借りする。
あ、パジャマの下には下着も…ん?
なんだろ、なんかコレもふわふわの、ゆったりしたブラ…?
タグを見ると…おやすみブラ、なんて書いてある…。
へ?寝る時用!?
そんなのあるの!?
…なんだろう、こう、女子力的なアレで、全く勝てる気がしない…。
それ以外でも勝ち目はないけど…圧倒的な戦力差を思い知らされた気分だった…うぅ。
「お風呂ありがとうございまし…た…??」
濡れた髪から水が落ちないよう、バスタオルをかぶったままリビングへ戻ると、ケイ先輩が何故か着替えていた。
ブラウスにタイトスカートに…ジャケット?
なんだろ、どこに行くんだろ?
「えっと、ケイ先輩、どこかにお出かけですか??」
こんな時間にどうしたんだろう?
「あら、あなたがすばるちゃんね?」
「へ??」
ケイ先輩?が立ち上がって、こっちに来る。
よくよく見ると、お化粧もしてるみたいで、いつも以上に大人っぽい。
「ふふふ、可愛いわねぇ。
いつもケイがお世話になってるわね、ケイの母です」
「…………えええええ!?」
すっごいそっくり!
てか、若いっ!!
「ケイ先輩のお母さま…???
お姉さんじゃなくて!?」
どう見ても、お母さん、って年齢に見えない…!
「すばるん?
お世辞言わなくてもいいのよ?」
1人で目を白黒させていると、ケイ先輩が帰ってきた。
手になにかビンを持っている所を見ると、さっき言ってたスキンケアに使うものかな?
「あら、ケイ、お世辞だなんて。
素直で良い子じゃない?」
「はいはい、そうね」
こうやって並んで見ると、確かに違う。
「ご飯は?」
「済ませてきたわよ~。
あなたたちは?」
「スミカのおばさまが肉じゃが持たせてくれて、それ食べたよ」
「あら、真珠ちゃんったら。
着替えてお礼に行ってこようかしら」
「お礼に、って、飲みにいくだけでしょ?」
「ふふふ、オ・ト・ナ、だからね~」
ああ、ケイ先輩がオトナになったらこうなるんだろうな~~、って感じがすごくする。
素敵なお母さまだなぁ。
「まぁ、こっちはこっちでやるし、好きにして」
「なぁに?おじゃま虫は出て行けって?
ヒドイわね~?」
「そんなコト言ってないでしょ」
「うふふ」
…あのケイ先輩が手のひらで転がされてる感じ…すごい。
「さ、すばるん。
スキンケアやっちゃうからおいで」
「は~い」
化粧水をむにむにとお肌に馴染ませながらお話を聞いてみたところ、ケイ先輩のお母さまはお化粧品の会社にお勤めなんだそうだ。
しかも開発部門!!
「ちなみに、この化粧水も母が作ったもの、らしい」
「へー!!」
なんというか、想像の範囲を超えてよくわかんないけど。
あれかな、白衣着てビーカーとか試験管とか並べてる感じなのかな?
…我ながら発想が貧困だな…。
「あなたたちはまだ若いから、基礎のスキンケアだけやってれば大丈夫よ~~~」
「お母さん、いいから早くいってらっしゃい」
「はいはい、邪魔者は消えますよ~~。
すばるちゃん、ゆっくりしていってね~~。
おもてなしはケイがするから」
「あ、はい!
ありがとうございます!」
「…早く行って…
もう、今日は一日こんな感じね…」
学校じゃ見られない姿が見れて、私はすごく嬉しいですけど。
「あ、そうだ」
行ったと思ったお母さまが、ひょこっと顔だけ戻ってくる。
「まだなにかあるの?」
「お父さん、今日は帰れないって。
学会までになんとか論文出したいみたい」
「…この間から大学に泊まるコト多いけど、大丈夫なの?」
「その辺は自己管理してるわよ、明日ちょっと顔出してくるし」
「ん、そっか」
「私も、このまま真珠ちゃんとこ泊まってくるから、ハメを外さないように楽しんじゃいなさい」
「はいはい、ありがと」
パタパタ
バタンッ
「素敵なお母さまですね」
「…えっと、何をどうしたらそういう感想になるのかわからないけど。
後で伝えておくわ」
「ふふふ」
「…なに?」
「いいえー」
「スミカ先輩、遅いですね」
私がお風呂に入るタイミングで、自分も、って家に帰ったんだけど。
リビングにいない所を見ると、まだ戻ってきてないみたい。
「もうすぐ戻るでしょ。
あの子、ああ見えて長風呂だから」
「そうなんですか!?
なんか、ざばざばー!って、すぐに出そうなイメージ…って、あ、あの、こんなこと言ってたの内緒にしておいてください…」
「ふふふ、大丈夫よ、みんなそう思ってるから。
うち、さっき見ててわかったと思うけど母親同士も結構仲が良くって、たまに一緒に家族旅行するんだけど。
誰よりも温泉に入ってるのがスミカなのよ」
あ、でも、それはわかるかも
のんびり長風呂のイメージはないけど、温泉好き!ってのはアリな気がする。
「温泉、いいですね~。
私も好きですよ~」
「今度の合宿先にもあるらしいわよ」
「おお!いいですねー!」
合宿か~。
お風呂でも考えてたけど、どんな感じだろうな~。
うーん、楽しみ!
「さ、一息ついたら、勉強再開するわよ」
そうだった。
…楽しみの前に、まず試験を片付けてしまわないといけないんだった…。
あ、そだ。
「ねえ、ケイ先輩。
一つ聞きたいんですけど…」
「なぁに?」
「この、お借りしたおやすみブラって、なんかすごいですね!
私、寝る時はなにもつけないんですけど、こんなゆったりしてるならいいかも」
「締め付けのないやつだからね~…って、すばるん、寝る時何も付けないと形崩れちゃうわよ?」
「…崩れるほど、ないので…」
ケイ先輩の、を借りているので、余ってるし…。
『女子力』の差を感じる…。
「ふふふ、そんなこと――」
ぺと
ごくごく自然な流れで、ケイ先輩の右手が私の左胸に触る。
『余り』があるので、ぺこぺこと…。
「…確かに、そんなには――」
「へ?」
「……え?」
しばし見つめ合ってしまう。
沈黙…。
「あっ!!!
ご、ごめんなさい!!」
「い、いえいえいえいえいえいえ、つまらないものですが…」
慌ててパッと手を退ける先輩。
混乱しておかしなことを言っているような気もするけど。
や、うん、別によくあることではあるんだ。
女子校だし、私もおっきな子のを触らせてもらったこともあるし、中には挨拶みたいに触りまくってる子もいるし(あれはあれでどうかと思うけど…)。
顔が真っ赤になる。
心臓のバクバクもすごい音してて、ケイ先輩に聞こえるんじゃないか?って思っちゃう。
それどころか、このままじゃ口から飛び出そう…。
「あ、あの、ほんと、ごめんなさい」
「いえ!
こちらこそ!すいません!!」
ひゃーー、きまずいーーーー。
意識しすぎだ、私!
まともに顔が見られないよ…。
ガチャッ
バタン
「おーす、ただいまー!
…ん?何してんのふたりとも?」
後にも先にも。
私の人生で、この時ほどスミカ先輩が神々しく見えることはないだろう…。
助かった!!!
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深い意味のない謎の記号
すばる A寄りのB
ケイ D
おまけでスミカ Cまでは行かないB+




