第37話 お泊り大作戦!
ドッキドキのお泊り編!
さて。
全く展開についていけてない間に、ケイ先輩のお家にお泊りすることになってしまったわけだけど。
当然、そんな予定はなかったわけだから、お泊りセットなんてものは全く持っていない。
あ、お昼ごはんの後に使うので歯ブラシセットはある!
『で、それでとうするの?おねえ』
…うん、なゆのツッコミが聞こえてくるようだ。
なゆ、なゆかぁ…着替えとか持ってきてもら…うなら、一回家に取りに行った方が早いなぁ。
「おーい?スバルちゃん、どした―?」
もしもーし?」
「あ、すいません、ちょっと考え事してました」
どうしたもんか、と考え込んでいたら、スミカ先輩に心配されてしまった。
ぐいっと覗き込まれて、目の前で手をひらひらされるまで気づかなかった。
しかし…こうやって近くで見ると、確かにかっこいい。
女の子たちがキャーキャー言うのもわからなくもないなぁ。
「ん?今度はどした?
そんなに見つめちゃって。
ようやくボクの魅力に気付いたかい?」
「あ、そんなんじゃないです、大丈夫です」
「大丈夫、って、あれ、なんかさり気なくひどくない?」
「気のせいですよ?」
と言ったものの、さすがに自分でもヒドイと思わなくもなかった…。
ゴメンナサイ。
でも、こんなに近くても、ケイ先輩の時と違ってドキドキはしないんだなぁ。
改めて、ケイ先輩が好………う、顔が赤くなってきた……。
「今日のすばるちゃんは百面相だねぇ。
大体何考えてるのかわかるケド」
「キノセイデス!!」
「んで。
考え事、って何かあった?」
「ああ、えっと。
急にお泊りすることになったのはいいんですけど、予定になかったから何の準備もしてないなぁ、と思って」
歯ブラシセットだけでは戦えないし!
…戦うわけじゃないけど。
「そういうことか。
んでも、着替えくらいだろ?
ケイから借りたらいいじゃん」
「そんな、いいんですかね…」
「いいに決まってるじゃない」
「うわっ」
思わぬところから声がして、びっくり!
ちょうど入り口を背にしてスミカ先輩とお話してたから、ケイ先輩が上がってきていることに気づかなかった。
あ、先輩エプロンしてる…って、エプロンまであのキャラ達が…可愛い。
「うわっ、って何よ、もう」
「先輩、エプロン可愛いです」
「う……はぁ、今日はかっこ悪いところばっかり見られてる気がするわ」
かっこ悪いどころか、可愛い所ばっかり見れてます!!
…とは、口が裂けても言えない。
「そんなことないですよ!
なんか、普段と違う所が見れてちょっと嬉しいです」
「にやにやしながら言われても、説得力ないわよ?」
「いや、その…可愛いなぁ、って…」
…口が避けてしまった…。
「何言ってるの、もう」
ぺちん
「あう」
でこぴんされてしまった。
「それで、着替えだけど、私のを貸すわよ。
いつまでも制服でいたらシワになっちゃうからね」
「いいんですか?」
「さっきも言ったけど、いいに決まってるじゃない。
あ、でも、ショーツの新しいのあったかしら…」
「さ、さすがに、それは買ってきます!」
「…そうね、ごめんね。
ブラは私の使ってくれたらいいから。」
「すいません…。
…なんか、この間の雨の日を思い出しちゃいますね」
「ふふふ、そうね」
生徒会室で、同じような会話をしたなぁ。
…なんて思ってたら、あの落ち着かない感じまで思い出してしまってそわそわしてきた。
ぺちん
「ふあっ」
全く痛くないけど、不意打ちのでこぴんに変な声が出る。
なんで?ってハテナを頭に浮かべてると、
「あの時のことは忘れて?」
と、うっすら顔を赤くしてケイ先輩が。
あの時…??
『…すばるん、って、思ったよりも余計なお肉がついてなくてキレイな体してるのね』
あ…
「先輩…逆に……思い出しちゃいました…」
途端に顔が赤くなる。
「え?なになに?
あの時って???」
「あんたはいいの!」
「えーー、なんだよーーー。
気になるじゃ~ん」
「秘密ですううううう!!」
なゆにすら言ってないのに!
「さ、ご飯の準備できたから早くいきましょ」
「はい、スミカ、大盛りでいいのよね?」
「お、せんきゅー!
もうお腹減りまくりだよ」
リビングまで降りてくると、とてもいい匂いがしていた。
スミカ先輩が持ってきた肉じゃがだけじゃなく、スープとサラダまで置いてある。
「時間なかったから簡単なものでごめんね」
「いえいえ、そんなことないです!!
サラダとスープまで、ありがとうございます!!」
「出来合いのものよ」
「そーそ、んなありがたがるほどのものじゃないって」
「スミカは何もしてないでしょう?」
「肉じゃが持ってきたじゃん!」
「持ってきただけ、ね。
作ったのはおばさまじゃないの」
「そーだけどな、へへ」
幼馴染、かぁ。
なんかいいなー、こういう空気。
私も、その中にいてもいいのかな、ってちょっとだけ寂しくなってしまった。
「ほら、すばるんも座って。
ご飯はどのくらい?大盛りってことはないよね?」
「あ、私は少なめで」
「遠慮しないでいいのよ?」
「その…いっぱい食べると、眠くなっちゃいそうで」
「…あとでお腹空いたら、夜食でも食べましょうか」
ものすっごい優しい顔で見られてしまった。
その優しさが、ツライ!
「お、んじゃ食べたら、コンビニいこーぜ」
「遊びに来たんじゃないのよ?」
「いいじゃーん、どうせ食べたばっかりは集中できないって。
腹ごなし腹ごなし!」
「私も行きたいです」
「もう、すばるんまで」
「…あの、下着も、買いたいので…」
「あ、そ、そうだったわね」
「すいません」
「ううん、こっちこそごめんね」
食後。
なんと、デザートまで頂いてしまってお腹いっぱいの中、コンビニに出かけることになった。
夜も遅く、制服で出かけるのもちょっと、ってことでケイ先輩のお洋服を借りてのお出かけだ。
ふんわりとしたパーカーとスウェット、のお揃いスタイル。
肌触りもよくて、なによりいい匂いがする。
「ケイ先輩の匂い…」
「だから何なのよ私の匂い、って。
柔軟剤の匂いでしょ、まったく」
ラフな部屋着だけど、ちょっとそこのコンビニまでだからいいでしょ、とのこと。
街灯のうっすらとした明かりの下を、三人で歩く。
「えへへ、楽しいですね、こういうの」
なんとも非日常な感じがして、ウキウキしてくる、
「遊びじゃないのよー?」
「すいませーん」
そういうケイ先輩も楽しそうだ。
「チョコの新商品とか出てないかしら」
とか言ってるくらい。
「ケイ先輩、チョコ好きですよね」
「コンビニの新商品は欠かさないわよ!」
「それでニキビの1つもないんだから、すげーよなー」
「スミカはスキンケアがずさんなのよ」
ニキビ、かぁ。
ここんとこ、ほっぺたの辺りにちょっと出てきつつあるんだよなぁ。
「やー、なんかめんどくさくってさー」
「あとで簡単な方法教えてあげるから」
簡単な!?
「私も教えてほしいです!」
「ん?
…んー??」
がし、っと顔を掴まれて、じっと見られる。
顔がちか――
「すばるん…ほっぺの所…」
「…はい……」
バレた!
じとーっとした目で見られて、つい目をそらしてしまった。
「はぁ、ふたりともまとめて面倒見るわよ」
「お願いします!」
「うぇーい…」
スミカ先輩、すっごい嫌そう。
「ニキビの王子さまなんて、仔猫ちゃん達にカッコつかないわよ?」
「…ケイ、よろしく!」
仔猫ちゃん効果すごいな…。
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