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流れ星を手のひらに  作者: ただみかえで
第6章 期末テストをやっつけろ!
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第35話 緊張っ

「さ、あがって。

 ちょっと着替えたりしてくるから、ここで待っててくれる?」

「あ、はい」

…本当に、来てしまった。

これで実は夢でした、なんてオチ、ないよね…?


ケイ先輩のお家は、2階建ての一軒家だった。

全体的に家具はモノトーンで揃えられていて、すっきりキレイ。

壁には絵が飾ってあるし、ダイニングテーブルの上にはお花があるし、すっごい素敵なおうち、って感じ。

色々な物がごちゃごちゃ置いてある我が家とは偉い違いだ。

「お待たせ…って、もう座って待ってたらいいのに」

戻ってきた先輩は…部屋着?って感じのゆるいパーカーとスウェット姿。

先輩でもこういう格好するんだなー、なんて、そっと失礼なことを考える。

お家にいるんだから、当たり前なんだけどね。

「なんか、すごい素敵なお部屋だなー、って見てました」

「ふふ、ありがと。

 全部母の趣味でまとめてるから、言ったら喜ぶわね」

「お母さまが?」

「ぷっ、お母さまだなんて大層なものじゃないわよ」

えー、そこ笑うとこ!?

「他に言い方ないじゃないですかー」

「そうね、ふふ。

 でも、そんなに緊張することないわよ。

 さ、行きましょ」

そう言って、階段を登っていくケイ先輩。

緊張するな、なんて、無理ですよー!


2階に上がると、すぐ手前がケイ先輩のお部屋だった。

扉に【ケイ】ってだけ、シンプルな札がかかっている。


ガチャッ


「どうぞ、お茶取ってくるから今度は座って待っててね?」

「はーい」

ここが、ケイ先輩のお部屋…。

リビングがモノトーンだったのに対して、やわらかいパステルカラーでまとまっている。

机と、本棚と、ベッドだけのすっきりとした、でも優しい雰囲気のお部屋(思ったよりぬいぐるみが多いのが気になるけど)。

床には毛足の長い柔らかそうなカーペット。

そこには、小さなテーブルが置かれている。

かわいいクッションも二人分置いてあって、わざわざ準備してくれたのかな?

それに…

「…ケイ先輩の匂いがする…」

「なによ私の匂いって」

「ひゃあっ!」

つい口に出してしまったのを、タイミング悪く戻ってきた先輩にバッチリ聞かれてしまった…。

「あ、えと、その、安心する匂いです…!」

私、何言ってるんだろう…。

「なにそれ、ふふ。

 ほんと、すばるんて面白いわねぇ」

「うう、すいません」

「なんで謝るのよ、私そんなに怖い?」

いたずらっ子のような目で見つめられる。

「怖くないです!…けど、いじわるです」

「それは……すばるんが可愛いからよ、諦めなさい?」

パチっとウィンク。

どうしよう、まだ来たばかりなのにもう心臓が持ちそうにない…。


「はい、すばるん。

 紅茶でよかったわよね?」

コト、と眼の前におかれる可愛いマグカップ。

これって、確か最近人気の端っこの方が好きなゆるいキャラだった気が…。

ケイ先輩とこういうファンシーグッズってあんまりイメージが繋がらないけど…うん、ベッドの上に何匹もお仲間ぬいぐるみたちが転がってるのを見ると、ばっちりケイ先輩の趣味のようだ。

「ケイ先輩って…」

「…な、なによ?

 私がこういう可愛いグッズ持ってたらダメ?」

私が言うより前に釘をさされてしまった。

「いやいや、全然悪くないです。

 ちょっとイメージと違っていただけで…」

「…いいじゃない、好きなんだから」

ちょっと顔を赤くしながら睨まれても…。

いつも思うけど、こういう先輩、ほんっと可愛いなぁ。

「もう、人の部屋ジロジロ見てないで、さっさと勉強会するわよ?」

「はーい」

とは言ったものの。

どうにも落ち着かない。

「あのー、先輩?

 ちょっとだけ、お話しませんか?」

「遊びに来たんじゃないんでしょ?」

「う、すいません」

怒られてしまった。

当たり前だけど…。

「で、何か話したいことでもあるの?」

「え?」

「え?」

あれ?

怒られた、と思ったのに。

「お話しませんか?って自分で言ったのに」

「は、はい!言いました言いました!

 …ふふふ、先輩優しい~」

「まったく、バカ言ってるだけなら勉強始めるわよ」

「やーん、まってくださーい」

それから。

持ってきてもらった紅茶が冷めてしまうまで、取り留めのない話をして過ごした。

あの先生がどうとか、この授業は難しい、だとか。

「あ!ケイ先輩!

 アルバム見たいです!!」

「アルバム?」

「あそこの、あれってそうですよね!?」

話してる間に、ふと本棚の下の方に数冊のアルバムらしきものを見つけて、我慢できなくなってしまった。

「すばるん~?

 本当に勉強する気あるの~?」

「も、もちろんありますよ!」

…お話が楽しくて、ちょっとだけ忘れてたなんて言えない…。

「アルバム見たら、勉強しますっ!」

「…はぁ、しょうがないわねぇ。

 ちょっとだけよ?」

「わーい!!」


「えーっと…この写真集はどこで売ってますか?」

「…なに言ってるのよ」

「先輩可愛すぎですよーーー!!!

 これ、これって何の時ですか!?」

ピンク色のフリルたっぷりのドレス姿の写真。

小学生低学年くらい?

どう見ても、どこかのお姫様のよう。

「これは、なんだったかしら。

 従兄弟の結婚式かなんかだったかな?」

「へーーー!!

 可愛いーー!!」

どの写真を見ても、とにかく可愛い!

あ、これは、中学の入学式、かな?

うわぁ、もう既に美人さんっ!!

こんな大人っぽい子、周りにいなかったよ…。


うわぁうわぁ、っていいながら大興奮状態で見ていると、急にアルバムが閉じられてしまう。

ああん、もっと見たかったのにー!

「…はい、おしまい。

 ほら、勉強しないと、赤点取っても知らないわよ?」

アルバムを抱えた先輩が、赤い顔をしてこっちを睨んでる。

可愛い…。

「ちょっと、なんでにやけてるのよ」

「すいません…先輩が可愛くて…」

「もうっ」


べしっ


「うぎゃっ!」

変なうめき声が出た。

「先輩、さすがにアルバムは、痛い…」

「あ、ごめん!

 これノートじゃなかった!!」

…調子に乗りすぎたかな、自業自得だ。

とはいえ、大丈夫?って頭撫でてくれるのは嬉しいので、プラマイゼロ、かな?

「ああでもすばるん、ほんとに始めないと、時間がないわよ」

「え?」

言われて時計を見ると…あれ、おかしい、もう2時間位経ってる!?

「…あの時計って、進んでます?」

「合ってるわよ」

「ですよねー…うう、すいません、勉強しますっ!」


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