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流れ星を手のひらに  作者: ただみかえで
第5章 スタートライン
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第28話 フライング

第二部スタート!

といっても、何かが新しくなるわけでもないですけどね!(笑)

あの後。

30分くらいは、ケイ先輩をぎゅっとしていたと思う。

「すばるん…ありがと…」

体を離した時に、ケイ先輩はちょっとだけ目を赤くしていて。

うっすらと目には涙が残っていたけれど、でも、あの悲しそうな表情はすっかりなくなっていた。

「ほんと、すばるんにはかっこ悪い所ばっかり見せちゃうな。

 みんなには内緒よ?」

ちょっと照れたようにそう言うケイ先輩が余りにも可愛すぎて、心臓が止まるかと思った。

だから、そういうのずるいってば…。

「もちろんです、私だけの秘密にします!」

「ふふふ、ありがと。

 あ、でも、話の内容自体はなゆちゃんに言っても大丈夫よ。

 すごく心配してくれていたでしょう?」

「…ですね、何も聞かずに、ただそばに居てくれました」

「いい妹だね」

「はい、最高の妹です」


それから一週間。

「ふあああああ」

もちろんあれからケイ先輩と顔を合わせることはあったし、自分ではすごく普通にしているつもりではあるんだけど。

『好き』って想いに気付いてしまったために、その『普通』がわからなくなってしまっていた。

「うーーー」

なんだか自分が自分でわからなくなって、クッションを抱えながら悶てしまう。

「おねえ…?」

気付いてから考え直してみたけど、私はいつから先輩のことが好きだったんだろう。

「おーねーえー??」

ひとめぼれ。ではないと思う、たぶん。

確かに、初めて廊下で会った時には、すごく綺麗な先輩だなぁ、とは思ったけど。

まだその頃はただの憧れ、みたいな感じだった、はず。

じゃあ、いつだろう…。

「むー」

「お!ね!え!!」

「うわぁっ、びっくりした!

 な、なに?どうしたのなゆ?」

気がつくと、なゆが目の前にいた。

あれ?ちょっと怒ってる?

「どうしたの?はこっちのセリフ。

 放っておこうと思ってたけど、さすがに1週間もそうやって唸りながらゴロゴロされると、いい加減うっとおしい」

「う…そんなに??」

「うん、もう、一瞬もじっとしてない感じ。

 聞いてあげるから、話して」

「でも…」

「いいから、話しなさい!」

「はいっ!」

普段物静かな分、こうなったなゆに逆らってはいけない。


もちろん、ずっと心配かけていた分、ケイ先輩のお話は(最後の泣いていたこと以外)その日のうちに全部話した。

ただ、私が『好き』に気付いたことなんかは、さすがに恥ずかしくて話していない。

とはいえ。

このまま自分の中でだけ抱えているには爆発しそうだったのも間違いない。

爆発しそう、っていうか、すでに漏れていたみたいだしね…。

大きく深呼吸を一つ、覚悟を決めて話すことにした。


私となゆの部屋の真ん中には、二段ベッドが置いてあって、そこで大きな部屋が2つに仕切られている。

小さい頃は、ベッドは壁際にあって仕切られていなかったんだけど、中学に入るのに合わせてこういう形になった。

双子とは言え、プライバシーは必要でしょ?とのことだったけど、結局筒抜けの二段ベッドが置いてあるだけなのであまり変わりはない気がする。

といっても、私達二人が全然気にしていないので問題はないんだけど。

二段ベッドの下に座ってよくおしゃべりしてるしね。


「ほら座って」

二段ベッドの下はなゆのスペースで、クッションやぬいぐるみがいっぱい置いてある。

「はーい」

適当なクッションにぽふっと乗り、ついでのその辺にあったぬいぐるみを抱えながらなゆの横に座る。

こう見えて(というと怒られちゃうから言わないけど)なゆはぬいぐるみをいっぱい集めているのだ。

「あ、この子新作だね」

「うん、この間ゲーセンで取ってきた」

ドヤ顔でピースサインをするなゆ。

いつも思うけど、なんであれ取れるんだろうなぁ。

なゆが余りにも簡単そうに取るから、私も行けそうな気がしてやるんだけど、未だに一個も取れた例がない。

「ほら、いいから、話す」

「うん」


さて、覚悟を決めたものの。

いざ話すとなると、緊張するなぁ。

「えっと、あの、ね。

 私……」

すーはーすーはー。

膝に抱えたぬいぐるみを通りこして、心臓の音が聞こえるんじゃないかってくらいにドキドキしてる。

「私、ケイ先輩のこと、好きみたい…」

「うん。

 それで?」


あ、あれ?

「それで、って、それだけ、だけど…?」

「は?」

ものすごい怪訝な顔で返されてしまった。

あ、この顔のなゆはレアだ。

…じゃなくて!

「いや、だから!

 私ね、ケイ先輩のことをね!」

「うん、知ってるってば」

あれ?なんだろう、話が噛み合ってない気がする。

なゆには、っていうか、誰にも話したことないはずなんだけど…。

「……ちょっと待って。

 もしかして…もしかしてだけどさ。

 おねえ、それ、自分で気付いてなかったの!?」

「へ?」

「う…っわぁ…。

 鈍い鈍いとは思ってたけど、まさかここまでとは」

「ええ??

 なになに、どういうこと!?」

「おねえがケイ先輩が好き、だなんて、とっくの昔から知ってた、ってこと」

「えええええええええええええええええ!?」


どうやら、この優秀な妹君は、できの悪い姉よりも姉のことをよく知っていらっしゃるらしかった…。

うぅ…。




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