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流れ星を手のひらに  作者: ただみかえで
第4章 レイニーレイニー
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第26話 今からちょうど1年くらい前かしら

ちょっぴり過去編。

しんみり、しっぱなしにならないがこのお話★


「前にも言ったけど。

 ちっとも面白い話じゃないわよ?」

「……はい」

 二人だけの生徒会室でケイ先輩がゆっくり話し出す。

「でも……うん。

 聞いてくれる?」

「はい!!」


 きっと、まだ先輩にとってはツライんだろう。

 それは目の下のクマを見ればわかる。

 でも、ケイ先輩は話してくれる、と言った。

 それならば、私は聞きたいと思った。

 いつもなゆは、こんな気持ちで私の話を聞いてくれたのかな? なんて思いながら。


「あれは、そうね、今からちょうど1年くらい前かしら。

 あの頃の天体観測部には、10人くらいの部員がいて、すみれ先輩もそのうちの1人。

 生徒会長もやっていたから、部長は別の人だったけれど。

 比較的ゆるい部だったから、生徒会をやりながら所属する人が昔から結構いたのよ。

 ある意味『伝統』もあったしね。

 かくいう私も、すみれ先輩に誘われて入ったんだけど――



「ケイはさー、好きな人っていないのー?」

 同級生の平良(たいら)一美(かずみ)がおもむろに尋ねてきた。

 今は放課後。

 珍しく生徒会の仕事がほとんどなく、1ヶ月ぶりくらいに部室に顔を出した時だった。

 部室には二人だけ。

 一美とは同じクラスで席も近く、結構仲良くしてはいるけど……こんな『ガールズトーク』をするタイプだとは思わなかった。

 まぁ、いつもと違う、他に誰もいない、ってのがそういう話をさせたのかもしれないけど。

「なぁに? 急に」

「んー、なんとなーくー?

 クールビューティと名高いケイにもそういう感情ってあるのかなー、って」

「かーずーみー??

 私だって別に機械やなんかで出来ているわけじゃないんだから、いくらなんでも――」

「え!? いるの!? 好きな人!?」

「……いないけど」

「だーよねー」

 好きな人がいない=感情がない、ではないのだけど。

 まぁ、いいわ。

 この流れは、自分の話を聞いて欲しいための前フリなのだろうし。


「で、一美に好きな人が出来た、ってことでいいのかしら?」

「……おお、なんでわかったの?

 ケイってばエスパー?」

 そんなに目を丸くしてびっくりしなくても。

「あのね。

 話したくてたまらない、って顔しながらそんなこと聞かれたら、誰だってわかるわよ」

「うぇ……顔に出てた?」

「思いっきり」

「あちゃー」

 そういって顔に手を当てて天井を仰ぐ。

 ……そういえば、うちの親戚のおじさんもそういうリアクションをよくしてたなぁ、と思い出す。

 現役女子高生らしからぬ仕草ではあるけど、ある意味新鮮だわ。

「……え、っと。

 ケイの言うとおり、なんだけ、ど……」

「何もじもじしてるのよ。

 気持ち悪い」

「うわ、ヒドイ」

「ごめんなさい、ついうっかり」

「……ケイのいじめっ子っぷりは、今に始まったことじゃないからいいけど」

「そういうこと言うと聞いてあげないわよ?」

「ウソデス、ゴメンナサイ」

「カタコトなのが引っかかるけど、まぁいいわ」

 話が進まないし。

「で、誰なの?

 私に話す、ってことは、私の知っている人よね?」

「……やっぱりエスパー?」

「単純な推理よ」

「なるほど、名探偵の方か」

「いいから、早く話しなさい」

 いつもの明るく元気! だけが取り柄の一美が、こんなになるなんてね。

 意外と可愛いところもあるもんだ。

「え、っと。

 笑わない?」

「何? 笑うような相手なの?」

「いや、そんなことはない!」

「じゃあ笑わないわよ」

「そか……。

 うん、そうだよね。

 あのね。

 私、すみれ先輩のことを好きになっちゃったみたいなの」


「あれ? ケイ?

 おーい?」

 一瞬、思考が飛んでしまっていたみたいで。

 さっきまでもじもじとしていた一美が心配そうに覗き込んでいる。

「あ、ああ、ごめんなさい。

 ちょっとびっくりしただけよ」

 まさかここで女性の名前が出てくるとは思わなかった。

 ……まぁでも、よく考えてみれば、私と一美の共通の知人に『男性』はいなかったわね。

 女子校ってこともあって……そうか、そういうこともあるのか。


 それから30分。

 3人目の部員が部室に現れるまで、すみれ先輩のどこが素敵なのか、って話を延々と聞かされ続けることになったのだった。

「絶対、すみれ先輩も私のこと好きだと思うんだ。

 だって、会う度抱きついてくるし、すぐにほっぺにキスするし!!」

 それは多分、あなたのその大きすぎる位大きい胸が、ちょうど抱きついた時に顔をうずめるのに良い感じなんじゃないかしら、とか、頬にキスをするのはイタリアでは挨拶として普通みたいよ私だってされるし、とか。

 そういった諸々の言葉をごくりと飲み込んで。

 それでも、人が人を好きになるというのはこういうものなのかな、と黙って聞いていた。


 ただ。

 恋に恋するお年頃、って感じで、きゃーきゃー言ってるのが楽しい、みたいなそんな雰囲気も感じていた。

 ま、すぐ冷めるでしょ。


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