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流れ星を手のひらに  作者: ただみかえで
第4章 レイニーレイニー
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第20話 安心と信頼のなゆセレクト

「はい、おねえ。

 これでばっちり」

「そう? 大丈夫?

 変じゃない??」

「大丈夫、変どころかとっても可愛い」

「そ、そう? えへへ」

「……その顔はちょっとかわいくない」

「う……」


 翌日、土曜日。

 曇ってはいるものの、なんとか雨はやんでくれてよかった。

 で、朝から何をしているかというと。


 お出かけ用の洋服選び、からの、髪結いbyなゆ


である!


 しかし、この編み込みという髪型ってやつは、一体全体どういう仕組みになっているんだろう……。

 何回かなゆに説明してもらったんだけど、どうやっても理解出来る気がしなくて放棄してしまった。

 服は、空色の半袖ワンピースに薄いクリーム色のカーディガン。

 当然なゆセレクト!

 いや、ね。

 私だってお洋服選びくらいはできるのよ?

 いつもいつも『なゆセレクト』ってわけじゃないのよ?

 ただ、ここぞという時は自分で選ぶとどうしても不安になっちゃって。

 太鼓判をもらいたくなるんだよね。


「おねえ、急がないと。

 待ち合わせ、10時でしょ?」

「う、うん! そうなんだけどーー。

 靴どうしよーーー!!」

 最後の最後で、靴に悩んでしまった。

「んー、結構歩くんだよね?

 ここはスニーカーでいいと思うよ」

「変じゃないー??」

「そこまでかしこまった服じゃないし大丈夫。

 下手に普段履かないような靴履いても、靴ずれしてそれどころじゃなくなっちゃうよ」

「……確かに! じゃあ、そうする!!」


 向かう先は3つ隣の駅前にある、通称『グラタンモール』と呼ばれる大きなショッピングモールだ。

 お店の構造としては、地下1階、地上3階。

 高くはないけど横にひろーーーーーくて、中には200店舗以上の専門店が入っている、らしい。

 本当は、『グランタウン』という名前なんだけど、気がついたらみんな、『グラタン』って呼んでた。

 どうやら、お店側もそれが気に入ったらしく、いつの間にかマカロニくんというゆるキャラが誕生していた(オープン時には猫のゆるキャラがいた気がしたんだけど、どこ行っちゃったんだろう……)。

 白く細長いマカロニ製の体に、ペンネの手足、というなんとも落書きしやすそうな造形をしていて、事あるごとにイラスト入りのグッズが配られている。

 ついこの間、オープン5周年記念で、同じ見た目にリボンの形のパスタ(ファルファッレ、っていうんだって!)を付けた女の子キャラが出てきてた。

 パス子ちゃん、って言う名前で……もう少しネーミングセンスどうにかならなかったんだろうか。


 そんなグラタンモール前に到着すると、すでに待ち人は来ていた。

 紺のフレアスカートにふんわりした白のブラウス、というシンプルな装い、なんだけど、ただ立っているだけなのに一際絵になるそのお方は……、

「ケイせんぱーい! すいません、お待たせしました」

「私もいま来たところよ」

 駆け寄ると、ケイ先輩は優しく微笑みかけてくれた。


 ケイ先輩の私服姿……色的には普段の制服と似てるのに、それがふわっと少しゆるい感じになっただけで、どうしてこうも違って見えるんだろう。

 学校のピシッとした感じも好きだけど、こういうふんわりした感じも素敵だなぁ。

「ふむふむ。

 すばるん、私服だとそんな感じなのね」

「な、なんか変ですか!?」

「ううん、全然。

 とっても可愛いわよ。

 ちょっとイメージと違ったけど、よく似合ってる」

 わーい、べた褒めだぞ!

 さすが、安心と信頼のなゆセレクト!!

「ありがとうございますーー!

 でも……実はこれ、全部なゆに選んでもらったんです。

 ワンピースとか、すっごい久々に着ました」

「あら、そうなのね、ふふ」

 なんか、照れくさい。

「その髪型も?」

「あ、はい!

 編み込みなんて、絶対できないですから!」

「……ぷっ、あはは。

 そうね、難しいものね」

 むぅ、すっごい笑われてしまった。

 だって、あんな複雑な髪型できるわけないじゃない!

「ごめんなさい。

 でも、似合ってるってのはほんとよ。

 いつものすばるんと違って新鮮」

 そう言って、頭を撫でられる私。

「あ、あの……褒めてもらうのはとっても嬉しいんですけど。

 逆に、そんなに褒められるとどうしていいかわからなくなってしまいます……」

 ちょっとだけ横を向いて、なゆに目でヘルプを出すと、こっちを見てこくりと頷いた。

 やはり、長年連れ添った双子だからこそアイコンタクトだけで思いが伝わるんだなぁ。

「おねえ、『ケイ先輩と出かけるから洋服選んでー!!」って言って、昨日の夜から大変だったんですよ!」

 ……ん? あれ?

 そうじゃないよ、なゆ!!

「ちょ、ちょっとなゆー!!

 それバラしちゃダメーー!!」

「ちなみに、今日のコンセプトは、黙っていれば深窓の令嬢、です」

「ああ、なるほど。

 ツバの広い帽子か日傘があれば、なお完璧ね!」

「そうなんです。

 まぁ、黙っていれば、がつきますけど」

「そうねぇ……すばるん、喋ると『令嬢』にはなれないものね」

「……あれ?

 私、さっきまで褒められてなかったっけ?」

 褒める振りして落とす、そういう高級テクニックは今はいらないよっ!


「ケイ先輩、そろそろ行きませんか?」

「それじゃ、行きましょうか。

 まだそんなに混んでいないしね」

「はい!」

 話があっちこっち脱線しまくっていたけど、今日の本来の目的はケイ先輩と一緒にお買い物をすること!

 昨日の一件で折れてしまった傘を探しつつ、ウィンドウショッピングも楽しんじゃおう、という感じだ。

 昨日のあの雰囲気の中、勢いでおねだりしてしまったのだけど、ケイ先輩の私服姿が見られただけで昨日の私によくやったで賞をあげたい。


「じゃあ、おねえ。

 私はあっち行くね」

「うん、行ってらっしゃい!」

 今日は珍しく別行動。

 なゆは本日公開のとある映画を見に、1人でシネコンに向かっていった。

 その映画、今回でシリーズ4作目になるんだけど、なゆは原作からの熱烈なファンで、1ヶ月も前から今日の公開を待ちわびていた。

 家のカレンダーの今日の日付の所には、花丸と一緒に『ついに公開!』と書かれているほど。

 ちょっとだけホラーテイストもあって、私は1作目でリタイアしてしまったので、それ以降なゆは1人で行っている。

 それがなかったら、いつもどおりなゆと一緒にお買い物だったんだけど、さすがにそれをおしてまで一緒に行こうとは言えないかった。

 これだけは映画優先されちゃうしねー。

 だからって早く買わないと雨は待ってくれないし……家にはビニール傘とか、お父さんの黒いおっきな傘とかあるけど……ちょっと、ね。


「ちょうど梅雨だけあって、色んな所で傘の特集をしているから、ゆっくり見て回りましょ」

「はーい」


気に入って頂けたら、下の評価を押してもらえるとうれしいです♪

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