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流れ星を手のひらに  作者: ただみかえで
第12章 卒業
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第118話 プラネタリウム

「西の空に、太陽が沈むと、様々な星が夜空を彩ります」


 真っ暗なドームの中。

 ふかふかの椅子をぐぐっとリクライニングして、上を見上げる。

 そこには、キラキラと光る星が映し出されていた。


「この南の島で見られるこれらの星座には、様々な伝説があるのです。

 たとえば――」


 ナレーションに合わせて、様々な星座が次々に現れては消えていった。

 普段なら見ることのできない、南半球の星座たち。

 それらにまつわるお話は、ちょっぴり切なく、悲しいものだった。


 昨日の夜。

 私のスマホに届いたメッセージは、星めぐみ先輩からのものだった。

 卒業生追い出し会で出会ったあのめぐみ先輩。


『ちょうど春休みだしプラネタリウム見に来ない?』


とのお誘い。

 あの時、プラネタリウムクリエイターという仕事に興味がある、って言ったのをちゃんと覚えていてくれたみたい。

 新入生歓迎会の準備も今日はお休みだったので(まだまだ終わらないけど、根を詰めすぎても参っちゃうから、って)、折角なので朝からお邪魔することにした。

 他にも興味のある子がいたら連れておいで、ってことだったので、なゆも一緒だ。


 それにしても、プラネタリウムってすっごい久しぶり。

 というか、小学校の校外学習でしか行ったことないから、そもそも2回目だけど。

 でも、あの時ってこんなにキレイだったっけなぁ。

「おねぇ、なんかすごかったね。

 今のプラネタリウムってこんなにすごいんだね」

「うんうん、やっぱりなゆも思った!?

 なんかこう……すごかったよね!」

 うーん、こういう時にちゃんとした言葉が出てこないのはちょっと悔しい。


「あはは、ありがと」

 上映後のドームの中で、なゆとすごいすごい言い合ってると、めぐみ先輩が入ってきた。

「あ、めぐみ先輩、お誘いありがとうございました!」

「こっちこそ、来てくれてありがとうね。

 って、そっちが妹ちゃん?」

「あ、はい。

 星空なゆたです。

 私まで一緒にありがとうございました」

 ぺこり、と頭を下げるなゆ。

「楽しんでもらえたみたいで何より。

 それにしても――」

 そこで言葉を切ると、じーっと私達を見つめるめぐみ先輩。

 私を見て、なゆを見て、また私を見て……。

「あの、どうかしました?」

「ごめんごめん。

 私、双子って初めて見たけど……やー、髪型違うくらいで、ほんとそっくりだね君たち。

 うん、なんかいいね!」

「あはは。

 ありがとうございます」

 なにが『いいね』なのかはよくわからなかったけど。

 屈託のない笑みでそう言われると、よくわからないながらに嬉しくなってしまった。

 昔から似たような反応をされることはたまにあったけど、値踏みされるような視線を向けられることも多かったから、こういう反応はちょっとおもしろい。


「で、すごかったでしょ、これ」

 これ、と言いながら見る視線の先には、大きな卵のような機械が。

「はい!

 すっごくキレイでした!」

「目に見えないような小さな星までキレイに見られるのすごいですね」

「でっしょー!

 ほんと作るの大変だったんだから。

 そうそう……っと、そだ。

 二人とも『星空ちゃん』だし、名前で呼んでもいい?」

「はい!」

「よし、そんじゃすばるちゃん。

 プラネタリウムクリエイターに興味ある、って言ってたし、色々見せてあげるよ!

 なゆたちゃんも、何か気になるものとか見たいものとかあったら、遠慮せず言ってね!」

「はーい」

「はい!」


 それから。

 普通だったら入れないような、いわゆる『関係者以外立入禁止』な場所に連れて行ってもらって、いろんな資料とか機械とかを見せてもらいながら、それらの機械の仕組みとか、どうやって作るのかとか、ちょっと専門的なお話をたくさんしてくれた。

 聞いていると、わからない言葉も多くて結構難しいお話も多かったけど、ハテナを頭に浮かべているとそれに気付いてわかりやすく何度も説明してくれた。


「と、まぁそんなわけで……わ、もうこんな時間。

 ごめんごめん。

 どうも熱くなると止まらなくなっちゃってねー」

「いえ、お話、すごく楽しかったです!」

 時計を見ると、プラネタリウムを見終わってからすでに2時間が経っていた。

 あっという間、って感じ。

 ほんっと、めぐみ先輩の熱い思いが伝わってきたよ。

 私が目指すかどうかはまだわからないけれど。

 でも、こう思えるだけのモノに出会えるといいな、ってすごく思った。

「そう? ならよかった。

 私はさ、とにかく星が好きでさ。

 で、この『好き』を、色んな人に伝えたくて今のこの仕事をやってる」

 まっすぐにこちらを見つめる瞳は、本当にキラキラしていて。

 それはまるで星のように輝いていた。

「めぐみ先輩は、先輩自身が星みたいですね」

 そう思ったら、思わず口に出ていた。

「それ、さいっこうの褒め言葉だよ!!!」

「んぎゅ、先輩、くるしぃ!」

 感極まった先輩に力いっぱい抱きしめられて、危うく窒息する所だったよ……。


「よし、名残惜しいけどさすがに仕事に戻らないといけないので。

 何か最後に聞きたいこととかある?」

 聞きたいこと、か。

 うーん、なんだろうなぁ。

 お仕事については、たくさん聞かせてもらったし。

 うーん、うーん……。

 あ、そうだ!

「追い出し会の時に言ってた、めぐみ先輩の『思い出の星空』ってどんな感じなんですか?」

「ん?

 ああ、それはね」

 そこで一旦言葉を区切ると、パチっとウィンク。

「さっき見てもらったやつだよ!」


いつも応援ありがとうございます★

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